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不運な召喚の顛末  作者:
第三章
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休暇編6

ソフィアとお喋りを楽しんでいるとノヴァが戻ってきた。

難しい顔をしている。駄目だったのだろうか。

「ノヴァ、提案書は駄目でしたか?」

「いえ。奥様はとても喜んでいらっしゃいました。ただ、奥様も指示書を書いていたようで」

「サーシャから何か言われた?」

「はい。態度を改めるよう嗜めましたがどれほどの効果があるのか、全く。自分の非は主人の非になるのだとわかっていない態度に」

ため息をつくノヴァについ

「シメますか?」

そう言ってしまい、変な顔をされた。

「こほん。失礼致しました」

「リオ様は時々恐ろしいことをサラッと言うので驚きます」

ソフィアが戸惑っている。

恐ろしい事?何か言っただろうか。よくわかっていない私の反応にソフィアが

「え、あのミゲル様に淡々と立ち向かったじゃないですか!本人が本人の居場所案内するとか、あれ恐怖体験ですよ!」

と訴える。

「リオ様。それはどう言うことでしょうか。」

ノヴァが詰め寄る。

「えっと、ミゲルさんがグラッドの婚約者を見極めにきた日、あ、ノヴァは休みでしたね。」

その日急にミランダから隠れるよう言われて服飾係の部屋に隠れたこと、そしてそこにミゲルが私の居場所を教えろと乗り込んできたこと、その時に目をつけられ、居場所を知っているだろうと嘘は見破られるようだったので案内すると言い庭に出たことを順を追って話す。手加減だったが攻撃されたことは黙っておこう。

「頭痛い」

ノヴァは頭を押さえる。

「本人だとは気づかれませんでした」

「ノヴァ、リオ様の変装はすごいのですよ。別人でした」

ソフィアから期待の眼差しを受け、あの日と同じように髪と瞳の色を変え、そばかすを足す。

ノヴァは目を見開き、そのまま動かなくなった。

「リリです、宜しくお願いします」

しばらく固まっていたノヴァは自力で持ち直した。

「リオ様。この手段はあまり使わないで下さい。切り札にしたほうが宜しいかと」

「切り札」

「はい。今サイス領は安定していますが、何があるかは分かりません。ですから、」

「わかりました。ふふ、やっぱり面白いです。」

「?何がでしょうか」

「ミランダはこれを切り札にとは言わなかった。多分ミランダは使っても使わなくても切り札だと思ってます。あと、手段が多くなるので良しとしている節もあります。まぁ安易に運用したら怒られるでしょうけど。ノヴァとミランダの意見が違うこともですが、色んな視点を持てる私は恵まれていますね」

「恵まれている、ですか」

「はい。イザベラとニーナの紅茶の技術は方向性が違いますが、どちらも間違いではありません。ノヴァとミランダの意見が違ってもそれも間違いではない。同じ視点同じ意見だけでは偏ります。それは私の為にはならない。だから、恵まれているんです」

ノヴァの恋愛相談の答えも違う視点からの意見だったと思いますよとつけたすとノヴァは赤面した。

ソフィアが食いつく。揶揄う気満々だ。

「あれは、まぁその、たしかに。効果ありました」

「おお」

「ソフィア、ちょっと黙って」

「ノヴァの恋バナは貴重ですよー、にやにやしてきた」

「そうなのですね、さぁ」

「リオ様ものらない。はい、これ奥様から預かってきました。どうぞ」

照れたノヴァが話を強引に打ち切り、書類を渡される。

「これは」

「事業計画書です。この書類の形式に沿ってリオ様が計画している事業の内容を記入していって下さい。転移者支援でどう利益を生み出すのか具体的な方法を考える練習になるからと」

利益か、うーん。

書類を捲り目を通す。

所々ミレニアの文字で注釈が入っている。

「ミレニア様の気遣いがすごいです。」

クラリスの記憶にある通り躓く場所がわかっている。入り口の敷居を下げて入りやすくしてくれている。

「利益。消耗品がいいかな。ソフィアは困っていることありますか?」

「へ、私ですか?今は特には」

「そうですか、わかりました。もし気になることとか改善したいこととかあれば教えて下さい。ソフィア今日は、色々聞かせてくださってありがとうございました。」

「ふぁい」

「ふぁい」

「リオ様、真似なくてもいいのにぃ」

「可愛いのでつい」

「うー、私歳上なのに」

「可愛さに歳は関係ありませんから。あと下着はこの型で複数枚作って下さい。普段使いにします」

「術式は如何いたしましょうか」

「自分でいれるものではないの?」

「人それぞれです。奥様とグラッド様は自分でいれたい方ですが、旦那様は専属に任されます」

私の使っている術式はクラリスと同じものだ。だが、これは基本的な術式の形式でありふれた術式だ。

「それではソフィアにお願いします」

「かしこまりました」

ソフィアへ下着にいれた術式を紙に書いて渡した。

「では作業に戻ります」

畏まった口調で挨拶してソフィアは戻っていった。

それから事業計画書を書き、行き詰まっては室内で一人ダンスを踊る。それを繰り返し、書き進めた。

夕食前にグラッドが迎えにきた。

「頬が赤らんでいます。具合でも悪いのですか?」

額に手を当てられる。

「いえ、ダンスを踊っていたので」

「練習ですか、熱心ですね」

違うんだけど、どう説明したものか。

私が言い淀むとグラッドが違うのですか?と不思議そうにしている。

「事業計画書を書いているのですけど、行き詰まったので身体を動かしていました。素振りは、客間では怖くてできないのでダンスならと思って」

「へぇ、書けましたか?」

「甘々ですけど、なんとか」

「最初は甘々でも書ければいいんですよ。そしてこれから、やり直し地獄が始まります」

にこやかに言われた。

グラッドも大変だったようで、やり直しを繰り返し、何処が駄目なのかがわからなくなるほどやり直して半泣きになりながら書き上げたそう。

「最初の合格をもらえた時は達成感で胸がいっぱいでした。」

その時を思い出したのか私の知らない表情で笑うグラッドにドキドキした。

夕食の席にミレニアはいなかった。

具合が悪く横になっているとフレッドが説明する。

「それにしてもチカさんは物知りだね、妊娠中の注意事項を書き連ねた資料を渡されたよ。二人で感心していたんだ。弟妹がいるのかな?」

初耳だ。でもなんとなく理由がわかる。

「いえ。チカの姉が結婚したばかりで、それで調べたのだと思います」

それもあるだろう。でも本来は私のためな気がする。自意識過剰かもしれないけど、当たっているはずだ。言わないけど。

なんとも微妙な顔をしていたのだろうか

「へぇ。」

なんとなく察したフレッドが笑う。

夕食後グラッドからお茶に誘われた。昨日はなんだかんだと顔を合わせてなかったから誘いを受ける。

部屋ではなく東屋でお茶をすることになった。

夏の始まりとはいえサイス領はもう既に暑いし、夜も涼しいとは言い難い。

どうするのだろうかと思っていたら水魔法でミストカーテンを作っていた。潜るとひんやりとして涼しい。

東屋には蝋燭が設置してあり、灯りを水魔法で反射して幻想的な空間になっていた。赤、オレンジ、黄色、黄緑、青など色とりどりだ。

「わぁ、綺麗です。グラッド、この黄色や赤以外の色はどうやって出しているのですか?蝋燭の火だけじゃないのかな」

綺麗な光景に夢中になっていると、腰を抱かれた。

「リオが喜んでいるのは嬉しいのですが、ちょっと妬けます。」

幻想的な光景の中、グラッドが拗ねた表情で私をみつめる。その威力たるや。見慣れてきたと思ったのは間違いだったのか、美形に目が溶けそうだ。

「リオ?」

グラッドに抱きつき、

「かっこよすぎて照れます」

告白する。

「慣れたのでは?」

「勘違いだったかもしれません」

「なんですか、それ」

グラッドがおかしそうに笑う。

東屋でお茶を飲みながら幻想的な光景を眺め、お喋りして楽しい時間を過ごした。

夏のお茶会には派閥がある。紅茶の温度調節をするかしないか。グラッドは冷たい紅茶派、クラリスは紅茶はそのままで冷たいお菓子をつける派、フレッドはそのまま。

私にこだわりはない。日本では年中冷たい紅茶を飲んでいたし。

「冷たい紅茶も好きです」

今晩のお茶はレモンフレーバーだ。美味しい。

「レモンは爽やかで夏のお茶会にはぴったりですね。美味しい」

「良かった。好みが分かれますから夏場は」

「フレッド様がそのまま紅茶飲むとは思わなかったです。冷たい紅茶も研究しそうだったので意外です」

冷たい紅茶を美味しく飲むための研究は怠らない気がしていた。違ったのだろうか。

「納得いく味にならないからそのまま飲んでいるんです」

「あぁ、わかります。冷やす速度が難しいんですよ、ちょっと間違うと思った味にならなくて」

研究はしているみたいだ。やっぱり勘違いではなかった。

そして味に納得いかないのはわかる。氷は貴重だ。いくら魔道具で便利になっても作れる量が限られているし高価だ。

「リオは、どうやって冷やしているのですか?魔道具?」

魔道具で冷やしつつ並行して

「ちょっと違います。闇属性魔法で熱吸収をして」

魔法を使う。

「???!」

「消費が増えるのであまり使いませんが」

他の属性魔法の分類分野の魔法を表現しようとすると魔力消費が多く連続使用が辛い。

「リオ。それ養父上に教えてあげて下さい。喜ぶと思います。あと養母上も、あ養母上は体調が落ち着いてからでお願いします」

「?はい、わかりました」




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