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不運な召喚の顛末  作者:
第三章
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休暇編2

ミレニアからあの魔法の原理をもっと教えてほしいと言われたところでフレッドが話を止める。

「ミレニア。」

「わたくし楽しみにしてましたのに」

拗ねた表情が可愛い。と、思った瞬間、ひやりとした視線が二方向から向けられる。

姿勢を正す。

「養父上、私たちはそろそろ失礼致します。」

「ああ。ではまたね、リオさん」

「は、はい。失礼致しました」

グラッドと一緒に書斎を後にする。

「リオ様。お部屋の準備は整っております」

ニーナからそう声をかけられる。が、

「グラッドはまだ時間ありますか?」

「はい。ありますが」

「一緒にいたいです。東屋でお庭を見ながらおしゃべりしませんか?」

「わかりました。では行きましょう」

グラッドの手を握る。いつもより少しだけ側に寄り歩く。

庭にでると季節の移り変わりが感じられる。

「もうすっかり夏ですね。春のお庭も見たかったな」

「次の春は冒険者を招く宴に参加しませんか?」

「それは楽しみです」

東屋で二人並んで、庭を眺めながら過ごす。

「グラッド、不安ですか?」

「、どうして?」

「複雑そうな気配がします」

「ミランダの教育の賜物でしょうか、そうですね、」

「ミレニア様のことですか。」

グラッドは肯定も否定もしなかった。

「私も跡取りについて教えてもらった時に気になったので、聞きました。もしミレニア様に子供が出来たらその子供が次期領主になるのではないか、って」

隣りでグラッドが緊張するのがわかった。

「領主としての条件を満たすのであれば、候補者にはなるだろうけど、次期領主が理に反することをしない限り現領主が決めた次期領主を廃することはないって。」

「リオ」

「ですから、グラッドが暴君しない限り、今までの努力が無駄になることはありません。安心して下さい、ぇ、あのグラッド?どうしました?」

急にグラッドが私を抱き寄せた。

「いえ、ちょっと。目頭が熱くなったので、落ち着こうかと」

震える声に心臓が高鳴る。

「なんですか、それ。泣きそうなグラッド見たいです。ちょっと離れて」

「駄目です。リオはかっこつけたがりなのに、私にはかっこつけさせないのはずるいです」

少し拗ねた声に胸がときめく。

「ごめんなさい、今のもう一度言ってもらってもいいですか」

「却下します」

「ミレニア様に聞かなかったのですか?」

「……領主の条件は知っています。だから、聞きませんでした。でも何故か不安がつきまとって自分に大丈夫だと、言い聞かせていました。」

「そうでしたか」

しばらく抱きしめられていた。

その様子を通りがかった庭師や使用人に見られた。みんな一様に生温かい視線とにやにやした表情で去っていく。

「すみませんでした。」

落ち着いたらしいグラッドが謝る。

「いえ。グラッドはどっちが良いですか?男の子と女の子」

抱きしめられている間、考えていたことを尋ねる。

「弟がいいです」

言葉が足りなかったようだ。

「違いますよ、子供です。息子と娘、どっち?」

グラッド似の息子も娘もどっちも可愛いだろうなぁという妄想からでた質問だった。

が、グラッドが黙ってしまった。

「肌合わせもまだなのに何言っているんだって思いましたよね?!すみません、」

「息子も娘も、どちらも可愛いと思います」

グラッドが話にのる。

「あ、やっぱりそうですよね、グラッド似の」

「リオ似の」

?言葉が被った。

「私似?いやいや、グラッド似であれと思います」

「リオ似のほうが絶対可愛いです。」

意見が分かれた。

なんということだ。

「お二人とも、何を可愛い会話をしているのですか?」

そこにミランダが千加を連れて現れた。呆れている。

「ミランダはどう思いますか?!グラッドに似た方がいいと思うのですが」

「どっちでもいいでしょうに」

「そうそう、リオ様もグラッド様もどっちに似てても結局うちの子可愛いってなるんだから意味ないっす」

二人に面と向かって言われると何もいえなくなった。

それから、

「千加、リオって」

発音が変わっていた。

「ん、あー。ミゲルがめちゃくちゃ耳が良くて理央って発音できるんですよ。流石にミゲルだけだといいんですけど、他の人に聞かれると不味いかなと思いまして」

「わかった。私もチカって呼ぶ」

咲良も耳が良かった、確かにそうだけど少し寂しい。

「二人きりの時にまた千加って呼んでもらうんで」

と言った千加がグラッドを見る。

言外に二人きりになれるのかと言われている。

そこまで狭量ではありませんとグラッドが言うと、ミランダが疑うような顔をした。

信用がない。

「子どもの前にリオ様は、ソフィアが言っていた結婚後相手に求めることの話し合いからでしょうよ。私はちゃんと話し合いましたよ?」

「チカが大人なのが、悔しい」

「さーせん。早くも子持ちになりましたのでその報告もしておきます」

「は?」

「十歳の娘ができました。」

急展開すぎる。確かに子供がいたら引き取るとは報告を受けていたけど。

「ミゲルさんの子供」

「はい。それは間違いないです。ちゃんとミゲルの遺伝子入ってるのを確認したので。あ、方法は説明できません」

「今、ミゲルさんは?」

どういうことか問い詰めたい気持ちだ。

「リーベックからシノノメに移動したって連絡がありました。リオ様、これ見てください。指輪っす」

千加から見せられた指輪はとても飾りっけのない指輪だった。千加の細い指にひっそりと光っている。

「リオ。この指輪、見た目に反してものすごく高価な金属で出来ています」

小声でグラッドが教えてくれた。指輪が送られてきた時、グラッドが鑑定したようで頭が痛くなったそう。

「チカは、無理してない?」

環境が変わって間もないのに色々起こったはずだ。千加の様子の変化を見逃さないように問いただす。

「してるように見えますか?」

「見えない。嬉しそう。私が立ち入れない部分にミゲルさんがいるんだろうとは思った。それに少し吹っ切れた感じはする。」

感じたことを伝えると

「やっぱりリオ様は面白いね」

グラッド様が許すなら今ここで抱きしめたいですよと軽い調子で言う。かなり動揺している。

当たったようだ。

「その子の名前は?」

「覚えていないから、私がつけた。キキ、可愛いっしょ」

「覚えて、ない?」

「そう。母親は名前で呼ばなかった。ずっと。子供を産んだことを後悔していた。ミゲルの子供が欲しかったはずなのに、しかもそれを黙っていた癖に、だ。」

千加が顔を顰めてそう言う。怒っている。

「まぁ、時間がある時に改めて紹介するよ。」

「わかった」

ミランダも初耳だったらしく眉間に皺が寄っている。

「ミランダ」

「十年前ですか、……子供の母親に心当たりがあります。まさか、こんなことをする人だとは思ってもいませんでした。」

ミランダが語るその人は、ミランダ達よりも歳上で師匠の知り合いだった。

丁度十年前、師匠が亡くなった時も落ち込むミゲルを慰めていた。とても優しくて頼れる女性だったと。

「そうでしたか。悲しいですね。彼女に会って確かめたい?」

「いえ。私が確かめなくても、ミゲルがもう確かめているでしょう。いいんです」

「彼女の居場所はわかりますか?チカ?」

「知ってるよ。スレートの東の村にいる。」

「ミランダ。会いに行って確認してきてください。」

「リオ様!」

「会いたいのなら、会いに行くべきです。ミゲルに語ったことが本当でもミランダが感じる真実もあるでしょう。行くべきです。」

「リオ様。私はリオ様の専属筆頭で」

「もう、強情ですね。はい、これを見てください。」

私は予定表を取り出しミランダに見せる。

「明日はミレニア様と伯爵夫人の仕事についての話し合いがあります。その翌日も。そして、この辺りに、肌合わせを予定しています。休暇の後半にはフロスト家に挨拶へ向かいます。いいですか?予定は決まっているので、ニーナやイザベラ、ノヴァで対応できます。今しかないんです。お願いします。私のためにも確認してきてください、ミランダ」

「リオ様のため、ですか?」

「そうですよ?ミランダが確認しに行かないと、このことが気になって仕方ありません。予定に支障がでるかも」

「脅しですか」

「脅しだなんてとんでもない。」

「はぁ、わかりました。会いに行きます。」

ミランダは一礼すると踵を返した。



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