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不運な召喚の顛末  作者:
第二章
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魔法省編再び28

言語学習の基本として、挨拶がある。動作と同時に教えていく。

咲良は耳が良いからか発音で躓くこともなく反芻できるようになった。挨拶はこの日から日本語を使っては駄目という縛りをつける。

「いただきます」

朝の家事の時間にレイカが受け持っていた洗濯を咲良が一人ですることになったと聞いた時は驚いた。レイカも驚いたそう。咲良から申し出があったようで、昨日から一人で洗濯係として任務を遂行している。理由は付け爪が折れたから。

「サクラ、『お茶のおかわりは必要?』」

「『お願いします』ありがとう」

咲良のカップはピンク色。ジュリエットの使っていたカップは彼女が持っていったから別のカップだが、同色である。

ニコルがカップを購入しているのだが、誰にこの色と言うのは特に考えていないらしい。その時店の在庫にあった色で被らない色を選んでいると言う。例外はあるようだが。

今日の咲良はピアスを外している。昨日までしていたのに。

ミランダの反応の他に宿舎でも耳が痛そうと言われたのが理由だ。レイカはピアスをつけていても問題ないと思っていて、本人が落ち着くのなら無理に外さないでいいという考えだ。

でも、咲良は

『外す。衛生面の心配もあるし、特に拘りもないから』

とさっさと外した。

午後からも言語学習を続ける。

文化学習は、もう少し言葉を覚えてからにしたいと情報収集のみにとどめることにした。

趣味の話や近年の出来事などを聞いていく。私がテリンドングで話しレイカが日本語訳をする。

『楽器ってどんなのがあるのかなぁ』

「楽器ですか。種類は豊富で弦楽器、打楽器、管楽器とおそらく伝統楽器以外なら近いものがあると思います」

咲良はギターを弾きたいらしい。

クラリスは芸術系の授業は熱心で知識も豊富だ。

「ですが、楽器は高いです。」

『そうよね。よし、』

咲良は作ることを決めた。すごく行動的だとレイカが驚いていた。私は咲良のその行動に既視感を覚える。

「レイカさん。気をつけてあげて下さい。今彼女は動くことで心のバランスを保っている状態だと思います。」

「わかった。ありがとう」

二階に山積みになった魔道具の外装を解体しながら、使えそうな物を見繕うのだと野望を抱いている。

取り敢えずニコルに報告して、了承を得る。

ニコルにも私の懸念は伝えた。経験談だと言うと

「あんなに落ち着いていたのに」

驚愕の表情をするニコルにちょっとイラッとした。

「何を白々しい。小娘の虚勢だってすぐ分かった癖に」

反射的に口から出た言葉に

「口悪っ、どうしたの急に。ミランダさんに毒された?!」

ニコルが突っ込むも、言葉の選択が悪かった。

「ニコル。縛りましょうか?」

ミランダに睨まれニコルが青褪める。

「あ、ごめん」

「リオ様」

私も睨まれる。

「失礼しました。ニコル先輩」

「あれだ。つい、で強めの拳が飛んできたのと一緒だ。」

「ああ、確かにあれもイラッとしました」

緑のカップの理由にも、つい反射的に一発いれていた。

「前にも経験ありましたか。リオ様はのんびりなところと反射的な行動の落差が激しいので驚きます」

「驚いてるんだ」

「驚いています」

「ミランダは結構顔に出るからわかりやすいです」

「えー、そんなこと言うのはリオさんだけじゃない?」

「私程度の無表情を読めないようじゃ、やっていけないのでは?ニコル大丈夫ですか」

「冗談だし」

ミランダが揶揄うと元諜報員舐めるなとニコルが分かりやすくプンスカしだした。

「何、遊んでるんだ?」

アランが宿舎裏手で飼育している動物の世話から戻ってきた。大分動物にも慣れて最近では遠目に犬を見ても青ざめなくなった。

「サクラさんが楽器を作りたいそうで、魔道具の外装を流用していいかの確認をとってました」

「楽器って作れるのか?」

「仕組みがわかれば作れるとは思います」

「じゃあ今は、二階か?」

「はい。レイカさんが解体のお手本を」

「お手本になったのか?アレ。レイカの解体速度が異様に速くて俺は自信無くしたけど」

「私とブレンダンは問題ありませんでしたけど」

ミランダをチラリと見る。神妙な顔で

「戦力には成れませんでした」

首を横に振る。

「良かった、仲間がいて」

アランは笑うと、お茶を飲んで宿直室のお風呂を使いに行く。宿舎にもあるが、宿直室の方が設備がいいのでここまで戻ってくるのだ。

私達も二階へ上がり二人を手伝う。

弦になりそうなものがないと咲良が唸っている。

『まずは打楽器でもいいんじゃない?あとは笛とか?』

『オッケーオッケーそれで行こう』

咲良はレイカの言葉に頷き、切り替えるとバチの代わりになりそうな棒状の物を探し始めた。

太鼓なら手で叩いても良いはずだが、彼女の中ではドラムのような楽器を目指しているようだ。

「楽器奏者は人手が少ないですから、上手く演奏出来れば仕事にも困らないかと思います」

ミランダがそう言うと、咲良は否定する。

『趣味だし。仕事にはしない』

「失礼しました」

『「気にしないで」私の目標は帰ることで、楽器はそれまでの慰め?あと楽しむ為のものだし。』

咲良は世間話のような気軽さで言う。

「サクラ」

レイカが心配そうに見つめるも、あっけらかんとした表情で

『戻っても死ぬだけなのはわかってるし、でも私はこんな異世界で死にたくないし死ぬなら家族に看取られたい。そこは譲れない。その為に生きる。』

はっきりと宣言する。

『それが、答えなら止めないわ。私達召喚課は転移者の支援をするのが仕事だもの。』

解体した部品の中から幾つかを見繕い楽しそうに階下へ降りていく咲良の後ろ姿をみながら

「サクラさんはすごいです」

「そうね。私も吃驚してるわ、ニコルから転移者の中にはどうしても帰りたくて帰る為の研究をしている人達が一定数いると聞いていたから彼女もそうなんだと納得してるけど」

「レイカさんは」

「私はここで生きていくって決めた。例え帰れたとしても今は帰らないと決めたわ。まぁ帰る人達に手紙を託すくらいはするけど。死にたくないもの」

帰還方法が完全にない訳ではない。運の要素が強すぎて手段に出来ないだけだ。

「……失礼しました」

「いいわ。お土産に高い物でも要求しようかしら」

悪戯っ子な笑みを浮かべるレイカの言葉を

「失言の詫びになるのであれば、好きな物を要求してください」

粛々と受け止める。

「言ったわね。ふふふ、何お願いしようかな」

いつの間に情報を仕入れたのかサイス領の特産品を指折り数えている。旅行好きを舐めてた。

「ふふふ楽しみだなぁ、あ、あとでリスト渡すから!」

本気で楽しそうなレイカに呆気にとられる。

「構いません。どんとこいですよ」



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