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不運な召喚の顛末  作者:
第二章
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魔法省編再び22

「ミランダさん。リオは大丈夫?」

レイカはドアのところで立ち尽くし、しばらく躊躇っていたがようやく声をかけた。

その気配を感知していたが、ミランダはあえて声がかかるまで無視をしていた。

「泣いておりましたが、今は眠っています。レイカ、何があったのですか?リオ様が嫌がるだろうと思い、あの女を切っていませんがそういう危険があったのは理解していますか?」

「わかっているわ。」

「貴女の理解ではありません。あの女が理解しているかどうかです。でなければ繰り返されます」

「ごめんなさい。足りていなかったとしか言えない。急にリオを侮辱する言葉を口にした、理由は全ての言語が母国語レベルだから。私も意味がわからない。」

レイカの言葉にミランダは兄の言葉を思い出した。

「兄は耳が良く、リオ様の言葉は綺麗な音がすると言っていました。」

クラリス様の声を偶然聞いた時は顔を顰めていたのに。

あの日リオを隠した理由は面倒になること以外にもクラリスと気づかれるのを危惧したからだった。

「綺麗な音。それが嫌だったってこと?」

「レイカさん。彼女は今気が立っています。リオ様と会わせたくありません。音が気になるのは神経質だからではないですか?ミゲルも新たな土地では少しの音でも寝れないと言っていましたから」

ミゲルは横暴な態度と口の悪さが先行して繊細な部分は気づかれにくい。防音壁の中で寝ることもあるくらい音に敏感な時がある。普段は危険だからとしないのだが。

「わかった。ちゃんと理解させる。耐えてくれてありがとう、ミランダさん」

「いえ。しかしどのように説明したのですか?」

「ここは異世界で、私達の今までの常識が通用しない。王様がいて貴族がいて平民がいる。身分社会で私達は何の身寄りもいない一番底辺の弱者。だからこの世界で生きていくために教育が必要だから一緒に頑張りましょうって説明したわ」

「混乱した時にいっぺんに大量の情報を与えても無駄ですから、レイカさんの説明はいい量だとおもうのですが、ニコルは何と言っていましたか?」

「問題はなさそうと。」

黙ったレイカは言葉を続けられなくなった。

「どうしました」

「……でも、私はニコルから似た説明を受けて、あぁだから私はこんな目にあったのかと納得したわ。彼女にはこの世界と元いた世界との違いがわからないのかもしれない。見た目もそこまで違わないから理解できないのかもしれないわ。ごめんなさい、考えが至らなかった」

「なるほど。恐怖体験をさせましょうか?いくらでもできますよ?」

「ニコルと相談する」

「冗談ですよ?」

「私は本気だもの」

「リオ様なら完全に狼狽えているところです」

「ふふ、確かに。リオはそういうとこ可愛いわ。」

近づいていいかしら?と問われる。

構わないと返答すると、レイカはそっと近づく。

ベッドの側にしゃがみこむと、リオの頭を優しく撫でた。

「ごめんね、リオ」

呟き、すぐに部屋を出て行った。


部屋に戻り、ニコル達にミランダとの会話を伝えた。

ブレンダンは反対。アランも反対だが、実感が必要なのも否めないと言った。

ニコルもアランと同じだった。

「レイカはどう思っているの?」

「気を遣って優しい言葉を使ってた。だからもう少し強い言葉を使おうって思った。恐怖体験よりも衝撃体験なら出来るかもしれない。」

「レイカが無理なら僕が代わる。やれるだけやってみて」

「ありがとう」

奥の部屋に戻り、ふくれっつらをした咲良に話しかけた。

『さくら。昨日私が言ったことを覚えている?』

『覚えてるわ。』

『今日言ったことは?』

『覚えてる!何?』

『貴族に侮辱的な言葉を叩きつけて無事でいられると思ってるの?死にたいから態と暴言を吐いた?』

冷静に冷静にと自分に言い聞かせる。

『はぁ?』

『どっち?』

『どっち?なんで、私は保護対象で、アンタ等は支援者なんだから、…え、死ぬの?、わたし』

咲良は言葉を続けられなくなった。

『この国の法律に転移者の保護は義務づけられていないわ。』

落ち着いてから話すはずの内容を告げる。

『え、じゃあなんで』

『この国ができた時に転移者を保護したいと申し出た貴族がいた。その方は建国に際して多大な功績があったから、そのおかげで召喚課ができた。召喚課は元々法律で禁じられている召喚という魔法を取り締まるためだけの部署。そこに転移者の保護と支援の仕事を与えた。わかる?私達が今生きてここにいるのはこの国の善意でしかないの。』

みるみる内に顔色が変化していく。

『常識が通用しないと言ったはずよ。ここは日本ではないわ。不運にも異世界に来てしまった、帰れない、それはとても悲しいことだわ。混乱して思わず意図したことではない言葉を口にすることもあるでしょう。でも、さっきの言葉はそうではないわよね?』

咲良の言葉には悪意があった。自分が以前リオに向けた言葉とは違う意味合いを感じた。

『どうして、傷つけたかったの?』

『だ、だって、なんの苦労もしたことないお嬢様が保護と支援を学びにきてるとか、私達は見せ物じゃない、動物じゃない。』

否定しない。やっぱり傷つけるための言葉だった。

『日本にも児童保護施設や生活保護という制度がある。それを貴女は動物園の動物のように受け取っていたの?見せ物だと?』

『ち、がう』

違う?どういうこと?リオだけに忌避感があるってこと?

昨日の言葉のようにお嬢様のお遊びだと思ってる?

『じゃあ誰になら保護されたかった?』

『レイカとかアランなら』

アラン?最初に対応したニコルじゃなくて?

『それは転移者だから?』

『そうよ!それなら私達は同類だし安心できる』

表情が明るくなった。私が自分の言葉の意味に理解を示したからだろうか。

『私が誰の助けもなく言葉が喋れるようになったとでも思っているの?アランもそうよ。私達二人の教育係はニコルで、彼も貴族よ。昨日言ったわ、転移者は身寄りがなく最底辺の弱者だって。助けもなく生きていけないの』

『なら!甘んじて受け入れろってこと?!嫌よ!』

甘んじて受け入れろ?何故そう思うのだろう。まだ保護されて当たり前だと思っているのだろうか?

『何も強要されてないでしょ。それにこの国に転移者を保護する義務はない。出て行って構わないの。助けを求めない人を保護はしないし、理不尽に攻撃されてまで保護する義理もない。リオはそれでも我慢して貴女に歩みよろうとするでしょうね、召喚課で一番のお人好しよ?』

『何よ、結局受け入れろって脅してるじゃない!何処に行けるってのよ!』

脅しに受け取る。何て言ったらいいかしら、自分が理不尽な攻撃をしていると理解していないのか。

もっと身近な話題で、何かないだろうか。あの行動の理不尽さに気づくことが出来れば、まだなんとかなる。

『さくらはバイトしたことないの?』

『は?何唐突に、あるし!馬鹿にするな!今の話に関係ないでしょ!』

『……リオは言うなれば私の同僚。バイト先の仲間。しかも仲良し。その同僚に新人バイトが初日から暴言吐いてる。貴女ならどうする?』

私の例えに再び顔色が悪くなる。

日本での事象に例えるか、うーんどうしようか。

『あ、ぁ、それ、は』

『しかも話し方がキモい。それって今の日本で許されてるの?私がいた日本では許されてなかった。諌められる言動で、仲間内の軽口陰口でしか存在できないものよ?貴女のいた日本では許されてた?』

完全に咲良が黙ってしまった。

やり過ぎたかな、と咲良の表情を観察する。

まだ自身の正当性と理不尽な言動とがひしめきあっている。素直に認められないようだ。

ごめんなさいと謝れば、多分リオは笑って許してくれる。その発言に至った気持ちを慮ってくれる。そういう子だ。

『耳が良すぎるのも問題ね。夜は眠れた?』

『…レイカと仕切りもあったし、離れていたから』

言葉に先程までの勢いはない。

彼女が選んだベッドと私が使っているベッドは離れた位置にある。衝立も家具を動かした時に増やしてもらった。

『耳栓を使ってみる?少しは気にならないかもしれないから』

咲良が無言で小さく頷いた。





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