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不運な召喚の顛末  作者:
第二章
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魔法省編再び20

「リオさん、ミランダさん、レイカもちょっと来て。」

ニコルから呼ばれた。昼食後、レイカと教科書の見直しをしていた時だ。

「神殿から連絡があった。これから転移者疑いの人物を魔法省へ移送するそうだ。門の所で待機しよう。アランはここで待機。ブレンダンもそのまま仕事を続けてて」

四人で門へ移動し待機することになった。

しばらく待機していると一台の馬車が魔法省へ入ってくる。

「転移者疑いの人物を連れてきました。こちらが資料です」

御者の男性がニコルに書類を渡す。

「転移者疑いの人物は女性。発見場所はマウリッツ、海岸沿い、外傷はなし。歳の頃十代、黒髪、肌は黄味がかった白、怯えた様子はなく、帰りたいと連呼している。会話困難。……困難?取り敢えず僕が対応する。言葉がわかっても黙っていて」

「はい」

転移者疑いの人物の特徴を聞くだけでアジア人だと推測がつく。レイカも同じだったようで、目が合う。

馬車のドアをノックして開ける。

『こんにちは。言葉がわかりますか?』

と日本語で話すとすぐに反応があった。

『日本語!貴方、日本人なの?え、なにその髪色、ヴィジュアル系?つーかここどこ!?外国?拉致なの?誘拐?私の家そんなに裕福じゃないから身代金とかマジ無理だし、はぁまじないわぁ』

マシンガンのように息継ぎもせずに話す彼女に困難という意味がわかった。聞き取れないだろう。こんなに早口だと。

『貴女の名前は?私はニコルです』

『私?咲良。ねぇだからここどこなのよー』

『ここはソルシエール。貴女のいた地球とは別の世界です。』

『はぁ?いやいやいや、嘘は駄目でしょ。そんなわけないじゃん。ずっと通ってた道よ?二十年は歩いた道よ?ないないない』

「あり得ます」

『はぁ?何?何語?英語じゃないし、つかそれで異世界とか言われても信じないし。私が知らない、あーほら、アラビア語とかかもだし、何が目的よ!』

ニコルが私達を振り向き一言

「転移者です」

と言った。

ニコルは御者の男性に神殿にも転移者はいるのに意思疎通が出来なかったのかと尋ねた。

「はい。彼女と同じ国の出身者が生憎不在で」

「アヤノは外出中か」

「はい。転移者の発見現場に数日前から出かけております」

「災難だったな。彼女は僕等が引き取る。ご苦労様」

ニコルは再度咲良に声をかける。

『君の置かれている状況を説明するから、ついてきて。』

『はぁ?何で?嫌よ、ここで話して』

『それなら別についてこなくても構わない。それじゃあ、お元気で、さようなら』

ニコルが馬車のドアを閉めようとすると、咲良がそれを制止する。

『わかった!ついていくから!』

馬車から降りた咲良は二十代前半の女性だった。黒髪ショート、所々ピンクのメッシュが入っている。ニコルにヴィジュアル系とどの口が言ったのか。ピアスもゴツめのものがたくさんついている。爪が長くキラキラしていた。

ニコルの後ろを私達を気にしつつ、ついていく。後方から少し距離を開けて歩く。

「すごい早口だったわね」

「あれでは聞き取れないです」

「耳が痛そうです」

ミランダは顔を顰める。この国にピアスの習慣はない。確かに初めて見ると痛そうだと感じるだろう。

管理棟へ戻り、召喚課へ彼女を招く。

席に着かせ、お茶をすすめる。彼女と向かい合うようにニコルも座った。

では説明を始めるとニコルが言うと咲良は疑うような厳しい表情をみせた。

『ここは君のいた世界ではない。日本でいうところの神隠しでこの世界にきた。拉致でも誘拐でも外国でもない。ここまではいいか?』

『全然良くないけど、続けて』

不機嫌そうに顔を顰め、ニコルを睨んでいる。

『僕達は君達のような人間を転移者といい、保護している。ここで言葉やこの世界の習慣、法律などを教えている』

『帰りたい。言葉とかまじどうでもいいし』

『帰りたくても帰れない。帰る方法がない』

『嘘よ!何で』

『嘘ではない。嘘をついてこちらになんの利がある?帰れない。だからここで暮らしていくための支援を行っている』

『帰りたい。うぅゔ、あんまりよ!』

咲良は号泣する。机に突っ伏して声をあげて泣く。

痛ましい声が召喚課に響き渡る。何も声をかけられずに、彼女の姿をみているしかできなかった。

その様子を見ていたレイカがニコルに

「部屋を案内するわ。」

声をかける。

「うん。お願い」

『さくらさん?部屋を案内するわ。おいで』

『え?…あ、アンタも日本語、喋るの?日本人?』

涙を流し鼻を啜っている咲良にレイカはハンカチを渡す。

『私は、ね。貴女と同じ転移者よ。まずはこっちにおいで』

レイカが咲良を連れて奥の部屋に入っていく。しばらく泣き声が聞こえていたが聞こえなくなった。すると、レイカがでてきた。

「泣き疲れて寝てる。アランは部屋の移動をお願いね?」

「わかった」

アランは先に部屋から運び出していた個人の荷物を持って宿舎へ移動した。

「リオ。ちょっといい?」

「はい」

「ニコルから話があったと思うけど、貴女はサイス領所属の貴族よ。そこは絶対に間違えないで。あと、」

レイカは一度言葉を切り

「私が先に対応するわ。」

強い口調で宣言する。

「レイカさん、私も」

さっきは見ているしか出来なかったけど、と奮い立たせる。

「駄目よ。リオは大人びて見えるし、この世界では成人だけど日本人の認識では十七歳はまだ子供。まずは、見てて。」

「わかりました」

「私では駄目だったらお願いするから。ニコルもそれでいいわね?」

「お願いしよう。僕では彼女の早口に対応できない」

ニコルが苦笑いする。

彼女が目を覚ますまで教科書の見直しや役割の分け方を話し合って過ごした。

『うぅ、なんで夢じゃないのぉ』

奥の部屋のドアを開け、咲良が顔を出す。

『よく眠れた?お腹空いてない?』

レイカが席を立ち、テーブルまで咲良の手を引く。

『お腹空いた。』

「リオ。準備して『紅茶と緑茶、どっちがいい?』」

『緑茶』

テーブルに広げた資料を片付け、咲良の前に食堂でもらってきたサンドウィッチと緑茶をだす。手拭き用のタオルも用意する。それを咲良は凝視した。そして私とタオルを見比べてタオルを手に取る。どうしたのだろうか。

『いただきます。』

無言でサンドウィッチを頬張る咲良に

『食べられない食材があれば言ってね。』

レイカが声をかける。

『特にない。好き嫌いもないし』

不機嫌そうに眉を寄せている咲良をレイカは無視する。

「リオ、今日はもう戻っていいわ」

「わかりました。お疲れ様でした」

普段と変わらないレイカに尊敬の念を覚える。それと同時に悔しかった。不甲斐ない自分が悔しくて仕方なかった。

「明日落ち着いてから紹介するわ」

今日は早めに寮に戻った。



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