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不運な召喚の顛末  作者:
第二章
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魔法省編再び18

召喚課に出勤すると、クリスがアランに抱っこされていた。

レイカはクリスのほっぺをつついている。

「おはよう、ございます。どうしたんですか?」

どういう状況だろうか。

「今日コランダムに出発するから、寂しがってる」

「ああ。」

それはわかるのだが、レイカの行動もそうなのだろうか。

コランダムに移動することは理解していても、寂しいものは寂しい。しばらく三人のやりとりを見守っている。

「おはよう」

旅装のオスカーが召喚課へ入ってきた。その後ろからニコルとブレンダンも出勤してきた。ニコルの眉間に皺が寄っている。

「おはようございます。」

「さて、クリス。コランダムに出発するけど、いいかな。」

オスカーの言葉に力無く頷いた。

「う、うん。アラン、降りるぅ」

「ほら」

アランが少し雑にクリスの頭を撫でる。 

クリスはオスカーの側に立ち、服の裾を掴む。元気がない。

「コランダムに出発します。また機会をみて顔を見せにきますが、やっぱり寂しいね?クリス」

オスカーの言葉にクリスは俯いたままだ。

「ほら、クリス。ふくれっつらしないの。はい。これあげるわ」

レイカが帽子をクリスの頭にのっける。クリスから見えない場所に隠していたようだ。

「帽子?」

「そうよ。私とアランから。あ、ここのアクセサリーはニコルよ。次に会う時までにどちらが美しい立ち居振る舞いが出来るようになってるか勝負よ、いいわね?」

帽子を指さしながらレイカが説明する。そして、突如突きつけられた挑戦状に

「うん!絶対負けないもん」

クリスの表情にいつもの明るさが戻ってきた。

そしてレイカの次に私がクリスの前に進み出てしゃがみこむ。

「コランダムでも頑張るクリスを応援しています。これは私とブレンダンから。ミランダからは武器一式もらったでしょ?ちょっと悔しくなったので」

ブローチをつける。クリスの好きな赤色の石のついたブローチだ。

「ありがとう。昨日のお出掛けがプレゼントだと思ってたからびっくりした。」

「ふふふ、驚かせるのは得意なんです」

と言ったら、クリスがじとっとした目つきで

「リオ。あんまりミランダに心配かけたら、めっよ」

レイカみたいなことを言い出した。

「う、気をつけます」

「クリスさんもっと言って下さい」

ミランダの言葉に、クリスがえっへんと偉そうに胸を反らす。

「オスカー先輩。これはお昼ご飯にどうぞ。」

立ち上がり、オスカーに隠していた包みを渡す。

「手品みたい」

急に現れた包みに驚きで開いた口が塞がらないクリスをみて笑みが零れる。

「お気遣いありがとう、リオさん。ほら行こうかクリス。見送りはここでいいから。またね」

「じゃあね」

クリスが手を振ると

「いってらっしゃい」

目を潤ませたレイカが手を振り返す。レイカの優しい笑顔に

「行ってきまーす」

クリスは元気よく返事をした。

終始ニコルは何も言わなかった。

ドアが閉まるとレイカは静かに泣き出した。その肩をアランが抱きしめる。

「よく我慢したな。」

「本当よ、我ながらよく我慢したわ」

声を震わせながらそう言ったレイカと目があった。

「リオは絶対泣くと思ってたのに」

恨めしそうな表情で睨まれる。

「我慢は無理なので、ここで涙を吸収しています」

私は目の縁を指さし堂々と申告する。

涙がこぼれないようにと考えた結果、思いついたのは目の縁に闇属性特化魔法を使用することだった。

私の申告に、全員が理解が追いつかない顔をした。

「何、どうなってるの?」

ニコルは私の正面に回り込み目の下を注視する。

「リオ様」

ミランダは頭を押さえた。

「え、じゃあ今泣いてるわけ?」

「はい」

レイカは何それ、涙が引っ込んじゃったわと笑った。

アランはブレンダンにあれは普通の対応か確認していた。ブレンダンはそんなこと考えたことも実践したこともないと真面目に返答していて面白かった。


管理棟から出て魔法省の入り口の門までオスカーは泣きじゃくってるクリスを抱いて歩いていた。

門の所で荷物を括りつけた馬に乗る。

「オスカー。」

そこにジャックが姿をみせた。

「局長。馬上から失礼致します」

「いや、いいんだ。クリス君は、号泣だね。」

ジャックはクリスをみると、苦笑した。

「予想済みですので。」

「そうか。では気をつけていってらっしゃい。」

「はい。ありがとうございました」

「クリス君、またね」

「うん。」

クリスはジャックに無言で手を振る。

門番は二人とも目頭が熱くなっているようでハンカチを当ててクリスに手を振っている。

魔法省を出て、王都の街を馬で歩く。

「クリス。ほら見て、昨日は行けなかった市場通りだ。人通りが多いね」

「うん。レイカは大変だと思うの」

すぐに出てくるのがレイカの心配かと微笑ましく思う。

「いつか一緒に行こうね」

「うん」

王都の門を出る。自然の多い王都の外。

クリスに前を向かせる。座り直したクリスに話しかけた。

「クリス。ほらここからコランダムまでの道のりを覚えていこう。また王都にきた時にレイカやアランに教えてあげよう。二人はクリスの話を聞きたがると思うなぁ」

「うん!」

クリスに笑顔が戻ってきた。


王都の郊外まで行き、休憩をする。シートを敷き、昼食の準備をする。

「クリス、リオさんが持たせてくれたお昼ご飯食べようか」

「うん。リオ何作ってくれたのかな」

クリスが包みを開けると中に入っていたのは、サンドウィッチだった。

色々な具材が挟まれている。

「美味しそうだね」

「クリスは何が食べたい?好きな物選んでいいよ」

「これがいい」

恐らく肉が挟まれているだろうサンドウィッチを選ぶ。

一口大きな口でかぶりつく。

クリスの目がみるみるうちに輝いていく。

「おぃひぃ」

口にまだ入ったまま喋ってしまうほど感動していた。

クリスが選んだものとは別のものを口に運ぶ。

「これは、ジャモかな?美味しい」

野菜を避けそうなクリスのことをわかっているのか、クリスが最初に選んだ物以外には野菜が何かしら使われていた。

でもどれもこれも美味しかった。

「リオはね、とってもすごいんだけど。何故かレイカとニコルによく怒られてるの」

ちょっと残念なのと言うクリスの顔は楽しそうだ。

ジュリエットにテディベアを作った時も、リオの裁縫の腕前が凄すぎるので

「私達の存在が霞むから手伝っちゃだめ」

とレイカに言われていたと教えてくれる。

剣術訓練の時もスカートで走ってたし、手の皮が捲れるから厚手の手袋をした方がいいと言ってたと話すとレイカが頭を抱えてたらしい。

「リオとジュリエットが困ってる時は僕が助けに行くの」

ニコルから息子にならないかと話をされた時、最初は断っていたクリスの意見を変えるきっかけになったのはレイカが、

「貴族を助けられるのは貴族しかいないわ」

と言ったからだそう。

「力がなければ助けられない時もあるわ。それを得られる機会がクリスにはある。私はニコルの子供になってもいいと思う」

それからじっくり考えてクリスは決意を固めた。

まだ幼いのにそんな決断をさせてしまったことを申し訳なく思っていたが、

「僕、たくさん頑張る。お、とうさんも応援してね」

幼いなりにちゃんと理解しているのだと考えを改めた。

「これからも宜しくね。クリス」

照れたクリスの笑顔が眩しかった。


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