魔法省編再び15
お腹が空いていた二人はおかわりもペロリと平らげた。
「リオさん。美味しかった」
「それはよかったです。」
食器を片付ける。
余ったスープはカップに移し、パンは皿に並べそれぞれに蓋を被せた。台所を綺麗にして、寝室へ戻る。
私が戻ってきたのをみて
「じゃあ、私は仕事に戻るわ」
ミリィが席を立とうとすると、ブレンダンが手を掴んだ。
「あの。ミリィさん。ありがとうございました」
真っ赤になりながらお礼を言うブレンダンに
「気にしないで。」
ミリィは爽やかな笑顔で応える。
「ブレンダンはここで休んでいて下さい。ミリィさんは私達が送っていくので。あと、残ったスープとパンは台所に置いてますので食べてかまいません」
「ぁ、ありがとう」
宿直室にブレンダンを残して管理棟を出る。
「ミリィさん、ありがとうございました」
「ううん、いいの。リオさんが来てくれて助かった。私だけだとあのままどうしていいか分からなかったし」
戸惑いが大きくて何をしたらいいのか、全然わからなかったと話す。ミリィは次は上手く出来そうと笑顔だった。
前向きな言葉に彼女の強さを感じた。
まだ混乱の残る本館つきの宿舎までミリィを送り、再び管理棟へ戻る。
「朝から吃驚しましたね」
「全くです。ちょっと離れるとすぐこれです」
「あれは私宛の不審者じゃないです」
「ブレンダンも不審者を呼び寄せる何かを持っているのでしょうか」
「ミランダ。それ本人の前で言わないでくださいよ。泣きます」
召喚課へ出勤するとニコルも戻ってきていた。
「ご苦労様。大変だったね」
「ニコル先輩。」
「無事ブレンダンの管理棟への住居移動は完了しました。」
「宿直室に住むんですか?」
「いや。二階にも一部屋あるからそこを使ってもらう。」
「ありましたっけ?」
「資料室扱いで全然使ってない部屋がある。掃除しないといけないから手伝ってもらおうかと思って」
「わかりました。それでは今日はその準備にあてます」
「ありがとう」
掃除道具を手に二階へあがる。ニコルの先導で案内されたのは、クリスの遊び場になっていた部屋の隣だった。
「ここ、開くのですね」
「中をみたらもっと驚くよ」
鍵をあけ、扉を全開にする。閉じないように固定した。
室内にはこれでもかとばかりに箱が積まれている。
「わぉ」
「あれは、魔道具の外装。上手くいかなかった失敗作ばかりだ。一応分解して資源として利用できるんだけど、魔道具局の奴等、造る事に特化し過ぎてて後始末が下手という碌でもない奴等なんだよ」
ニコルは部屋に入ると手前の箱を外に運び蓋を開けた。たくさんの部品が詰め込まれている。
「転移者の就労支援の一環で解体して小遣い稼ぎしてたんだけど、クリスは幼い。アランは不器用。レイカだけじゃ全然減らなくてさ。しかも最近はそんな暇なかったし」
意外な事実に驚く。アランは不器用。
「取り敢えず、これを運びだして、部屋の掃除からですか。箱の中身についてはそれから考えましょう」
私は気合いを入れる。
「リオさんは、こういう時凄く前向きだよね」
「リオ様は切り替えが早くて驚きます」
若干うんざりした表情の二人が仕方ありませんと準備を始める。ローブは一旦脱いで、掃除を始める。
箱を置く場所の確保から始め、そこに次々と運び込む。
箱は均一規格のためぴっちり積めた。
箱だらけの部屋が空っぽになると、掃除道具を手に入室する。設備の点検もして、正常に稼働することがわかった。
流石魔法省の設備ですねとミランダも感心している。
工程の半分ほどで一度お昼休憩を挟み、午後から再開。
就業時間内には終了した。ぎりぎりだったけど。
「お疲れ様。寝台や家具は手配済みだし、搬入が終えたらブレンダンには移ってもらうから」
「明日は魔道具の外装の整理をしましょう。ちょっと楽しみです。」
浮かれている私をニコルが疲弊した表情でみる。
「なんでそんなに元気なの。僕もう疲れたんだけど」
「魔道具は興味があるので楽しみです」
明日はレイカに任せようと疲れ切ったニコルがいつにも増して猫背で階下へ降りていく。
その後ろをついて降りる。
召喚課に戻ると術式管理地図の前でブレンダンが書類を整理していた。
「ブレンダン。体調はいかがですか?」
「リオさん。ミランダさん。ニコル先輩。今日はありがとうございました」
ブレンダンは私達が部屋に入ってくると、席を立ち、駆け寄ってきた。お礼をうける。
「今日はここまでにして、戻って。明日は休むかい?」
「いえ、寮の部屋だと、上手く休めなくて」
「ニコル先輩と同じ病気じゃないですか」
「リオさん。うるさいよ。……無理はしないこと。あ、そうだ。ブレンダンは手先は器用なほうかな?」
「細かい作業は苦ではありませんし、人並みにこなせます」
「よし。じゃあ明日は魔道具の外装解体の仕事をしてもらおう。明日はレイカとリオさん達と二階で作業して」
「魔道具の外装解体。魔道具局の仕事では?」
不思議そうに正論を言うブレンダンに
「アイツらにそれが出来ると思っているなら諦めたほうがいい。金になるからやる、それでいい。」
苦い顔でニコルが言う。
「わかりました」
ブレンダンは憑き物が落ちたようにすっきりした顔をしていた。声も震えていない。言葉もすんなり出ている。
不審者への恐怖がどれだけ精神負担になっていたかがわかる。
ブレンダンと、今日はニコルも一緒に寮に戻った。
夕食を食べながら宿直室の食材で気になっていたことを尋ねる。
「ん?あぁあれはクリスがふわふわパンケーキ食べたいっていうから揃えて作ってみたけど難しくてさ。二人で首を傾げたんだよ、レイカに聞いても菓子作りはしたことないって言うし」
なんと私がサイス領に滞在している間に揃えた材料だった。
「あ、でも野菜や果物は新しいから!卵も!」
「消費しましたが大丈夫でしたか?」
「なんなら小麦粉ももらっていいし。できれば何か作って」
「大雑把な」
後日食材を譲り受けることになった。一切合切だ。
夕食後二人と別れ部屋に戻る。
「リオ様。今晩は早めに休まれたほうがよろしいかと思います」
「そうします。おやすみなさい、ミランダ」
「おやすみなさい、リオ様」




