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不運な召喚の顛末  作者:
第二章
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魔法省編再び14

「あとは、何があるのかなぁ」

鍋類やカップ、食器。

寝室に戻り、棚を確認する。

防音の魔力壁を使用しているから音の心配はないが、丁寧に確認する。

「特別使えなそうなものはない。まぁ、大丈夫でしょう。」

魔力壁を解除する。ブレンダンに近づき観察する。

「ミリィさん。ブレンダンはどうですか?」

「さっきよりは顔色も良くなってきたみたい。汗もかいていないし」

「そうみたいですね。ミリィさんは朝ご飯は食べましたか?」

「え、私?まだだけど」

「じゃあささっと何か作ります。ブレンダンについててくれてありがとうございます。」

ブレンダンの額に乗せたタオルを回収して、顔や首筋を一度拭いて、緩めていた襟元を半分閉めて整える。

「濡れタオルはいいの?」

「ええ、これは外側を冷やすだけなので汗が落ち着いているならいりません」

コンコンとノックの音がする。

誰だろう?ミランダなら入ってきそうなものだが。

「はい。」

ドアに向かって歩いていくと、ドアが静かに開く。

そこには知らない男性が立っていた。

ウェーブがかった栗色の髪、赤い瞳。にやにやとしか形容できない笑顔。悪印象しかない。咄嗟にミリィ達を男の視線から隠す。

「どちら様でしょうか」

魔力壁を張る。しかも強固に何重にも。防音も忘れない。

「ねぇ、ブレンダンはここにいるかな?」

質問に答えない。警戒度をあげる。

「どちら様でしょうか」

再び同じ質問をする。

「ブレンダンの兄です」

「ブレンダンのお兄さんでしたか。失礼しました。ブレンダンは召喚課勤務をしております。二つ隣のドアが召喚課でございます」

殊更丁寧に応対する。笑顔も忘れない。

「ここにいるよね?」

「おりません。」

「へぇ、あれは誰?」

顎で奥で寝ている人物をさす。

「あれはわたくしの姉のミランダでございます」

「嘘だよね?」

赤い瞳と目が合う。

私は何故か凄く冷静だった。

あ、そっか。怖くないんだ。ミランダがミゲルのふりしてる時の方が眼光鋭いし、不審者度合いで言えば、まだニビ子爵の方が怖かった。

「嘘をつく理由がございません。嘘かどうかは召喚課を訪ねればわかる事です」

私と睨み合った男は急に攻撃を仕掛けてきた。魔力壁に弾かれる。

「アイツは俺の玩具だ!勝手に持ってってんじゃねぇ!」

男がいきなり叫び魔力弾を連射する。

「不審者ってなんでこんなにも訳の分からない理論で理解されると思っているのか……しかもすぐ突拍子もない行動にでる」

「さっさと返しやがれ!」

魔力壁を魔力で殴り始めた。稚拙な技だ。

「はぁ。」

盛大なため息をつき、魔力を足元から捕縛のために伸ばす。

「ブレンダンも可哀想に。こんな不審者につき纏われるなんて」

ジャックの魔力固めをお手本に琥珀の中の虫を想像して魔力を固めていく。さっさと口を覆いたい。大体の不審者は五月蝿いのだ。

「リオさん!」

オスカーの声がする。あんなに派手な攻撃をすれば気づかれるのはわかるだろうにと、さらにため息がでる。

「アイツは俺の奴隷なんだよ!てめぇらのもんじゃ、」

男の言葉に私の堪忍袋の緒が急に切れた。

「はぁ?!」

魔力固めの速度を上げる。

「馬鹿か?!誰が手前の奴隷だ!ふざけるな!」

「な!ごっぼ、がぼ」

魔力固めが完了したタイミングで話すからだ。

「リオさん!解除して、殺す気か!」

オスカーが慌てて、私の肩を揺さぶる。

「大丈夫ですよ。鼻は生かしてるので」

そこは抜かりない。

「落ち着こうか」

真剣な表情で諭される。

不思議なことに全く信用がない。

「いやいや、オスカー先輩、私は至って冷静ですから。」

「では、解除してくれるかい?」

「へ?なんでですか?不審者の拘束を何故解かないといけないんですか?」

首を傾げる。意味が理解できなかった。

「私が拘束して、本館に引き渡すからだよ。君はブレンダンについているようニコルから頼まれている筈だ」

ああ、なるほど。確かにこのままでは連行できない。

「わかりました。では解除しますが、猿轡を噛ませることを優先してください」

「了解した」

魔力固めを解除する。

不審者の男性は私を見て、怯えた表情をみせた。その彼をすかさずオスカーが猿轡を噛ませ、

「リオさん。ブレンダンを頼んだよ」

拘束し連行して行った。

「任せてください」

宿直室のドアを閉める。

「お騒がせしました。もう少し待ってて下さいね」

振り返り茫然としているミリィに謝ると、台所へ向かう。

野菜を細かく刻み、スープに。それからオムレツをつくる。パンも焼く。

大分簡単ではあるが、速さが大事だからと自分を納得させる。

皿に盛りつけ、運ぶ。スープは持ち手付きのカップに入れる。パンの上にオムレツを小さく切って乗せたり、片手でも食べやすいように工夫した。

「美味しそうね、」

「ん、ぅ」

匂いにつられたのか、ブレンダンが身じろいだ。

「うん!美味しい。」

ミリィの声にブレンダンが目を覚ます。

「あ。ごめんなさい、起こしちゃった」

「??り、おさん?と、ぇ、」

ぼんやりしてまだ焦点があっていない目でこちらをみる。

ブレンダンにゆっくり事情を説明した。

「みりぃ、さん。ありがとう」

「起きますか?もっと寝ててもいいですよ?」

「おきます。いい匂いしてて、お腹空いた。」

「わかりました。準備します」

ナイトテーブルの上のタライとタオルを片付ける。

身体を起こしたブレンダンは、自分がミリィの手を掴んでいたことに気づき慌てて離す。

「ご、ごめんなさい」

「いいのよ、気にしないで」

ミリィが手を振る。

照れて俯いてしまったブレンダンにも、皿とスープの入ったカップを持っていった。

「美味しい」

無心で食べる二人を眺めていたら、ミランダが戻ってきた。

「あ、ご苦労様です。ミランダ」

「遅くなりました。申し訳ありません」

「何かありましたか?」

「本館では謹慎中の男性職員が逃亡していると、現場は騒然としておりました。またミリィさんがいないので何か巻き込まれたのではないかと宿舎の担当者が本館で聴取を受けていました。」

「そうでしたか、大変でしたね、ありがとうございました。」

「ぁ、あ、の。リオ、さん」

ブレンダンが震える声で私を呼ぶ。表情が強張っていた。

「大丈夫ですよ。既に連行されているので、ブレンダンは安心してかまいません」

明るい口調で伝えると、ミランダが遅かったかと呟いた。

「ぇ。本当、に?」

信じられないと目を見開くブレンダンに

「はい。オスカー先輩が連行していきましたから。」

笑顔で告げる。

「ょかった」

心底安堵したようにブレンダンの緊張が解ける。

「さぁ、食べてください。ブレンダン、おかわりもありますよ?」

「な、まえ」

「あ。ごめんなさい、呼び捨てにしてしまって」

つい呼び捨てにしていた。距離感をまた誤ったかと焦ったが

「ううん、大丈夫。ありがとう。スープ食べたい」

ブレンダンは照れた様子でカップを私に見せる。目が合った。

「リオさん、私はオムレツ」

ブレンダンの言葉にミリィもおずおずと皿を差し出した。

二人に

「はい。すぐ用意します。」

笑顔で応える。


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