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不運な召喚の顛末  作者:
第二章
156/605

魔法省編再び7

それから数日後アランとオスカーが戻ってきた。

「ただいま戻りました」

オスカーが召喚課の扉を開ける。その場にいた全員が驚いた。部屋に入ってきた二人を囲む。

「アラン!おかえり」

クリスがアランに駆け寄り抱きつく。アランはそれを膝をつき受け止め抱きしめる。

「ただいま。クリス、少しみない間に大きくなったな」

「アランー」

「?ん、どうした?」

「なんでもないの」

涙声のクリスに

「そうか」

アランが微笑んだ。アランはクリスを抱っこして立ち上がると、レイカの前に立つ。

「ただいま」

「おかえり。色々あったっぽいけど、どうだった?」

レイカはアランを見上げて、そう言った。

「レイカには、敵わないな。……シノノメ領は本当に学問の都だった。自分の知識不足を実感した、大変だった」

静かに涙を流すアランをクリスが慰める。

「そう、ならもっと勉強しなきゃね。」

「ああ」

レイカがアランをクリスごと抱きしめた。

「無事帰ってきてよかった。お疲れ様」

三人を見守る私にオスカーが近づく。ミランダも含む範囲の防音魔力壁を張る。

「リオさん、ちょっとお願いがあるんだけどいいかな?」

「何でしょうか」

「面白い魔法使える?」

「ざっくりしてますね、なんで必要なんですか?」

「シノノメで実力不足を痛感してて少し落ち込んでるんだよね。これから頑張ればいいだけかもしれないけど、励ましたいんだ。」

「オスカー先輩が魔法使ったらいいじゃないですか」

「面白味のない人間で申し訳ない」

オスカーが困ったように笑う。

「ふぅ、私も自分が面白い人間だと思ったことはありませんよ。でもやります。励ますってことだけ考えます」

私が一歩踏み出すとオスカーが魔力壁を解除した。

「アラン。お疲れ様でした、これは私からの贈り物です」

闇属性特化魔法を使う。

キラキラ闇魔法をもっと発展させよう。イルミネーション、花火、プラネタリウム、プロジェクションマッピングとありとあらゆる夜と光のイメージを投影する。

部屋全体を夜の闇が包み、満天の星空を映し出す。

「凄い」

流れ星と北極星を中心にした北の星空の定点映像のように星が廻る。

そして、夏の夜空を彩る花火。これは大分魔力を消費した。

「花、火」

光の球にみえるように影を動かす。それを光の球が動いているように操り、アラン達の視線を釘付けにする。

最後は、光の球を天井に集め、真っ暗にする。そして、光の球を集めた箇所から、パラパラと闇が剥がれるように夜が終わる。

「すごーい!リオ凄いよ!」

クリスが歓声をあげる横でアランが茫然と天井を見上げている。レイカも驚きで何も言えなくなっている。

オスカーもジュリエットも驚愕の表情で私を見ている。ニコルだけが頭を押さえていた。

その様子を見て、やらかしたと気づいた。ミランダを振り返るのが怖い。

「リオ様。」

ミランダの硬い声に恐る恐る振り返る。

ミゲルのふりをしていた時のような鋭い目つきに背筋が伸びる。背中を嫌な汗が流れる。喉が渇く。ミランダの眉間に皺がよる。

「リオ様。奥様の未発表の術式を使用してはいけません」

!?

「も、申し訳ありません」

慌てて謝罪する。心の中でミレニア様に全力で土下座する。

「ミランダさんが奥様っていうと、ミレニア・サイス伯爵夫人ですか?ま、まさかこんな魔術を」

ジュリエットが呟く。その言葉にレイカも反応する。

「婚約者のお母様ってこと?」

「リオ、またやらかしたの?」

「そうみたいだな」

三人もなんともいえない微妙な表情で私を見る。背中を流れる汗は止まらない。

「皆様もこのことは内密に」

ミランダがジュリエットやアラン達をみて、そう言う。

みんなが頷くのを確認すると、私の手を引いて

「私はリオ様と話があるので、少し失礼します」

部屋を出る。その私達に、クリスとアランが声をかける。

「ミランダ!リオのこと、あんまり怒らないでね」

「リオさん。ありがとう」

「し、失礼します」

扉を閉めた。

管理棟一階、召喚課から離れた位置まで移動する。

「あれで誤魔化せたでしょうか。」

防音の魔力壁を張り、ミランダが疲れた声を出した。

あの言葉は誤魔化しだったのかと内心ほっとする。

そして

「ミランダ。助けてくれてありがとうございました。」

礼を口にする。ミランダは難しい顔をしたまま

「いいんです。まさか、あんな魔法を使うとは思いもしませんでした。後でどうやったかを教えて下さい。報告書も提出しなければ」

首を横に振る。

「はい。ミレニア様にも迷惑が」

「そこは大丈夫ですよ。安心して下さい。奥様はおそらく浮かれて研究しだすので旦那様が拗ねるくらいです」

「おぅ」

「しかし、誤魔化す為とは言え、リオ様の魔法を奥様の魔術と偽ってしまって申し訳ありませんでした」

ミランダが謝罪すると、慌ててそれを止める。

「謝らないで下さい。ミランダの言葉がなければジュリエットさんに怪しまれるところでした。」

「しかし、」

「ミランダ、感謝致します」

ミランダは魔法の理論を他者に洩らすことを良しとしないから私にそれをさせてしまったと思っている。

そうではないんだと、伝えたい。ミランダの手を握り、力説する。

「ミランダが誤魔化してくれなかったら、ジュリエットさんが私の発想の源や果ては出自や出身に疑問を覚えたかもしれません。それを何処かで話すかも。私からミレニア様に意識を逸らせたのはミランダの言葉があったからです。ありがとうございます。そしてごめんなさい。」

「リオ様」

「秘密がいっぱいの割に迂闊で申し訳ありません」

私の言葉にミランダは仕方ありませんと呟く。

「今回はオスカーのせいということにしましょうか」

「オスカー先輩のせい、ですね」

「ええ」

二人で笑いあった。

部屋に戻るとクリスとアランから心配された。レイカとジュリエットからは「何してるのよ」と更に叱られる。

「オスカー先輩からアランを励ましてと言われて、ミレニア様から教えてもらった魔術が頭に浮かんで、それで」

「リオさん!未発表の術式はとても貴重で重要なんですのよ。それを使用するなんて、ミランダさんが怒るのも当然です!」

やけにジュリエットが興奮している。

「う、反省しています」

「それにしてもサイス伯爵夫人って凄いのね。」

「ええ!ミレニア様は術式構築界の孤高の天才と名高い方で、魔法省魔術式局の誘いを何度も断ってるの。それなのに、新規術式を登録する際には友人のジャック様を通してされることから、お二人はそういう仲だと噂された時期もありましたわ」

ジュリエットの口から次々と出てくるミレニアの情報に驚きが隠せない。ミランダもそっと視線を逸らした。

「ジュリエットさんは、ミレニア様のことをよくご存知ですね」

私の言葉に我に返ったジュリエットが咳払いをし

「わたくしの趣味は術式構築ですもの。ミレニア様のことは、あ、」

「あ?」

「憧れていますの」

照れながら告白する。まさかの事態だった。誤魔化しは間違いだったのか正しかったのか。

わからなくなったが、

「まぁそうでしたか」

と流れに身を任せた。

ニコルは視線を合わせないし、オスカーは笑っていたけど後でこっそり謝られた。


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