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不運な召喚の顛末  作者:
第二章
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魔法省編再び6

お茶を飲んでレイカと話をしたジュリエットは大分落ち着いたようだ。

「いいじゃない、カルセドニー子爵子息との婚約。受ければいいのよ。」

婚約についての話になっている。

「ですが、」

「ジュリエットさん。良縁は掴める内に掴んでしまわないと逃げてしまいますよって私は知り合いにいわれました」

振り返りそう伝える。

「うんうん、そうよ。それでどんな人なの?会ったの?」

「マリア様の紹介で一度だけ。とても仕事熱心な方でした。」

「人柄は?」

「良さそうでした。」

ジュリエットの言葉をレイカが疑うような目で探る。

「ほ、本当ですわ。」

「どんな話をしたの?」

「わたくしの趣味の話とか。パイライトでどんな仕事をしていたかとか。ベルナー家はそれでいいのかとか、早まっていないか心配もされましたし」

「ふーん。ジュリエットは大分心を奪われているわね。まぁ相手も乗り気なら問題ないかしら、どう思う?ミランダさん」

「確認ですが。ロラン様とで間違いないですか?」

「ええ」

「ロラン様は仕事熱心ですが、余暇も仕事のことを考えている方です。以前クラリス様に同行したお茶会で面識がございますが冒険者ギルドの運営について尋ねられました。確かに次代のカルセドニー子爵を支える方と考えれば最良だと思います。」

「大丈夫その人?」

ミランダの説明にレイカが疑いの眼差しを向ける。

「自然に仕事に結びつける癖がついているだけで、無理をしていないのでしたら特に問題はないかと」

私も戦闘に活かせないか考える癖がありますし、とミランダがつけ加えると二人が笑った。

三人の会話が楽しそうだ。

「まぁ、ジュリエットが自分の為の選択をすれば、リオの暴走はないわけだし、それに嫌がらせに付き合ってやる義理もないわ」

「レイカさん。ありがとうございます。ちゃんと自分の為の選択を考えてみます」

ジュリエットがはにかんだ笑顔を向けるとレイカが頭をよしよしと撫でた。

「これは、」

頬を赤らめるもジュリエットはレイカの気のすむまで撫でられていた。

「リオさん、ありがとうございます。仕事に戻ります」

ジュリエットから声をかけられるまで地図を見ていた。

緩む頬を押さえているジュリエットに私も微笑む。

「リオ。準備するから手伝って」

「はい」

レイカは前もってリストを作っていたからと用紙を広げている。

「レイカさんは宿舎での生活になるんですか?」

「そうね。それはオスカーから聞いていたから知ってるし、アランと一緒に宿舎の部屋を見にいった。男女で階が分かれているけど鉢合わせることもありそうってこともわかってる。でもアランが宿舎の人達と交流があってよかったと思ってる。私だけだと大変だった。」

アランと宿舎を見に行った際に、アランの彼女として認識されてしまったらしい。それ以来宿舎に行くと「アランのとこの」と言われるようになった。

「話す機会が増えたのは助かったし、好意的で驚いてる。アランって凄いのねって感心してるわ」

レイカは話をしながら、白紙に私物の内訳を書き込んでいく。殆ど荷物はないようなものだが、生活するとそれなりに多くなってくる。

書き込んだものの横に番号をふる。

「この番号は、なんですか?」

「ん、これは運ぶ順番。普段使わないものから順に運ぶの。あとは大きいものね。」

さっさと書き込むと、別の白紙を用意する。

「手慣れていますね」

「まぁ、引っ越し経験があるからかな。ある程度はね。あ、リオは図面引ける?」

「奥の部屋のってことですよね」

「なんとなくわかればいいから。横で宜しく」

レイカから白紙と定規を受け取る。裁縫の型紙をつくる要領でさっさと線を引く。

「ミランダさんは、男兄弟いる?」

「はい。兄が一人」

「この日用品のリストに男性が必要な物が足りてなければ、記入してもらえる?」

「はい。かしこまりました」

「レイカさん。どうぞ」

「はやっ、ありがとう。じゃあこれをもう一枚お願い。今のベッドの位置も記入して。」

「わかりました」

再び定規を手にする。

「レイカさん。加護を持たない方の場合のリストも別で作成予定ですか?」

「え、それは、ごめんなさい。抜けてたわ。何が必要になるかしら」

ミランダの言葉にレイカは白紙を取り出しながらペンを握る。

「生活必需品は殆ど全てです。ですが、灯りと水の確保がしやすいようにランタンや蝋燭、マッチ、バケツ、浴槽に水を溜めるなど日常的に支援できる体制を作ったほうがいいと思います」

「私たちが日常で使ってるもの全て使えないってことか。お手洗いもか、うーん。これは、後で落ち着いて考えてみる。ありがとう、ミランダさん。よく気づいたわね」

「いえ。師匠が加護も魔力もない方でしたので、すぐ思い至っただけです」

「へぇ。後で、また話しきかせて」

「はい」

「レイカさん。終わりました」

定規で線を引く作業に絵心は関係ない。

変な出来心でつけ加えなければ絵が下手だとはバレない。

私が書いた図面をじっと見つめたレイカが

「リオ。あんた絵苦手でしょ」

そう言い切る。

バレた。なんで?!

「な、なんでわかったんですか!」

「かまかけただけよ。定規できっちり描けてるから別に問題ないけど。」

私の書いた図面を見ながらレイカが別の紙に、間取り案を描いていく。

「わざわざ言わなくてもよかったのでは?」

「ここは言っていくとこでしょ。あ、そうだ。どのくらい下手か気になるからこれに描いてみて」

白紙を前に置かれるも断固として拒否する。

「絶対嫌です」

「そんなに?まぁ、いいわ。それより、」

たいして興味もなかったみたいで新たな間取り案を考える。

完全に揶揄われている。

「このままでは、問題ありますか?」

「問題はないの。ただ本当にこの位置がいいのかは考えてみたいし。結果この位置が一番だったとしても構わないわ。」

図面をみながら、動線を書き込んだりして色々考える。

レイカは家具の配置を考えたりするのも好きなんだそうだ。

「レイカさん。リストに追加しています。」

「ありがとう」

ミランダから受け取ったリストに目を通していく。その姿はとても活き活きしている。

「うん。これで案作ってみるわ。ありがとう、助かった」

あっという間に私たちの出番は終了してしまった。

「殆どなにもしてません」

「図面引けるだけで十分よ」

「さっき配置案考えてましたよね」

「自分で一から書くのは苦手なの。お手本がないと駄目なのよ」

「意外です。でも、助けになれて良かった」

「取り敢えず、リオはこっちの女性用の準備案を読んでて。同性はわかるからリストと同時に移動準備案も作れたのよね。異性は難しいわ」

レイカは男性用準備案に取り掛かる。女性用はすでに出来上がっていたことに驚きを隠せない。

「レイカさん。凄いです。」

「後で何か奢ってくれればいいから」

「街でケーキ買ってきます」

「甘くないのがいいわ」

「わかりました。」

リストを読む。

準備手順、日用品の一覧とそれが必要な理由も注釈がついている。

私がメモを取りながら確認していると、奥の部屋から二人が出てきた。

「レイカ、お部屋のお片付けできた」

クリスがレイカに報告すると、

「あら、本当かしら?私のチェックは厳しいわよ?」

と楽しそうに笑う。


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