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不運な召喚の顛末  作者:
第二章
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魔法省編再び3

依頼を完了して、窓口で報酬を受け取る。そして、昇級試験の受付をした。

「試験内容は次回の依頼受注時にお伝えします」

自分のタイミングで受けられるようだった。

「わかりました。ありがとうございます」

冒険者ギルドを出て屋台で遅めの昼ご飯を買い、隣の広場で食べる。

「昇級試験かぁ、いつ受けようかな。」

「予定を組んでみましょう」

ミランダはそういうと腰に巻いた鞄から一ヶ月の予定表を取り出した。

「いつでも持ち歩いているんですか、それ」

この予定表は私が予定を立てる時に使っている表で、ミランダと共有している。私の練習の為の表だ。

何かをしたい、しようと思った時に開き、書き込んでいく。

仕事は全部以前で書き入れているから、空いている日を確認する。事前準備もしたいから、次の次の休みに試験と書き込む。

「この日にした理由をうかがっても?」

「はい。この前の休みで準備を整えてから臨みたいなぁと思ったのでこの日にしました。」

「なるほど。わかりました。では、この日で」

些細な予定も書き込んでいるので結構ごちゃっとしている予定表をみて、ふと幸せを噛み締める。

「あ、そうだ。親方に頼んでいた物を取りにいかないと」

以前頼んでいた写真立てが出来上がるころだ。

「では、食べ終えたら行きましょうか」

「はい」

昼食後はウォルター工房に向かう。

今日は他に二人組のお客さんがいていつもより賑わっていた。見習いのカウツが私達に気づいて、奥にいる親方に声をかける。

他のお客さん達は冒険者らしく棚の前で道具を見比べていた。私はカウツの作った道具とナイフを使っているから、内心彼等の評価が気になるところだ。

「親方の新作はないのか。」

「あぁ、残念だったな。でも、こっちのナイフも別に悪くないだろ?」

「そうなんだけどよ、親方の新作を期待してきちゃうとさぁ」

「ふん、お前まだまだだなぁ。親方は殆ど引退してるから新作なんてのはまずないと思っていた方がいい。面白い依頼しか受けないからな」

「そうなのか」

「ああ。だから、親方の育てている職人をみて今親方がやりたいことの方向性をさぐる。このナイフなら握りの安定感が他の新人に比べると段違いだろ?ってことは、今、握り部分の改良みたいな依頼をすれば受けてくれるかもしれないってわけ」

二人組の会話を聞いていたミランダが、

「まぁ、大体あってますよ。中々の常連ですね」

小声で教えてくれた。

奥から親方が出てきた。棚前で物色していた冒険者も振り返る。そんな視線は気にせずに親方は私達をみて驚く。

「お、お嬢ちゃんとミランダ嬢?!」

「親方もお元気そうで。」

「なんで、ミランダ嬢とお嬢ちゃんが一緒に。ミラ君は」

「あぁ。ミラから聞いてませんか?リオ様付きの侍女になりました」

「はぁ?」

「そんなことはどうでもいいので、」

「よくないと思うよ!?ほんと君たち他人の話を聞かないね」

見られている中、口にしづらいが、

「親方。依頼の品は出来ていますか?」

ここまできて受け取らない訳にはいかない。

早くブロマイドを入れて毎晩拝みたいのだ。

「お、勿論だ。中々面白かった。ワイヤーよりは上手くいったな。あ、ワイヤーの改良型も使ってくれないか?感想がほしい」

「ありがとうございます。」

親方がカウンターに写真立てを置く。

アコーディオン型の写真立てだ。折りたたんだり、広げたりして好きな写真を見ることができる。

手にとり、広げ、折りたたんで実際に立つのかも確認する。

「表紙も良い感じです。これ、お代です。」

サイス領の紋様を入れてもらった。

「リオ様。これは」

「額縁のようなものです。」

ミランダにはブロマイドのことは言ってない。胡散臭そうな目で浮かれた私を見る。

「え、あの子の依頼受けたのか?!親方が?」

「どんな依頼だよ。額縁って聞こえたけど」

こそこそ話す冒険者の会話は私の耳には届かなかった。

親方がカウンターに出したもう一つの品、ワイヤーを私は手に取りじっくり見る。

「結構薄くできましたね。これなら当たっても痛くないかもです。」

「そうなんだよ。あ、ここ。ちょっと丸みつけてるから、痛くないと思う」

「流石親方です」

ワイヤーのお代も払い、品物を持ち工房を後にする。

その後、工房で冒険者の二人が親方に依頼を断られたことを私達は知らない。

「リオ様。浮かれているところをみると、その品物はグラッド様関係だと察しましたが、何に使用するのでしょうか」

工房から出てしばらく何も聞かれないから流してくれたのかと思っていたがそうではなかった。

「説明は先程した、額縁のような物でして。」

「はい、何の額縁になるのかと」

「う。あの、婚約パーティーのあと、母さん達と会ったじゃないですか」

「はい」

「その時に千加のお姉さんの千紗さんが、私達に向けてた肖像画を量産する魔道具みたいなものがあったの覚えていますか?」

「はい」

「それで作った肖像画と似たような物を千加が作って送ってくれました。それをこの額縁にいれて、部屋に飾りたくて。」

「それを私が確認しても構いませんか?」

「え、あ、うん」

小さく頷く。

恥ずかしいけど、駄目ではない。照れるだけだ。

寮に戻る。

部屋で写真立てを広げテーブルに置く。

そして、文箱からグラッドブロマイドを取り出した。

「これです」

ミランダに差し出す。ミランダはブロマイドを見て言葉を失った。

「これが、」

「はい。恥ずかしくて言えませんでした。」

「毎晩にやにやしているリオ様が浮かびます」

なんてことだ、バレている。

ミランダがブロマイドを返す。それを写真立てに入れていく。ぴったり入る。

「こうして、好きな面にして、」

開閉して見える面を変える。

「なるほど」

「これで部屋に戻ったらグラッドにただいまが言えます」

気持ちが高揚して饒舌な私をみつめるミランダの表情が形容し難いものだった。

「楽しそうで何よりです」

ミランダが絞り出したのは、それだけだった。

「なんですか、その顔。いいじゃないですか。」

「失礼致しました。」

「休みの申請も済んでますし、手紙のやり取りもしてますけど、会いたいなぁって思います。やりたいことがあって魔法省で働くって決めましたけど、やっぱり寂しいものは寂しいです」

「それでいいと思いますよ、リオ様」



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