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不運な召喚の顛末  作者:
第二章
150/605

魔法省編再び

千加から届いた報告書を読んで言葉を失った。

何から突っ込んだらいいのか

ソフィアから下着のデザイン画が完成したので作製に入っている。ユル様が自身の力の再分配をしてパワーアップしていること。ここまではわかる。

わからないのは、

『ミゲルと付き合っています』

の一文だ。なんで?どうしてそうなったのかが書いていない。報告はちゃんとしなさいと手紙を書かないといけない。

ふぅと一息つく。

どういう流れでそうなった?攻撃されたって言ってたのに、わからないものだなぁ。オーラがめちゃくちゃ良かったとか?

んーわからん。ノヴァが好みじゃなかったっけ?

似てるとこは、スレンダーボディか?

「まだ半分で疲れちゃったよ」

報告書はまだ半分も残っている。何が書いてあるのかドキドキする。

紅茶を飲みつつ、手に取る。

結果、意味不明なのは『ミゲルと付き合っています』の一文だけだった。

個人用の手紙に詳細が書かれていた。より衝撃的だった。

まさか、ユル様依頼の護衛をきっかけに紆余曲折あり好きになったと。細かな部分は割愛されていたけど、これは言えない類の内容なんだろう。

ミゲルは風のような男で一つの所に居着けないから最終的にサイスに戻ってきたらOKってことで先ずは試してみるそうだ。各地にいる女性にミゲルの子供がいたらその子供は引き取ることに決めたと書かれている。

「凄いな千加。」

手紙を捲り、また目が点になった。

『グラッド様のブロマイドを作りました。どうぞお納め下さい』

「ごめん、理解ができない」

手紙には、春の宴の時のグラッドがイケメンだったから理央にみせたかったと書いてある。うん、その動機はわかる。

魔法を使おうと考えた。うん、わかる。

カメラ好きの千紗に通信して、カメラの仕組みを説明してもらいユル様の許可を得て狂信の特殊能力で作成。

なんで、ユル様の許可を得られたのか。意味がわからない。

「駄目だ、もう考えるのはよそう。うん、ユル様だもの」

と自分に言い聞かせ、再び手紙を読む。

最後につい見てしまう女性の好きな部位が書かれていた。

「千加。まじでなにしてるの?」

ミゲルは顔と胸。想像に難くない。

セシルは足。足……ミランダに見せるのはやめておこう。

ハロルドはうなじ。ヒューゴのうなじに噛みつきたくなると注釈がついていた。うん。

グラッドは腰。腰?確かに腰抱かれたこと結構あるけど、……腰。

副料理長、ラビ、料理長と続く。

「つか、よく答えてくれたな。グラッドは、周りがバラしたでしょ」

封筒の中に小さい封筒が入っていたのは、ブロマイドってことか。小さい封筒を開けた。

「眩しい。やばい。目が潰れそう」

五枚入っていた。

ぼんやりしてるグラッド、研修中のグラッド、ひんやり笑顔のグラッド、はにかんでるグラッド、微笑んでいるグラッド。

この小さい封筒からもメモがでてきた。

ぼんやり、ひんやり笑顔はセシルの、研修中はヒューゴの、はにかみ、微笑みは春の宴の時の千加の記憶を写し取ったものだそう。

「にやにやが止まらない。」

頬が緩む。どうしよう。とても嬉しい。

「写真立て作ってもらおう」

寸法を測ってメモしておく。グラッドブロマイドは文箱に納める。

寝る前にもう一度みようと決め、手紙を片付ける。報告書を持ち、隣りのミランダの部屋に向かう。

「どうされましたか?」

ノックにすぐさま反応してドアが開く。いつも驚く速さだ。

「千加から報告書が届いたので共有しようかと思って。今大丈夫ですか?」

「はい。どうぞ中へ」

「ありがとうございます」

ミランダの部屋にはあまり入ったことがないから緊張する。

間取りは変わらないが、机の位置とか置いてあるものが違うのでなんだかつい気になってしまう。

ミランダと早速報告書の内容を共有する。

あの一文のところでは、大きく深呼吸して天井を仰いだ。

私が補足すると、今度は眉間を揉み始めた。

「千加が納得しているなら私は構わないけど、ミランダは複雑?」

「いえ。ミゲルの好きな相手なら構いません。チカが大丈夫か心配なだけです。本当に帰ってこない男なので」

「あはは多分、千加がミゲルさんに会いたくて仕方なくなったら会いに行くから大丈夫だよ。そういう行動力はあるから心配しないで」

「異世界にきてしまうくらいなので。まぁ、そうですね。」

どうやら納得したようだ。新しい環境や場所が苦手でストレスはあるけど決めたらやり遂げるのも彼女のいいところだ。

本人は多分わかってないけど。

その他の内容も確認する。

ミランダも冒険者観察の所感は納得だったようで、頷きながら読んでいた。

「笑顔で刺しにくる、攻撃的、ものぐさ、採取特化、魔獣肉屋その他諸々と個性的すぎやしませんか」

「まぁ、変人が多いのは否めませんが、どこも似たようなものですよ?」

「へ、そうなのですか。」

「リオ様はまだ冒険者との交流がないのでわからないと思いますが、多いです。リーベック、シノノメはより偏ってます」

魔獣被害が少ない故にギルドに寄せられる依頼も他とは違う内容が多いためだそう。

「その辺も追々、交流していきましょう」

「はい」

「明日は、騎士課と兼務の方を紹介するとニコルが言っていましたが、リオ様も面識は」

「ありません。」

明日兼務の子を紹介するねぇと帰り際に突然言われた。

「紹介を忘れていたんじゃ」

呟いたミランダの言葉を否定できなかった。


翌日。

「おはようございます。自分はセドリック・ブラウンです。宜しくお願いします!」

元気に挨拶する少女、もとい女性は騎士課の制服が恐ろしく似合わない可憐な容姿をしていた。

でも名前が男性名だ。

「セドリックは男として育てられるはずだったが、そのあとすぐに弟が産まれたからややこしい名前になっている。とくに複雑なお家事情もない、普通の騎士だ」

ニコルが微妙に嫌そうな顔で説明する。外面を完全に捨て去っている。

苦手なのだろうか。

「リオ様、ジュリエット様!宜しくお願いします!」

声が大きい。

「セドリック先輩。同僚なのですから、」

「いえ!自分は騎士課の人間です。さらに言えば下っ端も下っ端なので申し訳ございませんが、さん付けも畏れ多いです。特にリオ様のことは尊敬しておりますから!」

「尊敬、な、なんででしょうか」

見ず知らずの人から尊敬されるようなことをしただろうか。

「何故!そんなの魔獣騒動の時の活躍に決まっています!素晴らしいことです!あとユニシアをボコボコにしたのも良いと思います!」

「ボコボコにはしてません」

「セドリックはちょっと黙って。リオさん、ジュリエットさん、ミランダさんはセドリックの顔と名前を覚えておくだけでいいから。発言は記憶から消して構わない」

ニコルがなげやりな態度を崩さず、セドリックを召喚課から追い出す。

「ニコル!自分はもっとリオ様と交流を」

「五月蝿い、黙れ。さっさと戻れ」

ドアの向こうで騒ぐ二人に唖然とする。

「なんなんですの、あの方」

「なかなか言葉に困る方ですね」

「個性的な方です」

「セドリックは情緒がないのよ。」

レイカもうんざりとした表情で、ドアの向こうを見つめる。

「セドリックは苦手ぇ」

クリスも首を横にふる。

今日のクリスはお洒落な格好をしている。

所作作法の授業がある。貴族の子供らしい格好だそうで、慣れるための訓練だが結構苦戦している。たしかに動作関係は難しい。

ジュリエットが今まで教えてきたけど、今日は交代することになった。

ジュリエットから引き継ぎをして、クリスに向かう。

私の勤務中、ミランダは私が見える位置内でレイカやニコルの手伝いをしている。資料室では、召喚関係の資料を読んでいる。

「クリス、おはようございます」

男性用の挨拶の礼をする。

「リオ、おはようございます」

それを真似る。

「ありがとうございます」

「ありがとうございます」

「ごめんなさい」

「ごめんなさい」

と礼の種類を練習する。ここは大丈夫だ。

貴族の子息が学ぶことは結構ある。

マナーや所作作法、乗馬や剣術、ダンスにエスコートの仕方などだ。

咄嗟の行動が庶民の私もこの機会に復習しないといけない。


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