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不運な召喚の顛末  作者:
第一章
148/605

エピローグ

王都に到着した。

馬車はそのまま魔法省へ向かい、入っていく。

寮の前で止まり、荷物を持って降りた。馬車は一度貴族屋敷で休み、明日サイス領へ戻ることになっている。

「お疲れ様、リオさん。ミランダさん。」

ニコルが白衣姿で立っている。

「ニコル先輩。お疲れ様です。戻られたのですね。これから宜しくお願いします」

「早速明日から復帰してもらうから。荷物、運ぶの手伝うよ」

荷物を持って寮内を移動する。私の不在時の話を掻い摘んで説明してくれた。

「オスカー先輩とアランはシノノメに研修旅行に出発した。クリスは僕の親戚の子どもで僕が養子縁組するために連れてきたってことで話を通した。」

クリスがニコルの養子になる。その報告に動揺が隠せない。

「オスカー先輩と上手くいったってことですか?」

つい口走ってしまう。

ニコルは嫌な顔をして、咳払いで誤魔化す。上手くいってないとは言われなかった。

「アラン達もクリス本人も了承済みだよ。利益も危険も説明してある。」

「そうでしたか。」

更に踏み込むことはせず言葉を飲み込む。

「属性が元に戻ったことは、増えたと説明することにした。属性を教えることでおこりうる危険は養子縁組することで無くなるからね。それに神子様はもう神殿にはいない。行方不明だそうだ」

元狂信の神子が行方不明。危険はないのだろうか。

私の懸念をもっともな意見だと頷く。

「警戒はするけど、ひとまずは大丈夫だろうと局長も考えている。」

「今回の魔障はどうなりましたか」

「まだ続いているけど、地下での魔障だから特に問題ないみたいだ。そろそろ終わるとの予想もある。」

「小規模魔障だったってことですか」

「そういうこと。はい、到着。ミランダさんの部屋は以前と一緒、これ鍵。」

寮の部屋に荷物を下ろすと、ニコルはまた明日と戻っていった。

部屋に入り荷物を解く。荷物は少ないからあっという間に解き終えた。

窓を開けて空気の入れ替えをする。窓辺でぼんやり風にあたっていると、隣の部屋からミランダの声がする。窓から顔を出し、隣をみると同じように顔をだしたミランダと目が合う。

「どうしたんですか?」

「いえ。窓の外を点検していたら、リオ様の部屋の窓が開いたので」

「特に何もないですよ。荷解きをおえましたので食堂に行きますか?」

馬車の中で持ち込んだ軽食を食べたけど、さっきからお腹が鳴っている。

「わかりました。」

窓を閉め、制服のローブを着て食堂へ向かう。

夕食には早めの時間だったけど食堂は賑やかだ。

「ミランダは、やっぱり辛い料理が好きなんじゃないですか」

向かい合うように座り、ミランダの選んだ料理を確認する。

「そうでしょうか?」

鳥の香辛料焼き、これは結構辛かった。

ジュリエットが頼んだことがあって辛くて食べられないと料理を交替したことがあった。確かに辛かった。私もギリギリだった。

平気な顔で食事をするミランダの食事スピードが、同居していた時よりも速い気がする。

「ミランダの好みが知れて嬉しいです。」

「リオ様は好き嫌いがありませんから素晴らしいと思います」

「確かに美味しいものはなんでも好きですから。」

ミランダと談笑していたら、後ろから声をかけられた。

振り返るとジュリエットがトレイを持って立っていた。

「戻ってらしたの?」

「ジュリエットさん、お久しぶりです。はい、今日到着しました。」

ジュリエットの後ろから見知った女性が顔を覗かせた。

「ジュリエット様、どなた?」

マリア・カルセドニー子爵令嬢。

私とミランダは立ち上がる。

彼女も魔法省のローブを身につけていた。

「マリア様、こちらはリオさん。わたくしの同僚です」

マリアは私とミランダを交互に見て、

「あら?貴女はクラリス様の侍女ではなくて?」

ミランダに視線を止める。

「はい。お久しぶりです。マリア様。現在はグラッド様の婚約者であらせられますリオ様の護衛として同行しております」

「お初にお目にかかります。リオ・ヒグチでございます。」

初めましての挨拶をする。

心臓が飛び出しそうなほど緊張する。落ち着け落ち着けと唱え、笑みをみせる。

クラリスに心酔するマリアに私はどうみえるのか。

マリアは眉を顰め私をみつめる。

疑ってる?

「貴女がグラッド様の婚約者。……よくやったわ!」

「へ?」

何が?

マリアは滔々とクラリスとグラッドが婚約してしまうのではないかとはらはらしていたと話始め、どう考えてもクラリスとグラッドでは釣り合いませんでしょ?とグラッドを落とす物言いのクラリス語りを始めた。

ちょっとイラッとする。何だそれ。

私の様子に気づいたジュリエットとミランダが遮る。

「マリア様、食事に参りましょう?お邪魔してしまいましたね、ミランダさんもまた明日」

「リオ様、落ち着きましょう。ほらまだ残ってますから、食べましょう」

「あら?そうでしたね、ご機嫌よう」

マリアを私から離すようにジュリエットが引っ張っていく。

「マリア様、その発言はカルセドニー子爵令嬢としてのお言葉ですか?」

その背中に声をかけた。ジュリエットがぎょっとしたような表情をみせるが関係ない。

「なんですの?」

「ですから、今のグラッド様を貶めるような発言はカルセドニー子爵令嬢としてのお言葉ですか?と尋ねているのです」

にっこりと笑顔でマリアにゆっくり近づく。

「わたくしはグラッド様の婚約者です。そのような言葉は聞き流せません。カルセドニー子爵令嬢としての言葉ですか?」

言外に責任問題を匂わせる。どう考えても間違っている。

マリアが息を呑んだのがわかった。

「申し訳ありません。わたくしが間違っておりました。」

マリアが謝罪の礼をする。

「わかっていただけたのならいいのです」

私は席に戻り、何事もなかったように食事を再開した。

寮に戻りながら、

「リオ様。先程は申し訳ありませんでした」

ミランダが謝罪する。

「私を止めようとしたことですか?」

「はい。」

防音の魔力壁を築く。

「その気持ちもわからなくはないのです。事を荒立てて何かに気づかれても困ります。ですが、あれは駄目です」

「はい。気をつけます」

「それにしてもマリア様は荒れていましたね。」

「どういうことでしょう」

「いつもの気遣いがありませんでした。彼女はクラリス様に心酔している面が目立ちますけど、本来とても気遣いの出来る方です。それなのにあの発言は違和感しかありません。クラリス様とのお喋りでしか通用しない会話でした」

「クラリス様が留学されたのがお辛いんでしょうか」

「そうかもしれませんね」

クラリスを心酔する彼女はクラリスがいない今の状況をどう思っているのか。考えると憂鬱になる。

「想定外でしたがマリア様にリオ様は別人に映っているということがわかりました」

思考を切り替えるようなミランダの言葉に

「色々変わっていると言うことでしょうか」

私は手をじっとみつめる。

私は入れ替わり当初クラリスとの体の違いに戸惑っていた。でもいつのまにか慣れていた。

爪を見る。

クラリスの爪だったのに、もう違和感はなく自分の爪だと思う。形がちょっとだけ変化している。

髪は黒く、癖はない。千加曰く目つきと胸は理央のものだという。

声も意識しなければクラリスとは違ってきこえる。

召喚されて約半年。私はもうこの世界の一部なのだろうか。

「私は」

この体はもうクラリスではないのか。でも本当に私のものなんだろうか。

「リオ様。また難しいことを考えていますか?」

「ミランダ?」

ミランダは私の手を取り握る。

「私は貴女で良かったと思っています。」

「ミランダ」

ミランダを見上げた。水色の瞳と目が合う。

「私は成り行きで侍女になり、先の展望はなくミレニア様の役に立ちたいだけだと以前伝えました。」

ミランダの言葉に黙って頷く。

「ですが、今は貴女がグラッド様と歩く道を守りたいと思います。」

ミランダがカッコ良すぎる。その言葉に嬉しくて泣きそうになる。泣かないように我慢していると、

「リオ様。この状況をグラッド様に知られたら抹殺されそうなので手紙には書かないで下さい」

やけに真剣な口調でそう言われた。

「ふふ、なんですかそれ」

笑いながら、ポロリと涙が落ちた。

「セシルさんにバレたら拗ねられそうなので黙っておきます」

「そうしていただけると助かります。拗ねると面倒なので」

ミランダのセシルの扱いが酷かった。


寮の部屋に戻り、早速机に向かう。

便箋を取り出し、グラッド宛の手紙を書く。魔法省に着いたばかりなのにもう早くもホームシック気味だ。

ミランダの要望通りミランダのカッコイイ所は割愛して手紙を書く。なんでもない会話のような手紙。たった一日なのに話したいことがたくさんある。屋敷にいた時は夕食時に毎日会ってその日にあったことの話を聞いていたから、寂しい。

「メールみたいな魔法作れないかな」

手紙を書き終え、別の用紙に色々書き出す。


翌日。

久しぶりに召喚課へ出勤する。

緊張で心臓がうるさい。図太い神経のおかげで眠れるけど起きてからの緊張が激しい。ここにも作用してほしい。

「リオ様。落ち着いて下さい。」

「だ、大丈夫です」

「お土産はよいものを選ばれたと思いますよ?」

「そういうことではなくて……よし」

深呼吸をして息を整える。召喚課のドアノブに手をかけた。

「おはようございます。」

ドアを開け、部屋に入る。

「おはよう!リオ!」

「おはよう」

クリスとレイカが変わらない笑顔で迎えてくれる。

「今日からまた、宜しくお願いします」

挨拶の礼をした。



取り敢えず、エピローグ。

「魔法省編再び」に続きます。

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