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不運な召喚の顛末  作者:
第一章
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距離

ノヴァを一日休みにしてほしいと千加はミランダに話をすると、私がまとめた報告書を持って執務室へ向かった。

「ミランダも、気に病まないで下さい」

「何も言ってませんよ」

「ならいいです」

今日グラッドと会うのはお茶会室で、だ。

そのあとに王都へ出発前にフレッド達と挨拶をして出発する。ミランダはイザベラに荷物を任せ、最終的な忘れ物がないか確認をしていた。

昨日でクリスからもらって大活躍中のペン立ても鞄に入れたし、と私も自分の荷物の中身を頭の中でチェックする。

それからお茶会室へ向かう。

「グラッド、お待たせしました。」

先に着いていたグラッドに声をかける。

「リオ。昨日は本当にすみませんでした」

「?あ、眠っちゃったことですか?寝顔を堪能できたので気にしないでください」

グラッドが頬を赤らめる。

「養父上の真似はしなくていいです」

あ、たしかに同じ発言だ。

「リオ様。色々漏れてます」

「失礼致しました。」

最近グラッドを赤面させてばかりだと気づいた。

「そういえば今日もセシルさんはお休みですか?」

席につきながら、グラッドに尋ねる。侍従は昨夜の人だった。

「はい。胃痛と耳鳴りがするようなので休ませています」

「耳鳴りも、それは辛いですね。ゆっくり休んで下さいとお伝え下さい」

胃痛と耳鳴りは経験がある。中々辛い。

「ありがとうございます。リオ。」

防音の魔力壁を張り、グラッドにミゲルと千加の話をする。

「そんなことが」

「一応お知らせしておきます。フレッド様には報告書を提出しています。」

私もグラッドも、ユル様曰く鈍感の極みらしいのでミゲルやミランダ、侍従長の反応が正直なところわからない。

「知らせてくれてありがとうございます」

「千加には何か対策がとれないかユル様と話し合うよう伝えるつもりです」

「わかりました。何か協力できることがあれば協力します。」

「ありがとうございます。」

防音壁を解除する。

お茶はグラッドの好きなフレーバーのお茶だ。美味しい。

「部屋に招くと帰したくなくなりそうだったのでお茶会室でと返答しましたが、この距離ですら遠く感じてしまいます」

「では隣に座ります」

反射的に返事をしてしまった私に

「リオ様」

ミランダが怖い笑顔で名前を呼ぶ。

お茶会室に向かう前、グラッドと適切な距離を保つよう注意を受けていたのを思い出す。

グラッドの可愛さにすっかり忘れていたのだが。

「失礼致しました」

私達のやり取りにグラッドが思わず笑う。

その後は和やかにお茶のフレーバーの話をしたり、服飾係の部屋で仕事体験したことを話したりして過ごした。

グラッドの服飾係はジークというらしい。凄く聞き覚えがあった。学園の有名人と同名だろうか、本人?

「ジークさんってまさか」

「ご存知でしたか?ジーク・ライ」

「え、でも彼はマウリッツの貴族ではありませんか?」

「貴族位を返上して、サイス領で仕立て屋を営んでいます」

意味がわからない。

「学園入学時に服飾係へ立候補がありました。が、他領の貴族では無理だと断ったら一年生終了時に貴族位を返上してサイス領へきました。」

あった、マウリッツの有名な服飾の天才少年が急に学園を退学したことが。

「……グラッドは私に何も言えないと思います」

人たらしにも程がある。

「そんなことはありませんよ?」

きょとんとした表情で首を傾げるグラッドに

「そんな可愛く首を傾げても誤魔化されませんよ」

誤魔化されかけている私が言うとバレましたかと他の手を考え始めた。

上目遣い、満面の笑みと繰り出され、これ以上は私の心臓がもたなそうなので誤魔化されることにした。

グラッドからミゲルを騎士団へ連れて行った時の話を聞く。

「私が騎士団長と研修監督官と挨拶をして、研修内容等についての質疑応答をしている短い間に新人、中堅、ベテランを蹴散らしてました。」

ミゲルさん、凄すぎる。

「流石に部隊長相手に手は抜かないようで久々に真剣なミゲルがみれました。面白かったです」

中には見所のある騎士もいると騎士団長にミゲルが話していて騎士団長はミゲルの来訪を喜んでいたそうだ。

「そのミゲルさんにグラッドは勝つのでしょう?むぅ、頑張って追いつきますから」

「追いつかなくていいです」

「更にその上がいるのですから、鍛えられるなら鍛えなくては!」

「更にその上、ジャック様ですか?」

「そうですね。流石に無理ですけど『鮮血の眠り姫』とか。戦局に組み込める位の戦力にはなりたいです」

「よく戦術の試験で出題されるお題に『眠り姫による国盗りをどう凌ぐか』というものがあります。今のサイス領において最善手は狂信の力で眠り姫を無効化するです。使える物は全て使うとこうなります」

「確かに。」

「条件で狂信を省くなら、次手は伯爵夫妻とミゲルを逃がします。恐らく制圧する順番はシノノメ、リーベックで一日ずつかかります。この時点でウパラ、マウリッツはコランダムにつきます。すると、ウパラとコランダムに挟まれているサイスは両側から侵攻を受けます。その間に王都を眠り姫が落とす。ジャック様がいれば三日は持ち堪えることができます。残りの時間をサイスにあてると考えた場合ハロルドと騎士団をどう配置するかと色々な可能性を模索するには面白い題材です」

「グラッド。フレッド様達を逃すのは何故ですか?」

「戦後サイスをまとめる方が必要というのと、もし、上手く眠り姫の活動限界まで持ち堪えた場合、ミゲルが戦局をひっくり返すことも可能なので。その場合冒険者の助力が得られる可能性が高い。そうなれば養父上は適任ですから」

「グラッドでは駄目なんですか?」

「私では足りません。それなら戦力として戦場に振った方がいい……すみません。驚かせてしまいましたか」

喋り過ぎましたと謝るグラッドに首を横に振る。

グラッドは自分のことも駒の一つだと、俯瞰でみているのだと驚いた。

「いえ。指揮官としての役割を担える資質というものを感じられて興味深かったです。」

「そう言っていただけると嬉しいです」

何故、制圧の順番がシノノメからなのかと問うと、残すと厄介になるからだそうだ。シノノメが残るとウパラ、マウリッツの離反が遅れるもしくはなくなる可能性がある。リーベックは物資供給を他領に行うだろうと踏んで余力のある序盤で潰したい。

「サイスから潰すって可能性は」

「あまりお勧めはしません。ウパラが離反してない状況だとウパラからの支援で長引く可能性もあります。時間の制限があるので短期決戦で決めるにはウパラ、マウリッツの離反を促す方法がとられると思います」

私達が盛り上がっている横でミランダ達は眉間に皺を寄せていた。

それには気づかなかった。

その後どう対抗していくかの話になった。

「侵攻を遅らせたいですよね。豪雨とかで足止めできませんか?」

自然現象を魔法で起こす。

「なるほど」

「侵攻ルートがわかれば先んじて罠とか仕込めそうじゃないですか。金網を敷いて雷を落とすとか」

「魔獣を引き寄せてぶつけるとか」

楽しく色々な案がでた。

婚約者同士お茶しながら話す内容ではないと流石にそれ以上はミランダから止められた。


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