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不運な召喚の顛末  作者:
第一章
145/605

お説教よりも

夕食後、グラッドの部屋に誘われた。

「お説教少なめでお願いします」

そう返すと苦笑された。グラッドの部屋に足を運ぶ。

今日はセシルではない別の侍従がついている。

「セシルさんは、お休みですか?」

「ミゲルが来たので胃が痛いようです。まぁミゲルがいる間は大体具合が悪そうなのですが」

「セシルさん……」

「ミランダと婚約してからはミゲルからの八つ当たりが増しました。」

お茶を持ってきた侍従が

「ミゲルさんはミランダさんを溺愛していますから」

と苦笑する。

結婚したらどうなるのか不安でしかないらしい。

普段グラッドは予定のない日はセシル以外の侍従をつけない。

部屋にいる時は何もしないから、侍従の時間を無駄にするからだとか。セシルは専属筆頭で情報官でもあるから、部屋にいても仕事がある。他の専属侍従は執務室付きにしたり他の仕事を命じているのだとか。

「ミゲルさんはグラッドのことも大好きだから、私も頑張らないと」

独り拳を握り、決意を新たにする。

「あまり無茶はやめてください。ミゲルに立ち向かうなんて危険なことはしないでもらえると助かります」

グラッドは私の肩に頭を乗せる。

侍従の青年はグラッドの行動に少し驚きつつも直ぐ控え室に下がった。

「はい。気をつけます」

グラッドに少し寄りかかり穏やかな時間を過ごす。

「ミゲルは貴女を気に入ったようでした。」

しばらくの沈黙の後、拗ねた声でグラッドが呟く。

「グラッドのお兄ちゃんに気に入られたようで何よりです」

「お兄ちゃんですか、そうでしょうか」

「ええ。ミゲルさんは私の兄貴と同類ですから、」

「カケルさんと同類」

ふふふと私の言葉がグラッドのツボにハマったようだ。笑いが止まらなくなった。

しばらく笑い続けていたグラッドが、甘えるように私の肩に頭をすりすりする。可愛いって思ったら、腰を抱かれた。

「要らぬ心配だったってことですか。はぁ」

「ミゲルさんはノヴァが好みらしいので私は範囲外だと思いますよ」

ミランダが言ってましたと言うとグラッドは笑い、そしてぽつりとこぼした。

「それは知りませんでした。」

「嫉妬も可愛いですよ」

「すみません。情けないです」

深いため息をつく。

「そこも愛しいです」

私の正直な気持ちを伝える。

「愛想を尽かされないように気をつけます」

声が小さ過ぎて聞こえなかった。

「?何か言いました?」

聞き返すと、なんでもないとグラッドが首を振る。

グラッドが珍しく甘えているので、無理に話さず沈黙を楽しんだ。しばらくするとすぅすぅと寝息が聞こえてきた。

こ、これは!グラッドが寝てる!!

寝入りばなに動くと起こしてしまうので、動かずじっとタイミングを待つ。

ニコルから伝授された寝た子を起こさずベッドへ運ぶ方法がある。クリス相手に練習を重ねた。冬の終わりにはニコルから免許皆伝をもらった技術。

魔力の形状変化を使い体を魔力で包む。次に寝姿のまま動かさず移動。ベッドに寝かせ、少しずつ魔力を散らしていく。

グラッド以外に視線を取られないように集中する。

「ん」

グラッドの声に、ビクッと肩が揺れる。注視するも、起きた様子はない。

成功、だ。

この時、服や靴には触らずそのままにするのがコツ。

あとはゆっくり天蓋のカーテンを閉め、下がる。

私の行動を息を呑んで見守っていた侍従の青年と頷き合い、部屋を出る。室内灯はそのままにしてもらった。すぐに消すと目を覚ます場合がある。もう少ししてから靴を脱がせて欲しいと依頼した。

部屋の外で待っていたニーナと一緒に部屋に戻る。

翌日。

朝から眉間に皺を寄せた千加が、私の前にくるなり土下座した。

「は?」

「この度は申し訳ありません」

「千加?意味がわかりません。ひとまず立って下さい。説明を求めます」

顔を上げた千加は泣きそうな顔をしている。涙を必死に堪える姿は初めてみた。いつも飄々としている彼女からは想像もつかない姿だ。

泣き出しそうな千加を席に座らせ、ミランダの淹れたお茶をすすめる。お茶を呑んで一息ついた千加に何があったのかを尋ねる。

「昨日の夜。ユル様と散歩をしていました。」

ぽつりぽつりと話す千加の顔色が話を進める度に悪くなっていく。

「ノヴァと副料理長が見えたので、挨拶しようと近づいたら、、死角にいて見えなかったけどもう一人男性がいて、その人が、」

一度言葉を切り、息を吸う。声が震えている。

「私を見るなり、大きく飛び退いていきなりナイフを投げてきた。私を、庇ってノヴァが、大怪我を、し、て」

泣きながら話す。

「千加、ノヴァは無事ですか?」

「うん。ユル様が許可した、から、ノヴァの怪我、が治るって魔法、を使った。う、うぇぇん」

私は立ち上がり、千加の側に寄ると抱きしめて慰める。

「千加。ノヴァのこと治してくれてありがとう。怖かったね。よしよし」

千加も私に抱きつき泣きじゃくる。

「うううぁぁぁ、ノヴァ、死ぬかと思った。血がいっぱい、でて、止まらなくて、回復、魔法、だれも使えなくて」

確か回復魔法は水と土を持っていると使える特殊魔法だったか。

千加の背中を落ち着かせるように撫でる。

この世界でこんな取り乱した千加を見るのは初めてだ。

ミランダも焦ったような戸惑ったような顔をしている。

「でも。千加が治してくれたんでしょ?ノヴァは大丈夫、だからほら泣かないの」

ハンカチを頬にあてる。涙を拭いてあげる。目が合うと千加は俯いた。

「ナイフを投げた相手は誰か、わかる?」

「ミゲルってノヴァが言ってた。」

「ミゲルが」

ミランダが絶句する。

「それで理由は、」

「ゆ、ユル様に反応して、反射的に、投げたって」

「そう。」

「殺さないと危険だって言ってた。私が、ユル様と散歩なんてしてたから」

ノヴァが死にかけた。

「千加。」

名前を呼んでも千加は顔をあげない。

「理央、ごめん。」

千加の頬を両手で掴み顔を上向かせる。目を合わせて、ゆっくりと話す。

「千加。いいですか?ノヴァは貴女のせいで怪我をしたかもしれないけど、貴女のおかげで助かりました。私はノヴァから苦情がでない限り貴女を罰することはありません。ユル様のことは考えてもしょうがないことです。誰がユル様に対して敏感か、そうでないかなんてわからないんです。」

千加の目が大きく見開く。

「ノヴァは貴女を責めましたか?」

「ううん、責めなかった」

「なら千加も自分を責めるのはやめて下さい。わかった?」

また涙が迫り上がってきて、零れた。

「うん」

再び抱き締めると千加は静かに泣き続けた。

しばらくして、涙が止まった千加にノヴァから貰った魔術札を使う。

落ち着きを取り戻した千加は、ミゲルと副料理長、ノヴァにユル様が異界の神であることがバレたと告げた。

「そっか。」

「ごめん。」

「吹聴するような方達ではありませんが、一応旦那様から釘をさしてもらいます。チカ。ミゲルが大変失礼致しました」

「?なんで、ミランダ先輩が謝るの?」

???

千加が首を傾げる。

「ミゲルは私の兄ですから」

「へ?似てないね、驚くわぁ」

???あんなにそっくりなのに???

「どちらかというと似過ぎて驚かれるのですが、」

ミランダも初めての感想だったのか驚いている。

「『オーラ』が全然違うから」

「おーら?」

「人が持ってる心の波動みたいなものかな。この世界では加護もその波動に影響してるみたいなんだけど」

ミランダは普段は風属性の影響が強いから穏やかな波動をしている。けどミゲルは警戒心の塊だと言う。

恐らく闇属性の影響が強い。ノヴァの怪我を治した後も変わらなかったから、普段も似たようなオーラだろうと。

千加の言葉にミランダは納得したように頷く。

「理央、ミランダ先輩。あの、私が泣いたのノヴァには内緒にしてて下さい」

「ふふふ、わかりました。ノヴァには内緒にしておきます」

「!!ちょっと、別の人にも言っちゃ駄目っすよ!」

やっといつもの千加に戻った。


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