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不運な召喚の顛末  作者:
第一章
144/605

午後のひと時

午後から荷物をまとめたり、ミランダが専属達に出した指示の内容の報告を受けたりして過ごす。

私が居ない間は、ミレニアの侍女の下につけることになっている。

「流石に一般侍女と同じ扱いはできません。ライラが休みに入るのでイザベラとニーナは奥様の下で預かってもらい、ノヴァは侍従長の下につきます。」

「二人との違いは、何でしょうか」

侍女は身の回りの世話、主人の生活圏の環境を整えるのが仕事。

侍従は主人の仕事環境の管理、調整を行うのが仕事。

サイス領では男性の領主一族には侍女はつかず、同性の侍従がその役割を担う。

女性の領主一族に侍従はつくが、同性異性は問わない。生活圏に夫や妻以外の異性を入れないことになっている。

「ノヴァにはミランダが担っていた役割を分けるのですね。確かに分担は大切ですから。わかりました」

「リオ様、ソフィアを連れて参りました」

ソフィアは緊張した面持ちで、席につく。ニーナに指示してあるものを持ってきてもらう。

テーブルに広げる。

「これは、下着?」

「そうです。これは私が作った下着です。この種の下着を領地内で広めようと思っています。こちらが現在の下着。年嵩の女性貴族にも受け入れられるように改良を試みて下さい。それがソフィアへの依頼です。」

ソフィアは下着を手にすると、既存の下着と比べ始めた。

「これはリオ様が着用されていた新しい形の下着ですね。もしかして、最初は上の部分だけだったのでしょうか。カップの下に布が縫い付けられていますね。男性受けでしょうか」

ぶつぶつと呟き、下着に夢中になるソフィアに、

「歳を重ねる事に体型の維持が難しくなると話されている方も多く見られました。一体型だとどうしても胸とお腹、どちらかに合わせて無理をしてしまうこともあると。具合が悪くなる人もいるのだとか。その点もなんとか解消できるなら受け入れられるのではないかと私は考えているのですが」

そう告げた。

ビスチェが基本的な下着だ。

ブラの部分はカップブラのようなカップではなくコルセットの延長で胸を覆っているようなビスチェが主流だ。

紐で締めつけ具合を調整する。胸の形が崩れてしまう。貴族の奥様方は各自仕立て屋に頼んで色々作らせているようだけど、そもそもの主流を変えたい。

やる気に満ちたソフィアが、お任せ下さいと快諾する。

ニーナが広げられた下着を片付ける。ソフィアに持たせるために袋にいれている。

「失礼致します。」

私服姿のイザベラとノヴァが部屋に入ってきた。今日は休みだったはずだけどどうしたのだろうか。

イザベラは包みを手にしている。何だろう?

「リオ様。チカから故郷では小さい肖像画の方が好まれると聞いたのでこちらを用意致しました」

包みから出てきたのは、

「私とグラッドの肖像画?これをイザベラが?」

写真立てのような大きさの額付きの肖像画だった。

婚約パーティーの時の格好だった。

「はい!」

「あ。ありがとうございます。嬉しいです。」

皆も覗き込み口々に感想を言い合う。

「綺麗に描けてますね」

「リオ様美しいです」

「額が出来上がるのに時間がかかってしまって焦りました」

「イザベラ、本当にありがとう。」

「喜んでいただけて嬉しいです。これは後一枚あって、それはグラッド様に渡す事にしました」

「ふふ、ありがとう。」

「イザベラだけずるいですよ。私もリオ様に渡そうと思って用意した物があるんです」

ソフィアが作業用のエプロンから出したのは大判手帳型の開く裁縫箱だ。中にはさまざまな裁縫道具が入っている。

「ありがとう、ソフィア」

「みんな考えることは一緒ですね。リオ様、私も渡していいでしょうか」

「え、ノヴァも?嬉しいです」

贈り物をされ慣れていない私は嬉しくて頬が緩みっぱなしだ。鞄から取り出されたのは、冒険者道具セットの中級者用だ。新人では手が出せない、あったら嬉しい道具セット。

「流石は元騎士。マルロー工房の道具セットとはやりますね」

イザベラが感心している。いい職人工房の道具セットなのだろう。

「リオ様よかったですね。はい、こちらもどうぞ」

ニーナがそっと私に小さな袋を握らせる。

紅茶の香りのする香り袋だった。

「リオ様の人気がすごいですね」

ミランダが楽しそうに笑う。

「では、私からはこちらを皆さんへ渡しましょう。」

そしておもむろにポケットから何かを取り出し全員に渡している。

「リオ様特製の専属バッチです」

??へ?

ミランダがみんなに渡していたのは、私が刺繍した布を使ったバッチだった。確かに刺繍したのは私だけど、そんな意図はなくてミランダが欲しいっていうからあげただけなのに。

ミランダを見ると唇に人差し指をあて、内緒にするように注意された。

みんな早速思い思いの場所につけている。

「リオ様、ありがとうございます」

嬉しそうな表情をみたら違うと言えなくなった。

「では、ニーナとソフィアは仕事に戻って下さい。イザベラとノヴァは休みのところありがとうございます。戻って構いません」

ミランダは指示を出すと、魔力壁を張り

「リオ様。勝手をして申し訳ありません」

謝罪の言葉を口にする。

「教えてくれてもいいじゃないですか」

「すみません。昨日思いついたものですから。それに出来上がるかも定かではなかったのでお伝えするのを躊躇いました」

「……ありがとうございます。ミランダ。私、贈り物をもらえるなんて思ってなくてお返しもしたことなかったから助かりました。」

でも、

「次からは何かあれば、教えて下さい。いいですね!」

「はい。申し訳ありません。内緒で事を運ぶことは致しません」

私の為にしてくれたことだけど、内緒にされたら私の為にならない。

ミランダは魔力壁を解除し、自分用もちゃっかり用意していたらしくエプロンにつける。

荷物もまとめ終え、夕食までゆったりした時間を過ごす。

「夕食後はグラッドのお説教が待っていると思うと、嬉しいやら憂鬱やらで複雑な気持ちです」

ひんやりした笑顔を思い出し、そう呟くと

「逃げないリオ様を心配しているんですよ。なんでもかんでも取り敢えず戦ってみる性格だったのは流石に私も予想外です。どこまで鍛える気ですかとか言ってたのが懐かしいです」

それを言われると何も言えない。自分でもまさかと思っているのだから。

こんな風に誰かと一緒にお茶したり、したいことをしたり、将来のことを考えたり、好きな人と一緒に歩けるようになるなんて考えたことがなかった。こんなに嬉しいことだったなんて知らなかった。

実感を積み重ねて、やっと本当なんだって信じられるようになった。一度の実感では何処か疑っている自分がいて。

あ、そうかもう不運体質じゃないんだと何度も何度も実感することで不運のない生活に慣れ始めた。

「グラッドのおかげです。」

「そうですね。」

私の呟きにミランダが相槌を打つ。


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