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不運な召喚の顛末  作者:
第一章
139/605

専属

要練習を言い渡され授業は終了した。

「では、失礼致します」

ミランダが退室し、千加と二人お泊まり会がスタートした。

といっても特別なことはなく、寝るだけなのだが。

枕を設置している千加に灯りを消すよと声をかける。

入り口にある魔道具に触れ、灯りをおとした。

ベッドに戻り、布団に潜り込む。

「ふぁああ、眠い。おやすみ理央」

「おやすみ千加」

「って何もないの?って突っ込むとこだよ!」

「おやすみ千加」

「え、ちょっと話しようよ。お泊まり会だよ、あははうふふな話しようよ」

「なんの話だよ、あははうふふって何?」

「え?恋バナとか?」

「じゃあ千加から、はいどうぞ」

「理央が冷たい」

「しゅーりょー。おやすみ」

「いいもん。私が慰める前にグラッド様といちゃいちゃして満たされててちょっとジェラシー。」

拗ねだした。

「慰めるってなんで?」

「なんか気持ちが凹んでた。ささくれだってたし、怖かったんだろうなって思って」

「あははうふふとか言わないでそういえばいいのに」

「だって、部屋にきたら普段通りに戻ってるし、逆に満たされてるからさぁ、」

「ありがとう千加」

「いや、別に」

「照れてる。」

「あのさ、」

「ん?」

そのまま黙ってしまった千加の言葉を待つ。

「ありがとう、生きててくれて」

「千加こそ。来てくれてありがとう」

「それはユル様が、望んでたから」

「それでもありがとう。千加意外と新しい環境とか初めての場所嫌いでしょ?ユル様のために色んなところに行くけど、負担が大きいみたいだし」

不運体質がなければ一緒に行ってあげたかった。でも不運体質がなければ知り合うこともなかったと思うと複雑だ。

「なんだバレてたのか。理央のそういうとこ好きだよ」

「無理しないでね。辛い時はちゃんと言って」

「その言葉そっくりそのまま返してやる。……今日は災難だったな」

「そうだね、不審者ランキング一位を記録しました」

「あぁ、三十枚ラブレター野郎を抜いたかぁ。」

「思い出させないで」

下校中いきなりラブレターを渡された。しかも三十枚。中身は所々卑猥な言葉の混ざる気持ち悪い代物だった。相手は見知らぬ男性で、千加が縁切りも含めて処分してくれた。

「不審者のレベルあげないでほしい。守り石つけててこれは、酷い。」

「確かに。オーラは前と違って全然飛び出してないのに。単純に不運関係ない変態との遭遇だったってことか。」

「不運関係ない変態って嫌な響きだな。世の中何があるかわかんないからな、気をつけよう。うん」

「そういえば侍女さんは決めたの?」

「決めたよ。明日ミランダに伝える予定。」

「へ?じゃあさっきまで決まってなかったの?」

「うん。」

「誰にしたの?」

「ノヴァ」

「あー、あの人か。綺麗な髪色のお姉さん。いいと思うよ。しかし理央はちゃんと嗅ぎ分けてるのが凄いわ」

「嗅ぎ分けてるって何?」

「ニーナはラビさんと、イザベラはアリーシャと、ミランダ先輩はセシルさんと、ノヴァは副料理長と付き合ってるし誰一人としてグラッド様がタイプな人がいないんだよね。」

私が知らない情報までぶっ込んできた。そ、そうか。そうなんだ。

「私が魔法省に戻った後も千加はサイス領にいるんだよね?」

「うん、そうだよ。ユル様がサイス領をうろうろしたいみたいだし」

「魔獣がでる可能性があるから気をつけてね。」

「ありがとう、その辺は冒険者登録して色々勉強してみる。魔力の使い方はミランダ先輩に教えてもらったから」

その後も少し話して眠りについた。

翌日ミランダにあと一人の専属侍女を決めたと伝える。

「かしこまりました。では私から話しておきます。午後から専属を集めて顔合わせを行いその後全員でリオ様に挨拶へ参ります。今日はニーナがつきます」

「宜しくお願いします。ミランダ、魔法省に戻るのはグラッドが研修に参加する前日にします。グラッドと会える時間があれば、調整お願いします」

結構予想外があってグラッドと過ごす時間が取れたが、普段なら予定が詰まっている時期だ。

クラリスの記憶でもそうだ。学園の終業と始業の短い間に予定が詰まっていた覚えがある。

ちゃんと正式な面会予約をいれてもらう。

「リオ様、これを。グラッド様の部屋にあった忘れ物です。」

「あ、ありがとうございます」

神様事情が書かれた紙をまとめていれた文箱を手渡される。

すっかり忘れていた。

「千加から神様事情の情報をもらったんですけど、どこまでが一般的な話題かわからなくて、ルルーに神様の話を聞いて判断しようかとまとめたのを、忘れてました。」

「そうですか。ルルーが浮かれていた理由がわかりました」

「浮かれていたのですか?」

昨夜の件を叱責した際に反省しているが何処となくそわそわしているのが気になったよう。

「リオ様が神殿や神様の話を快く受け入れてくれたことが嬉しかったのかもしれません。リオ様のことをしきりに気にしていましたから。ただ、少し不安要素がありまして、ニビ子爵の精霊姫発言に心を打たれたようでした。言動を監視致します」

「宜しくお願いします」

厄介事は避けたい。ミランダに任せる。

朝食の後、特に予定がなく刺繍を楽しんでいた。

でもふと思い出したことがある。

「ニーナ。」

「リオ様いかがされましたか?」

「あのこの後街にでることは可能かしら」

「明日ならば外出予定をいれておきますので、可能かと。何かございましたか?」

「召喚課のお土産をすっかり忘れてまして、」

「それは焦りますね」

「そうなんですよ」

「では、お土産を何にするのかを考えてはいかがですか?」

「そうですね。そうします、ありがとうニーナ」

昼食の時間までお土産をどうしようか、ニーナと相談しながら考える。

そして、専属が全員揃って挨拶にきた。

「リオ様。専属全員で挨拶に参りました。」

「これから宜しくお願い致します。」

ノヴァとソフィアは緊張しているようで表情が強張っている。みんなが次々挨拶するなか二人はどんどん顔色が悪くなってくる。

「ノヴァ、ソフィア、大丈夫ですか?顔色が悪いわ」

「は、はい。だ、だいじょうぶです」

全然大丈夫じゃない二人の挨拶も終わり、専属全員に私が声かけをする番だ。

「ミランダ。専属筆頭は色々と大変でしょうけど、皆を上手くまとめてください。宜しく頼みます」

「はい」

「千加。情報官としてわたくしに仕えてくれることをとても心強く思っております。慣れない異国の地ではありますが、活躍を期待しています」

「ありがたき幸せ」

「ニーナ。貴女の優しいお茶の味に癒されています。細やかな気遣いも嬉しく思っています。これからも宜しくお願いします」

「はい」

「イザベラ。貴女の街歩きの情報は中立性があってとても参考になりました。工房巡りをする際は案内をお願いしますね。わたくしの肖像画も描いていただけるのよね?楽しみにしているわ」

「はい、頑張ります」

「ノヴァ。そんなに緊張しないで。わたくしが自然体でいられる人を選んだの。」

「私が、?」

「ええ。ノヴァと話していると戦闘の感覚を思い出せるし、気配の操作もしてくれているでしょ?それがとても嬉しくて。これからも宜しくお願いします」

「は、はい!」

「ソフィア。ドレスを作って頂いてありがとうございます。急な依頼で大変だったと思いますが、どのドレスもとても素敵でした。これから裁縫の話も出来たら嬉しいわ。宜しくお願いします」

「こ、こちらこそ宜しくお願い致します」

その後はソフィアとノヴァと親交を深めるためお茶に招待する。千加も混じりお喋りに興じる。

やっぱりノヴァとソフィアは緊張気味だ。その様子をニーナとイザベラが心配そうに見守っている。

「ソフィアは普段はどんな仕事をしているの?」

「侍女服や料理人の服の修繕や、奥様の夜会服のお直しだったり、あ、奥様は新しい服を作るよりも元の服をお直しすることを希望されますので」

「お直しってセンスが問われるから結構難しいのよね」

「理央様は絵心がなくてあまり得意ではありませんでしたから、羨ましいのでは?」

「ちょっと千加。バラさないでくださいませ」

「ソフィア。こちらをご覧になって、リオ様の刺繍です。」

ニーナが私の刺繍を持ってきてみせる。本職にみせないでーと心の中で叫ぶが、

「リオ様、これ本当に趣味ですか?!」

ソフィアが食いついた。

「理央様は自分の腕を謙遜し過ぎなんですよ。本職並みですもん」

千加がそう言うとノヴァがソフィアが持っている刺繍を凝視して頷く。

「私は不器用なので憧れます」

「ノヴァさんも?私も。」

千加とノヴァが楽しそうにしていた。良かった、緊張も少し和らいでいる。

「ノヴァさんは元騎士って聞いたんですけど、今は全然戦ったりはしないんですか?」

千加の問いに

「そうですね、身体を動かしたり素振り程度です。」

ノヴァが答える。すると

「私はこれから冒険者登録をする予定なので武器の扱いとか聞いてもいいですか?」

と言い出した。

「私でよければ。」

「千加。抜け駆けは駄目ですよ、ノヴァ私も」

「理央様はミランダ先輩から習って下さい。ノヴァさんは渡しませんよ」

「羨ましいです。私運動神経がないので憧れます。あそうだ。ノヴァさん、服作りの参考にするので今度話を聞かせて下さい!」

ソフィアとノヴァも話ができるくらいには落ち着いてきたようだ。ソフィアの薬指に指輪をみつけ

「ソフィアは既婚者なのね、結婚生活はどういった点に注意したらいいかしら」

話を振ると、真っ赤になった。

え?!な、なんで?

「まだ婚約中だったかしら」

「い、いえ。そ、そうですね、互いの生活の速度が違うので、その折り合いと結婚後相手に求めることの話し合いが重要になるかと。」

「ありがとう」

なるほど。覚えておこう。

「旦那様はどんな方なんですか?」

ノヴァも若干まえのめりで質問する。

「庭師なの。南門内側の樹木の剪定と健康状態の維持改善が主業務で屋敷の庭師のように華やかな仕事ではないけど」

頬を染めて話すソフィアは、自分の事のように誇らしげでとても素敵だった。

「南門内側というと、へ、この領主屋敷とか貴族の屋敷一帯ってことですか。すげぇ、あ、失礼。凄いですね」

千加は驚き過ぎて素がでた。すぐ取り繕ったけど。

「樹木医の仕事も兼任しているのね、素晴らしいと思うわ。私、庭師の方々の技術にいつも感心しているの」

「理央様は刺繍と裁縫は上手いのに、植物の手入れとか下手なので」

「千加!バラさないでって言ってるのに」

私達のやり取りをみて二人が笑う。



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