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不運な召喚の顛末  作者:
第一章
136/605

動揺といちゃいちゃ

ミランダに連れられやってきたのは、家具も何も入っていない部屋だった。

そこに縛られたニビ子爵が椅子に座らされている。その周りを侍従長、ハロルド、ノヴァが取り囲み、千加をイザベラが抑えているという構図だった。

侍従長達の顔色が悪い。もうだいぶやらかした後だった。

「千加。」

ニビ子爵の前に出るのは嫌だったけど、千加が暴走しているなら止めるのは私の役目だ。

「あ、理央♡」

あ、だいぶキレてる。

振り返って笑った千加の表情を見て確信する。

「千加、取り敢えず部屋を出ようか?」

「駄目だよ、このクソ野郎には生まれてきたことを後悔させてやるんだから」

「そんな事は私は望んでないよ?」

「えー?じゃあ、体の表面から飛び出してるもの全部切り落とすのは?」

「駄目。血みどろは駄目」

「死なない程度にユル様に取り憑いてもらうのは?」

「駄目。そんなことしたら精神崩壊起こすからやめて」

「うーん。あ、わかった。気がすむまで『腹パン』!これでしょ!見えないようにやれ!?ってやつ」

「千加、駄目だから。そんなことしたら、絶交だからね」

「ちぇっ、」

「もうだいぶ暴言吐いた後でしょ。私と庭でお散歩するのと、この場でうだうだするのどっちがいい?」

「お散歩」

「うん。じゃあ行こう。ユル様の手綱もちゃんと握ることいい?」

「わかった。はぁ、運が良かったな、クソ野郎」

千加はニビ子爵を見て吐き捨てるように言い部屋を出る。

室内にいる全員がほっとした。どれだけやらかしたのか。

「お散歩が決定したのですが、グラッドは」

「グラッド様も一緒でいい。ミランダ先輩も」

「ではご一緒しましょう。」

「かしこまりました」

左手はグラッド、右手は千加に取られ、両手に花ならぬ連行される宇宙人のようなそんな感じになった。

庭を散歩しながら、落ち着いてきたのか千加が小声で謝る。

「理央、ごめんね」

「?気にしてないよ。怒ってくれてありがとう」

「違うよ。ニビ子爵に特に何も感じなかったって報告したことだよ。間違ってた。もっと感情まで」

「千加。他の人にそれはしないって約束したでしょ。」

「うんでも、今回は未然に防げたはずなんだ」

「それをしてたら、私ずっと怒ってるかもよ?もしかしたらその場で絶交よとか言ってたかも」

「それは嫌だ」

「私は何もされてないから。ありがとう千加」

うんと小さく頷く千加をみて安心する。右手が解放されたかと思ったら、腕に抱きつかれた。

グラッドの方をみて、ニヤリと笑ったから態とだ。

すぐに離れる。やっと普段の千加に戻ってきたようだ。

「グラッド、あれは態とですからね?」

「わかってます、けど。」

「もう。ならこれでいいですか?」

グラッドの腕に腕を絡める。

そんな私たちの後ろでは、ミランダと千加がさっきの会話にでた『腹パン』について話している。物騒な会話だなぁ。

しばらく散歩を楽しんで私はグラッドとグラッドの部屋に、ミランダは千加と一緒に新しい部屋の準備に戻る。

その際に千加がグラッドに何か言っていたが、よく聞こえなかった。

多分抱きしめろとかキスしてやれとか、かな?

千加は大分思考がオジサンの時がある。

「グラッド、千加の意見は参考にしなくていいですから」

「リオは私が何を言われたのか、わかるのですか?」

ソファに座り、さっきの千加との会話の内容について話す。

「抱き締めてやれ、キスしてやれ、とかでしょ?」

「当たりです。流石友達ですね」

「参考にしないで下さい。あとで絶対にやにやされるので。……はぁ、ひやひやしました。」

淹れ直したお茶を飲みながら、千加のキレ具合を思い出しよく止めたと自分で自分を褒めていた。

「ハロルドも引いてましたからね。相当な事があったんだと思います。侍従長のあんな表情初めて見ました」

「ミランダが私を連れてこないとって思うことがあったんだろうけど、考えたくないです。千加の危険度が上がった気がします。」

ため息がもれた。

するとグラッドが私の方に少し寄り、腕が触れ合う。

茶器をテーブルに置いて、私もくっつく。

ただただ無言で寄り添う。グラッドの肩に頭を預けて、ぼんやりとする。それだけで安らげる。

気づけば目を瞑り、眠っていた。

「……?あれ、私」

「魔力の使いすぎですよ」

目が覚めるとグラッドの膝枕だった。何やら読書中のようだ。

「ごめんなさい、すぐ」

起きあがろうとしたら、止められた。

「急に起きると危ないから、ゆっくり起きて。魔力を使いすぎたときはふらつくこともあるから」

「あ、ありがとうございます」

ゆっくり、起きあがる。頭がぼうっとする。

「はい。お茶。」

「ありがとう」

お茶を受け取り飲む。

グラッドの好みのお茶なのかな、すっきりした味わいのお茶だった。私が飲んでいるお茶に近い。でも同じではないと思う。なんだろ、なにかフレーバー?ついてるのかな、ほのかに香りがする。

「ふふ、大分いつものリオに戻ったようだね」

「いつものって、どうしてですか?」

「お茶のこと考えてるでしょ。初めて飲むお茶じゃないのに」

確かにそうだ。さっきも飲んだのに。

「グラッドも一緒、ですよね?」

「そうだね。私もリオにくっついて癒されたから冷静になれたし」

表情がいつものグラッドだ。

「何を読んでいるんですか?」

「鉱物図鑑だよ。」

一緒に読もうと並んでページを開く。

そこには繊細なタッチで詳細に描かれた鉱物の絵と説明があった。すぐに夢中になる。グラッドの話を聞きながら、図鑑を眺めて、棚に実物がある物はそれを図鑑と見比べたりして楽しむ。

「グラッド様、リオ様。夕食の時間です。」

セシルが声をかけるまで楽しく過ごした。

一緒に食堂に向かう。

食堂には先にフレッドとミレニアがいた。

「リオさん、今日はすまなかった。」

「ごめんなさい。怖かったでしょう」

二人に謝罪されミレニアに抱きしめられると一気に目が潤む。ぐっと我慢して、

「大丈夫です」

と答える。

「リオさん。彼はすぐに帰還させた。それからクロムへの立ち入りを禁じている。安心してほしい。」

「お心遣いありがとうございます」

夕食のメニューは私の好きなものが並んでいた。

しかも卵料理はラビの料理だった。気遣いが嬉しくて涙を我慢するのが大変だった。

夕食後の報告はニビ子爵以外の話だ。視察の日程が決定したこと、春の冒険者を呼ぶ宴の準備の進捗、ウパラからの職人が到着した等報告を聞く。

報告が終わり、食堂を出る。

ミランダから新しい部屋の用意ができたと告げられた。

「グラッドともう少し一緒にいたいです」

「かしこまりました。後で迎えに行きます」

グラッドと腕を組み、部屋に戻る。

「良かったのですか?」

「グラッドの都合も聞かずにごめんなさい」

「私もリオと一緒にいたかったので、嬉しいです」

「セシルさんも、ごめんなさい」

私が部屋にいる間は、自室に下がることも出来ない。

「いいえ、グラッド様の機嫌が良くなるので大歓迎です」

「それでは私がいつも不機嫌みたいじゃないですか」

「グラッドって不機嫌な時あるんですか?」

「グラッド様は、部屋では大体ぼんやりしているか鉱物図鑑眺めてるかなので、偶に不機嫌な時は緊張します」

「不機嫌なグラッド、想像ができないです」

「大体リオ様関係」

「セシル、余計な事は言わなくていい」

「はい、失礼致しました」

グラッドって私関係で不機嫌になるんだ、嫉妬とか?私に苛つく時もあるのかも?よし気をつけよう。

グラッドの部屋でもくっついて過ごす。ただ一緒にいるだけなのに心が満たされていく。

「グラッド。あ、あのこれからの話をしてもいいですか?」

「はい。」

「婚約期間は一年から二年ってミレニア様から聞いているんですが、グラッドはどう思いますか?」

「婚姻はリオの準備が整ってからで構わないと」

「あ、違うんです。あの、グラッドのこの先の予定を聞きたいんです。言葉が足りていませんでした。すみません」

「私の予定ですか。これから一年は文官、騎士両方の新人研修に参加する予定ですから、婚姻は一年以上後の方がいいですね」

「うん。私も一年以上先がいいです。あと、まとまった休みを取って滞在してほしいとも言われています。あ、婚約期間中に行う、肌合わせもいつがいいか、話したいです」

「計画を立てるのが苦手だと言っていたのに、克服しようとする姿勢は素敵ですよ。リオ。でも、無理はしないで。震えてる」

無意識のうちに震えていた。知らなかった。怖かったんだ。

「でも」

「お父様との約束もありますし、計画は二人で立てていきましょう。ゆっくりでいいんです。まずはリオの休みがどの辺りに取れるのか、そして私もその間に休みを取れるのなら、その休みの期間に肌合わせを考えましょう?ね?」

「グラッドは凄いなぁ。私もグラッドみたいにこうしましょうって直ぐにいえるようになりたいなぁ」

「リオ」

「?どうしました?」

「触れてもいいですか?」

「う、うん。いいですけど、どこにその気になる出来事が」


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