表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
不運な召喚の顛末  作者:
第一章
131/605

緊張の解し方

お茶会室にミレニアが入ってきた。

「ミレニア様」

「ごめんなさい。書斎まで来てもらったのに、人事の話も出来ずに」

目元がやっぱり赤く、表情が暗い。

「無理は、」

駄目だと声を上げるが

「大丈夫よ、リオさん。」

やんわり笑顔で遮られた。

「ミレニア様。先程はユル様が失礼しました。感情の制御をしてくれて助かりました。ユル様の力の制御も完了しましたので、私も比較的普通に話ができます」

千加が話すと「そう」とミレニアから明らかに肩の力が抜けた。

神様の力が強いと千加は人離れし過ぎて怖がられる。感情の渦が見えることもそうだが、考えている事を先に答えたりして人に不気味さを与えてしまう。その事を隠す余裕がなくなるのが制御が出来ていない状態で、全てユル様次第だ。

ミレニアに席をすすめ、三人でお茶会を再開する。

「ミレニア様にはちゃんと話しておきます。……ふぅ。」

千加は少し緊張したように深呼吸をして、自らの力のことを話し始めた。

制御できない状況下で起こること、制御できてても見えるもの。自身の裁量で扱える力のこと。

「視ることは、感覚的にやっているので殆ど制御は関係ないです。表面的なことなので、起こったことを知るだけ、その人の内面や深層へは立ち入りませんが絶対ではないので、困りものです。先程は、制御不能でしたので室内にいた全員の感情が渦巻いて視えていました。より強い感情は私の気持ちを無視して入り込んでくるので、ミレニア様が感情を抑えてくれて非常に助かりました。ははは」

「チカさんはどうして、その力のことをわたくしに教えてくれたのかしら」

静かに千加を見つめるミレニアに、笑ってすまそうとした千加はバツの悪そうな顔になる。

「気味悪かったでしょう?だから、少しの不信感も残したくなくて。あー、その。理央の義理の母親になる方ですし。悪感情を持たれたくなくて。」

私第一の説明がいまいち理解できなかったけど、

「千加。ありがとう」

普段なら絶対明かさない秘密を明かした千加に感謝を伝える。大切に思われているのが、少しくすぐったい。

「チカさん、打ち明けてくれてありがとうございます。」

「いえ。あ、あの。ミレニア様、ちょっとだけ気になったので聞きたいのですけど、いいですか?」

「何かしら?」

「フレッド様は昔から、ああですか?」

千加の質問を何の気なしに許したミレニアの表情が固まる。

千加が喋る前に防音の魔力壁を張った。

二人の会話が全く聞こえなくなった。

「また、やらかしたな。これは。」

「リオ様お二人は」

「千加がミレニア様に尋ねてはいけないことをつい尋ねたようです。千加は稀に自分で自分の首を絞めることがあるので、こちらはひやひやします。この世界では、防音の魔力壁があるので助かります。」

神様の影響を幼い頃から受けて育ち、他の人と違う世界が見えているのは千加の普通。その彼女の普通と他の人の普通の重ならない所を踏み抜くことがごく稀にだがある。

「立ち入り過ぎだと思ったらミランダも言って下さい。私も千加の言動には気をつけますので」

「かしこまりました」

魔力壁を解除したミレニアが、

「それでは、人事の話をしましょうか」

と何事もなかったように話を続けた。

動揺しているはずなのに持ち直せる精神力に憧れを抱く。

「はい。ミレニア様」

屋敷での専属侍女に、ニーナとイザベラの名前をあげる。

「あと一人は、もう少し考えたいです。」

まだついてもらっていない人がいる。その人達についてもらって決めたい。

なるほどとミランダが頷く。

「その二人の共通点がわかったので、近い性質の人を優先的つけるよう予定を変更します。」

「共通点ですか?ミレニア様もわかりますか?」

「何かしら。わたくしは、対極にいる印象しかないのだけれど」

私達が揃って首を傾げるとミランダが

「気配が地味な二人です。イザベラは外見は派手ですが、気配は地味で周囲に溶け込み易く、更にニーナに関しては植物のような気配ですね。」

教えてくれた。

「気配……理央いつの間に気配を察知できるようになったのさ。」

「ミランダの訓練のおかげです」

「それでは、二人は確定ですね。チカさんが情報官又は調査官。服飾係は暫定的にドレスの制作者のソフィア。専属筆頭はミランダでいいかしら」

「はい。宜しくお願いします、ミランダ」

「光栄でございます」

そして話は婚約パーティーへと移っていく。

「私は控え室にいます。ひっそりと忍んで観察だけにしておきます。」

参加したら絶対気持ち悪くなると堂々と宣言する千加。

「観察後は報告書を提出してください、チカ様」

しれっと情報を手にしようとするミランダ。

「ミランダは専属筆頭となるのですから、チカさんのことはさん付けか呼び捨てないといけませんよ」

ミランダの言葉に訂正をいれるミレニア。

「呼び捨てでいいですよ」

あっけらかんとした千加とは反対に

「ですが」

ミランダは躊躇う。

「同僚で新参者に様付けは、駄目ですって。さぁ、呼び捨てで呼んでみてくださいよ」

「わかりました。チカ、起こったことを視るというのは、具体的にどの程度視えているのですか?」

「端的に、えーっと、この前の理央なら、魔獣の群れ、兎、野菜、女だったっけ?」

千加が私を見る。確か、

「魔法省の一件のあとです。兎型魔獣、緑子様の野菜、狂信の女性のことですね。精度としてはそこまで高くはありませんが、言われた本人としては、ドキッとする単語だと思います」

私に限れば千加は感情面も読むのでもっとドキドキだ。

「では、それで視えた物を書いて渡してください。リオ様が持っている来客リストには似顔絵がついているのでそれを見ながらお願いします」

「おぉ、初仕事ですか。頑張ります」

「使用人の選定にも私が立ち会います。後で話し合いましょう」

「お願いします。」

ぺこりとお辞儀をした千加にミレニアが、こちらの挨拶の仕方を教える。千加は異文化交流と楽しそうに習っていた。

「緊張してきました。」

「ふふふ。リオさんは表情にでないことが良いところではありますが、パーティーの間は常に意識して微笑んでください。そうしたら、笑うことに意識がいって緊張もどこかにいってしまいますから」

「はい。」

「ミレニア様、グラッド様の可愛いところを話してあげるといいと思います」

千加が挙手と同時にそんなことを言い出した。

「千加!何言って」

私が遮る前にミレニアが話始めた。つい大人しく聞き入る。

「グラッドとは五歳の頃に養子縁組したのだけど、最初の頃はフローラ様が恋しいのか一人で泣いていることが多かったわ。クラリスとは性格の不一致でよく喧嘩していたし、」

幼い頃のグラッドの記憶は一応ある。可愛い。

次々とでてくるグラッドの話に口元がにやける。

「初めての挨拶を甘噛みして、恥ずかしがってるグラッドはとても可愛かったわね。大きくなってからは、クラリスのあしらいかたを覚えたのか喧嘩もなくなったし、取り乱したりもしなくなったんだけど」

ミレニアが言葉を切る。

?何かあったっけ?

「ミランダがグラッドを泣かせて帰ってきたことがあったわね。あれは吃驚したわ」

?!なんだって!?グラッドがミランダに泣かされたって、ん?待てよ。もしかして、

「それって九歳の頃ですか?ミランダから逃げる訓練の」

恐怖体験の時ですか?!

「あら、知っていたの?相当怖かったらしくて無言で泣いてたわ。珍しくミゲルも平謝りだったし」

「あれは大人げなかったと反省しました」

ミランダが申し訳なさそうに言う。

これどこに驚けばいいの?!ミゲルが平謝り?グラッドが泣かされてること?でもそれよりも

「泣かされたのは知りませんでした。ふふふ、可愛いです」

グラッドの可愛い姿にほっこりしている私を横目に

「どんどんこの調子でグラッド様で埋めていくと緊張は皆無になるので。パーティーの直前にも教えてあげるといいかもしれません」

「流石お友達ね。」

千加とミレニアがこっそり話していたのは幸か不幸か私の耳には届かなかった。





評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ