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不運な召喚の顛末  作者:
第一章
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再会

それからミランダが戻ってくるまで、魔法実験案の作成をして過ごした。

ノヴァはミランダと同じくらい気配の消し方、出し方が上手い。近づく時は驚かせないようにわざと気配を悟らせる。

……気配の有無を感じられるようになったことに驚く。全てはミランダのおかげなのだが、まさか出来るようになるとは思わなかった。結構人の気配に鈍感な方だと思っていた。

ニーナは終始空気のように自然な気配をしている。

そう考えるとイザベラは地味な気配だった。派手な見た目に惑わされるが、気配自体は地味だ。

「失礼致します。リオ様、ミランダが戻ったようです。」

ノヴァの言葉に、心拍数が上がる。

部屋に入ってきたのは、ミランダだけだった。

「ただいま戻りました。リオ様、旦那様がお呼びです。奥様とグラッド様も書斎でお待ちです」

「かしこまりました、今向かいます」

早る気持ちを抑えながら、殊更ゆっくり優雅に動く。

「ノヴァ、ここからは私が伴につきます。お疲れ様でした」

「ノヴァ楽しい話をきけて有意義な時間をすごせました。ありがとうございます」

「いえ。それでは失礼致します」

ミランダを伴い書斎へ向かう。その間も緊張が高まる。

書斎の扉の前には、侍従長が立っていた。私達に気づくと、ドアをノックし、開ける。

「失礼致します」

部屋に入る。そこには、フレッドとミレニア、グラッドに、千加の姿があった。動きやすい格好できたのか、パンツスタイルだ。自称ショートボブの髪型のせいもありパッと見、男の子のようにみえる。全身黒尽くめ。いつもの格好だ。

扉が閉まる音を聞くと、一気に涙が溢れてきた。

「あー、フレッド様ちょっと失礼します。」

普段通りの千加に、涙がますます止まらなくなる。

「はいはい、泣かないの。よしよし、大変だったね、寂しかったでしょ。おー私愛されてるな。うんうん」

抱きつき無言で泣き続ける私をあやしながら、千加は

「泣き止むこと言おうか?」

そろそろ面倒になったのか泣き止ませる方向に舵を切った。

「意地悪」

「いやー、流石にこの状況の中、泣き続けられるといたたまれないんだわ。神様はさっきからニヤニヤしてるし、神様の力爆発してて制御できないからいつもより刺さってる」

軽い口調で言ったのは周りに配慮してだ。感情の渦が気持ち悪いと以前似たような事があったのを思い出した。

「わかった」

深呼吸を繰り返し、入り混じった複雑な感情を追い払う。

「お、流石理央。」

顔色は悪くないけど、ちょっと目が疲れている。

私がくる前にも何かあったかな?クラリス関係?

「失礼しました。」

フレッド達に謝罪する。急に泣き出して驚かせたに違いない。

「グラッドとミランダの予想が当たったね、付き合いの差がでたか。リオさんこっちにおいで、お茶を淹れよう」

フレッドの言葉に、反射的に千加の腹をつねる。

「いっ、たー」

「おい。」

「いやいや、別に面白がってる訳じゃなくて。なんとなく理央はどんな反応をすると思うかって聞いただけだし。」

手を離す。

私達のやり取りを面白そうにみていたフレッドと目が合う。

あ、これは。わざとかな。そんな気がした。

千加と一緒にソファに腰掛け、お茶を一口飲む。

そして、目の前に座るミレニアの目が赤いことに気づいた。

千加が疲れてるのは、やっぱりクラリス関係の話をしたからか。

「まずは、理央に紹介しておくわ。神様です」

一人掛けソファに鎮座する人形に向かって千加が声をかけると、

「うむ。理央よ、ひさしいのぉ」

やけに仰々しい物言いの女性の声がした。

「はい。ご無沙汰しております。この度は、わたくしのために尽力していただき、誠に有難う御座います」

深くお辞儀をする。

「よいよい、其方は妾の要求に応えてくれたのでな。此度この世界にくるにあたって天帝様から名を賜ったのじゃ、ユルと名で呼ぶことを許す。」

「恐悦至極にございます」

「楽にするが良い、妾も楽にするでな」

「はい。ユル様」

人形の腕が上がる。体も自由に動かせるようだ。

「では、これから魔力と加護属性の計測をしよう。チカさん、これを順番に握ってほしい」

魔力計測器と加護属性測定器をフレッドがテーブルに並べる。それを千加が握る。

「魔力はあるようだね。最大値が、結構多い。高位貴族並みだ。魔法を使用する場面では特に苦労はしないと思って構わない。……加護属性は、どうかな」

全員が結果に釘付けになった。水と金属性のみのレベル3、

「うわぁ『狂信』か、うーんぴったりすぎる加護がでた」

思わず口から零れた私の言葉に

「へ?なになに?珍しいの?」

千加が反応する。

「神様のためならなんでもする、そういう性質を表す加護で、神様のためって心底思って使う魔法が、めちゃくちゃ理に叶ってないものでも現実になる。魔力量関係なしに」

かいつまんで説明する。

「わぉ。でも、ほとんど使いどこないよ。ユル様、物見遊山でこの世界にきてるから」

千加は特に気にしてないようだ。

フレッド達はなんとも言えない顔をしている。

「フレッド様、安心してください。ユル様は自身の分は弁えています。他の神の世界で変なことはしません。私も変な野心とかはありません。」

千加が宣言する。

「まぁ、私は理央を与えとけば大人しいので、難しく考えないでください」

意味がわからない。

フレッドはにっこり笑って話を続ける。深く考えるのを放棄した疑いがあった。

「わかった。狂信は隠した方がいいかな?」

「いえ、隠さないでいいです。その方がヘンテコな魔法使った時に受け入れやすいはずなので」

「では、次にチカさんの立ち位置についてだが、魔力があるので貴族位を与えることは可能だが、どうする?」

「そうですね、以前お伝えした通り理央の近くにいられる立場というのが貴族令嬢なら、それを望みます。あと仕事は判別系統ならなんでもいけますので、ミランダさんが言ってた情報官でしたっけそれを希望します。調査官もやれますし」

「なるほど。それならリオさんの専属の情報官で契約しよう。リオさんの故郷での友人が追いかけてきたってことで」

「それならボロはでないですね。真実なんで」

「ユル様の扱いは、」

「闇の神の眷属ってことにしましょう。理央を守護する名前をもらっているので。」

二人の間で、さっさと話がまとまっていく。

家も準備されているらしく、使用人も必要であれば手配できるとフレッドが言うと、

「使用人に関しては私が選別するので大丈夫です。特殊能力が必須になるので」

千加が笑いながら断っていた。

特殊能力?なんだろ?フレッドがすかさず尋ねる。

「特殊能力?どんなものか聞いても?」

「ユル様を敬いつつも気にしない神経です」

あぁ確かに必要だ。敏感な人は、ユル様に畏怖の念をおぼえるそうだ。

私も私の家族も千加からしたら笑うほどその方面に鈍感なのだそうだ。

霊感のれの字もないらしい。

安心だねとサムズアップされたのを思い出した。

「わかった。では、神殿の職業案内所に募集をかけてチカさんが選ぶといい。」

「職業案内所があるんですね。神殿は祈りの場所じゃないんですか?」

「サイス領では、神殿の暴走を防ぐ目的と効率性から祈りの場以外の役割も持たせている。」

「へぇ。」

「後で神殿担当者から連絡をいれるから、打ち合わせをしてほしい。」

「ありがとうございます。」

「それから身分証はこれから最終調整して、出来上がるのは一週間後になる。それまでは、街から出ないように」

「わかりました。では、私達はこれで失礼致します。」

「あぁ。ミランダ。後は任せてもいいか?」

「はい。かしこまりました。チカ様リオ様こちらへ」

千加はユル様を抱き、愛用のショルダーバッグを肩にかけた。私達は書斎を後にする。千加の表情、会話に混ざらないミレニアの様子からみて双方共に限界だったようだ。

ミランダに案内されたのはお茶会室だった。

もう既にお茶会の準備が整っている。

「自室に招くお茶会もありますが、大体はこちらの部屋を使います」

「おぉ、華やかな部屋だね」

「屋敷の中では、広間についで豪華な造りになっています」

「へ?フレッド様達の部屋は?」

「旦那様達は簡素な造りがお好みですので、」

うん。こんな反応になるの、わかる。クラリスの記憶があっても戸惑った。

「どうぞごゆるりとお過ごし下さい」

ユル様をテーブルに座らせ、その前にお茶とお菓子を置く。

私達はミランダの淹れるお茶とセシルのお菓子に舌鼓を打った。

「さてと、ユル様はこれからどうされます?私は街から出ないので、お一人で遊びに行かれますか?」

「うむ。そうじゃのぉ。此方は初めてだからのぉ、」

「私に三割残して貰えれば、遊びにでても構いませんよ」

「お主は本当に薄情じゃのぉ。」

「ユル様のなさりたいようにして構わないって、寛大な心で言ってるんですがねぇ。ここの世界の神様方に挨拶してきたらどうです?」

「そこなのじゃ。四割では何かあった時に心許ないし、かといって後回しにするのも良心が咎めるのじゃ」

「大丈夫ですよ。ユル様は名前をもらって一人前の神様の仲間入りを果たしたわけで、自分が思っているより位が上がってますよ。私じゃ制御できませんもん」

「う、うむ。それは妾が未熟だった。すまぬ。なら、二割でもなんとかなるのではあるまい?」

「そうですね、試してみましょう。」

ユル様が立ち上がり、テーブルから自力で降りる。そして、千加から距離をとった。

「一体、何が」

急な行動にミランダが戸惑う。

「ユル様、大丈夫っぽいっす。ミランダさんの言葉、ちゃんと理解できました」

「うむ。それならば、妾は神々への挨拶があるのでここで失礼するぞ。理央や、また今度遊ぼうぞ」

「はい。ユル様気をつけていってらっしゃいませ。」

ユル様は跳び上がるとそのまま消えた。

「これは、」

ミランダの呆然とした声に

「ユル様と理央の作った人形は融合して物質と非物質の中間にある非常に理解し難いものになっています。まぁ、難しいことは私もわからないので、適当に流して下さい」

千加が適当に説明する。

「ミランダ。千加とユル様はいつもこんな感じですから、気にするだけ無駄ですよ?」

「リオ様は慣れていらっしゃるのですね」

「あちらにいた時は、お話しすることはできませんでしたけど、不思議なことは幾度か体験しているので」

そういうものですか、とため息まじりにミランダが呟く。

「二割でやっと制御できるわ。まじ辛かった。これでお茶の味も楽しめる。うま」

疲れた表情が少し改善している。良かった。

千加曰く、神様の名付けは予想外の出来事だったらしい。

一応他の世界に行くから、天帝に挨拶をしたら名前を授かった。闇の神の愛し子を守護する者としての名前だ。

「神の庭には闇の神と火の神がいて、そこで挨拶は済ませているから他の神に逢いに行くんだろうけど。闇の神は、なんか大らかな神様だった。ユル様に興味津々だったから仲良しになってもらえると助かる」

「千加、疲れてるなら部屋に戻る?」

「お部屋は用意しております。ご案内致しましょうか?」

「いや、いいよ。……やっと色が戻ってきたんだから、堪能したいじゃん」

最後のほうは小声で上手く聞こえなかった。

「理央には、これを渡しておく。ミレニア様に渡したら泣かれたので、理央も泣くと思うから部屋に戻ってからにしたらいいよ。」

「なんで今渡すかな」

ショルダーバッグから手紙を取り出して渡してきた。絶対わざとだ。

「ミレニア様を泣かせたって、フレッド様に何か言われなかった?」

「?いや、特には。フレッド様もいっぱいいっぱいだったからかな。グラッド様は凄く冷静だったけど。二人には、クラリスからの手紙と肖像画を渡したんだ。記憶を思い出したらしくて、手紙と肖像画を二人に渡してって。」

「記憶を思い出したって、」

「五歳以前の記憶。結構重要な記憶だったみたいだね」

いいことだと思う。クラリスを切り捨てないといけないと思っていたミレニアの救いになるなら嬉しい。

「読んでないの?」

「ユル様がクラリスの観察を終えた後の話だから、流れてこなかったな。あと昨日からさっきまでずっと誰かしらの感情が刺さってて細部まで確認できなかったってのもある。制御できてる今なら違うんだろうけど進んで読むことはしないって決めてるからね」

絵の仕上がりはとても上手く出来ていたそうだ。

ミランダも頷いていた。

「あ、今なら千加に会えて嬉しい、寂しかったよーって泣いていいよ?」

「もう大丈夫です」

「え、嘘。泣いてる理央を抱き締めて、よしよしするまでの流れをやろうよ」

「大丈夫です」

お茶会の時間は楽しく過ぎていった。





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