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不運な召喚の顛末  作者:
第一章
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トラウマ

結局夕食前まで二人でリストを覚えていた。楽しくて時間があっと言う間に過ぎる。食事も美味しくて楽しい時間を過ごした。

夕食後、部屋に戻った時に何故か不意に思い出した。

「リオ様?如何されましたか?顔色が悪いようですが」

一気に気持ち悪くなる。

「大丈夫です、あの、少しいいかしら?髪の毛を垂らすのではなく、纏めてもらえないかしら。」

「?はい。かしこまりました」

彼女は手早く髪の毛をまとめた。すると印象が変わり、胸の辺りにあった気持ち悪さが軽くなる。

「この部屋にいる間は、この髪型でお願いしていい?」

「はい」

「お茶をお願いします。淹れ終えたら、今日はもう戻って構わないから」

「かしこまりました」

彼女に感じていた気持ち悪さの理由に気づいた。

あの子に似てるんだ。

明るく染めた髪をいつもポニーテールにして、化粧はバッチリ。自信たっぷりの表情でクラスの中心にいた。

彼女はあの子じゃないのに、なんとなくあの子を思い出しただけなのに。

心が騒めく。

目を閉じてゆっくり呼吸を整える。何も考えずにただただ呼吸に集中して。

お茶の香りに目を開ける。

「リオ様、今日はこれで失礼致します。無理なさらずにご自愛下さい」

「ありがとう」

部屋を出て行く彼女を見つめる。

顔や体つきは全然違うのに、なんで似てると感じたんだろう。話をしてても全然気づかなかったのに、なんで思い出したりしたんだろう。

お茶を飲みながら、ぼんやりと過ごしていると

「リオ様」

ミランダが少し焦った様子でやってきた。

「?ミランダ?どうしました?」

額に手を当てられ、熱を確認された。

「いえ、具合が悪そうだと報告がありましたので」

「大丈夫ですよ?」

「無理はなさらないでください。」

これから外出するようですぐに出ていった。

お風呂にゆっくり入る。出てきてからもポットに残った、冷たくなったお茶を飲んで、ぼーっとする。

ポットが空になるまで無為に過ごした。食器を側務めの控え室まで運び、水に浸しておく。

ベッドに腰掛け髪を乾かして、寝る支度を整える。

「もう寝よう」

部屋の照明を落とそうと、入り口の扉横の魔道具に触れた瞬間。

コンコンとノックの音がした。

「リオさん、私です」

グラッドの声がする。どうしたのだろうか?

扉を開けた。いつもよりラフな格好のグラッドがそこにいた。

「?何かありましたか?」

「すみません、就寝前に。リオさんの体調が優れないようだと聞いて」

視線を少し外し、照れたように頬をかく。

「大丈夫ですよ?でもどうしてグラッドが?」

ミランダが先に確認にきていたけど。

「ミランダから大丈夫そうだとは聞いたのですが、気になってしまって。具合はいかがですか?優れないようでしたら、これをミランダから預かってきています。」

小瓶を渡される。あ、これは。

「体力回復剤ですね。ありがとうございます。グラッドも早く戻って休んでください。流石にこの状況はみられるとまずいと」

思うと言いかけた時、此方に向かってくる足音に気づき、咄嗟にグラッドの腕を掴み部屋に引き摺り込んだ。ドアを閉めて、じっとしていると、

「リオ様」

アンナがドアをノックする。

グラッドに姿を隠す魔法をかけ、ドアを開けた。

「はい、どうかしましたか?」

「リオ様の顔色が悪いと報告を受けましたので、様子を見にきたのですが、いかがでしょうか」

「大丈夫です。ですが、もう寝ようかと」

「そうでございましたか。あら?それは?」

手にした小瓶にアンナの目が止まる。

「これは体力回復剤です。冒険者の必須アイテムで、これを飲んで寝るとぐっと体力が回復するんですよ。アンナもいかがですか?」

「ふふ、わたくしは結構です。リオ様がお飲み下さい。ではおやすみなさいませ」

ドアを閉めて、アンナが離れるのを暗い部屋の中で、グラッドと二人じっと待つ。

「ちょっと焦りましたね。」

小さく笑うと、

「リオさん。」

グラッドが私の手を握る。

「無理をしていませんか?少しいつもと違う感じがします」

「無理はしてません。ただちょっとだけ、疲れただけです」

無理はしていない。それは本当だ。

「そうですか。」

暗くて顔は見えないが、グラッドの声に元気がない。

「グラッド?」

「私は頼りないでしょうか」

「グラッド?そんなことな」

いきなり抱き締められた。グラッドが微かに震えている。

「リオさんが私に弱い所を見せたがらないのは、私が頼りないからではないでしょうか」

「グラッド……」

かすれた声で、気持ちを吐き出すグラッドの背に手を回して抱き締める。

「すみません、情けないことをいいました」

「ううん、グラッド。私のほうこそごめんなさい。無理はしていないんですけど、疲れたって言うのは嘘つきました。ちょっと嫌な事を思い出して気が滅入ってました。」

「いやなこと、ですか」

不運体質のせいでクラスメイトから遠巻きにされていたことや魔女と言われ爪弾きにされたこと。親しかった子が怪我して、それを皆の前でお前のせいだと罵られたこと。

「グラッドに知られたくなくて、」

そうだ、知られたくなかった。不運体質のことは知られているのに、どんな風に周りに思われていたかなんて知られたくなかった。

知ったからグラッドが変わるなんて思っていない。

ただ私が、弱い私を認めたくないから。言えなかった。

「私はグラッドの前では、いいカッコしたい。良くみせたい。駄目なところをみせちゃう時もあるけど、なるべくいいとこをみせたい。でも、それはグラッドが頼りないんじゃなくて私の問題で」

「リオさん」

笑って誤魔化そうとした私の浅はかさを咎められている気がした。

言いたくない。

家族にだって言えなくて、好きな人なら尚更言いたくない。

でも、言わなくて不信の種になったら怖い。

「……不運体質のせいで、ずっと遠巻きにされて、」

言葉にすると、急に涙が出てきた。

「ま、魔女って言われてた。嫌がらせもされて、」

「贈り物の、」

「あれもそ、その一つで、うぅ。その時の弱い気持ちとか嫌な事を思い出して気持ち悪くて。ごめん、上手く言えない」

「私のほうこそ、ごめんなさい。自分の感情を優先して、無理矢理聞き出してしまいました。リオさんの気持ちを蔑ろにして」

謝るグラッドの首筋にキスをする。甘えるように頭をすりすりと擦りつけた。

「駄目です。もっとぎゅってしてくれないと許しません」

「……わかりました。では失礼致します」

体力回復剤を取り上げられ、一瞬でお姫様抱っこされる。


続きは性描写含みます

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