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不運な召喚の顛末  作者:
第一章
120/605

ニーナ

胸が熱くなった。

その興奮冷めやらぬままに侍女の控え室を覗いたら作戦が成功していることがすぐ判明した。

庭師のおじさんから聞いた話とか、実際に目撃したとか盛り上がっていた。

「ニーナはいますか?」

そこに、アンナが顔を出した。

「はい、おります。アンナ様」

集団の中から出てきたのは年若い侍女だった。濃い灰色の髪が彼女を年不相応にみせていた。落ち着いた雰囲気の女性。

「休憩中にごめんなさいね、休憩後からはリオ様についてもらいたいのだけどいいかしら」

アンナからかけられた言葉に、室内にいた侍女達が騒ぎ出す。

「アンナ様、わたくしですか?以前ついた経験のあるジルや他の方達もおりますし」

戸惑い室内の他の侍女達を気にして話しているのがわかる。

アンナは頷き、他の侍女達を見回しながら告げた。

「あの時はジルにお願いしましたが、その時も貴女かジルかの二択でした。年が近いですからね。午後ついてもらってそれ以降は別の者達も随時お世話に回ってもらいます。いいですね?」

「はい。かしこまりました」

恭しく礼をする姿にもう既に好感を持っていた。

アンナが控え室を後にすると、侍女達は盛り上がっていた。

お客様についた経験のある者、食堂で給仕の手伝いをしている者はジルを取り囲み

「リオ様ってどんな方?」

と話を聞き始めた。それ以外の侍女達も耳を傾けてジルの話を聞く。

「侍女がついた経験がないとおっしゃっていました。紅茶はすっきりした味のものを好まれるし、物静かで落ち着いた雰囲気で、装飾品の美しさや細かさを楽しまれる芸術に明るい方です。」

その他にも庭づくりにも興味があったようだとか服の整え方から家事をされた経験があるとか。意外にも良くみていた。

今回の侍女をニーナにしたのは私の言葉が元になっていると気づいた。ミランダにジルとは間が合わない話をした。

勿論私の問題かもしれないがと前置きして、声をかけるタイミングや大きさにびっくりすると言ったことがきっかけだと思う。それと、咄嗟の出来事に対する私の対応力の訓練かもしれないなと思った。

パーティーの受け答えの練習の際に、ミランダの顔が冒険者訓練の時のミラの顔に、課題を積む時の思案顔になっていた。

「食堂では、ゆっくり優雅にお食事を楽しまれていましたし好き嫌いもないご様子でした。お話しも聞いていて楽しかったです」

「味つけはどういうものが好みかしら。料理人にきいてみないと」

「他に必須品や注意点などありませんか?以前ついたお客様には薔薇の香りのするお部屋を準備してもてなしたことがあるわ。そういう特別な趣味はないかしら」

「いえ、そういうことはありませんでした。お優しい方で気さくにお声掛けをしてくださって、初めて対応したお客様がリオ様でよかったと思っています」

ジルの言葉にミランダの指示で色々お願いした身としてはいたたまれない気になって、魔法を解除した。


遅めの昼食のあと、ミランダからニーナを紹介された。

今日は彼女が侍女としてつくこと、それから明日からは交代で別の侍女がつくことも併せて知らされた。

「宜しくお願いします」

ニーナはジルとは違って大人しい気配の侍女だった。

ミランダはニーナに本日の予定などの諸々を引き継ぎ、部屋を出て行った。

「紅茶をお願いします、その後は控えていてください。何かあれば呼びます」

「はい」

紅茶の腕はジルより上で、柔らかい味がとても心地よかった。

「美味しいです。ニーナの紅茶は柔らかくてとても心が落ち着きます。ありがとうございます」

素直に感謝を伝えると、ニーナは少し驚きつつも礼をして側務めの控え室に下がった。

今回ミランダからは特に指示はなく、加護障害の本をもう一度しっかり読もうとテーブルの上を整えようとした時

「リオ様、こちらをお使いください」

とニーナが紙とペンを用意して持ってきた。

「ありがとう」

そうだ、頼まないといけないんだった。

「これから読書をします。私、集中すると周りの音が耳に入らなくなります。何かあれば遠慮なく声をかけてくださいね」

「リオ様。わたくしには気を遣わなくても大丈夫でございます。どうぞ読書を存分に楽しんでください」

「ありがとうございます、ニーナ」

紙に疑問を書き出し、ページを捲る。都度都度メモをして読む。考えたことを書き出し、更にページを捲る。

久しぶりにじっくり読書を堪能する。

「うーん」

読み終え、伸びをする。紅茶に口をつけて、そこで気づいた。

読書中も何度も紅茶を飲んだが、空になることはなくいつでも楽しめた。更に紙が補充されていて、無くなることもなかった。テーブルの上に積み重ねたメモし終えた紙はまとめて文箱に入っていた。蓋が開いた状態だから、紙が散らばるのを防ぐために文箱を使ったことがわかる。

気づかない自分自身に衝撃をうけつつ、ニーナの気遣いを嬉しく思う。

「リオ様、宜しいでしょうか?」

「はい」

「ミランダから明日以降の予定を預かっております。」

「ありがとうございます」

ニーナから予定表を受け取り、目を通す。その間に紅茶のおかわりとお菓子が用意された。

予定表には明日はミレニア様と婚約結婚夫婦についての話があり、パーティーの招待客のリストを見ながらどんな方達が来るのかといった教育が行われるようだ。その次は婚約パーティーの会場設営に関する監督や手順など女主人としての役割を習う。その間もダンスや動きに関する反復練習は続く。

そして、人事に関する打ち合わせが予定されていた。

この日は千加がくる日。

もう少しで会えるんだと思うと何故か緊張してきた。

その二日後に婚約発表の日。

やれることをきちんとしなきゃ。

気持ちを新たに頑張ろうと決める。

まず出来ることは動きに関しての反復練習、応対練習と明日以降の侍女との相性を確かめることか。

「ニーナ、少し庭を散策したいのですが」

「はい。お供致します」

部屋を出ようとすると、

「リオ様、春の始まりとはいえまだ今の時間はまだ肌寒うございます。こちらをお使い下さい」

ケープを持ってついてきた。

「ありがとうございます」

ケープを羽織り庭へ出た。

まだ行ったことのない南側の生垣がみたい。


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