欠点2
クラリスを認識した神様が世界中にいる異世界人を特定できるようになってしまったらしい。一番近くにいた異世界人に会いにいって色々観察したとのこと。
『え、生きてるの?』
追い出されたら加護膜の影響で亡くなるものだと思っていた。
『うん。光の精霊かな、それが付いてるから、体調は良くはないけど生きていけてる。』
『そう。……それで?』
『その反発で失われるのは人それぞれみたいだよ。クラリスは五歳以前の記憶で、会った人は友達の記憶。理央の推測が合ってる可能性も否定できないけど安易な結論は出さないこと。もしフレッド様やミレニア様が真相を望んでいるようなら私が説明する。理央の口からは伝えないで』
『わかった』
頷くと千加が表情をすこし崩した。
『失っても思い出すこともある。私が会った人は、私の事をみて友達の記憶を一個思い出したって言ってたから。』
『そっか。千加ありがとう。千加は凄いな』
『もっと褒め称えていいよ、さぁ褒めたまえ』
『ごめん、やっぱなしで』
これ以上は調子にのって変なこと言わされるやつだ。
えーいいじゃんとぶつぶつ文句を言っている。
『あのさ、クラリスってどんな扱いなのかな』
『ん?表向きは理央として生活してるよ。りっちゃんって呼んでる。クラリスもいい方向に変わってきてる。召喚当初に比べたらだけど。要さん達は親戚の子供とふれあう感じでびしばし躾けてる。』
『そうなんだ』
『その心配は今すぐゴミ箱に捨ててこい』
『読むな』
『大事な大事な家族への愛情は消えてないし、受け入れ難い現実と向き合って生活してるけど、いつでも理央の事を思ってる。安心しろ。ちゃんと愛されてる』
『ばーか』
泣きそうになるのを我慢する。
『図星すぎて語彙力が。つか昨日会ったばっかりだろう。あーやきもちか』
『やきもち、やきもち?まじか、なんか子どもっぽいよね』
『いや?可愛いぞ。要さんに教えよう』
『千加!黙ってて』
「リオ様?何かございましたか?」
ミランダが戻ってきた。
「ミランダさんだ、こんにちは」
「千加と話をしてました」
ベッドから降りて、ミランダの方へ顔を見せる。
「リオ様、目が赤くなっております。大丈夫ですか?」
大袈裟だよって笑うと安心したように表情が緩む。
「ミランダさん忙しいとこ申し訳ないんですけど、いつが余裕ありますか?」
千加の言葉にミランダが少し考え、日時を提示する。
「この三日間は予定が詰まっていますのでその後であれば」
「わかりました。荷物も結構あるんですけど、大丈夫ですか?」
「ええ、馬車を用意します。私が迎えに参りますが、それでよろしいですか?」
「はい。その日の朝に理央に通信を繋いでもらってから出発します。場所は鏡に映すので、それを見て迎えて欲しいです。サイス領首都近くに出るようにしますので」
神の庭を通ってくるそうだ。
「楽しみにしております」
「じゃあ、今日のところはこれくらいで。『理央、忘れんなよ』」
「わかってるよ。ありがとう」
鏡が元に戻る。
「ミランダありがとうございます。忙しいのに」
「いえ、明日から目まぐるしく過ごされるのはリオ様の方です。私が忙しいのはここ三日位です。チカ様がいらっしゃってからが本番ですから。腕が鳴りますね」
無表情ながら楽しそうにしているのが伝わってきた。
「そういえば千加の立ち位置ってどうなっているんでしょうか」
何も決まっていない当初はサイス領が保護した転移者、千加が私の側に立場が欲しいと言ってからは、そのように身分や住居やらを用意すると話したが。
「チカ様がいらして、加護や魔力の有無を確認してから正式に決める予定です。加護や魔力がなくても、お抱え職人や情報員、占い師、侍女など側に侍ることができる身分を用意しています。魔力が無ければ、貴族にはなれません。旦那様もそこは曲げることはありません」
前提を崩してほしいわけではない。そこは納得している。
気になっているのは、
「お抱え情報員っていいんですか?情報員ってもっと秘密裏にって印象があるのですが」
情報員、占い師って身分の方だ。
「情報員は潜まなくていいんです。仕入れた情報の有益性を判断するのが仕事ですから。セシルも情報員としての側面もありますし」
「そっか。占い師っていいんですか?」
「ええ、専属占い師のいる貴族の奥方様はいらっしゃいます。ミレニア様も度々呼ばれる占い師の方がおりますし、まぁあの方の場合占いを解体して術式にできないかって考えて呼んでいる節があるので趣味の範囲ですね」
わぉ。占い師の仕事を無くす気か。
兎に角占い師も情報員も特別怪しい職業ではないことはわかった。
「問題になることがあるとすれば、雇い主が依存し始めた時です。そう見られないことが大事といえるでしょう」
「なるほど、気をつけます」
「その度指摘しますので、安心してください」
「ミランダが頼もしいです。」
「十五で成人ですが、まだまだ半人前です。新成人を新人期間として周りが支援する、それが出来るようになって一人前とサイス領では認められます。」
十五歳から仕事を始めて慣れた頃、新人の指導や支援をする役目をどの職場でも与えるそう。これをやり通して一人前と呼ばれる。
「私は十五歳以前から冒険者として生活していました。ですが、新人冒険者を指導したこともなければ、あまつさえ支援など無駄だと考えていました。ですが、侍女になって想像以上にままならないことの多さに指導支援の重要性に気づきました。そこからですね、支える役目の面白さがわかるようになりました。」
ミランダは丁度今ミレニアから侍女としても冒険者としても新人指導支援が出来るかを試されているようだ。
「ここでつまづくと職を失うことになりかねませんので、一番の踏ん張りどころです」
「へ?失業する可能性があるんですか?!」
「あまりに適正がなく、他の仕事を探したほうがいいと判断された場合ですが。サイスとシノノメ、コランダムは結構その点は厳しいですよ」
コランダムは騎士の地位が高く、それに見合わない人間は例え有名貴族の子息だろうが関係なく騎士位から降ろされる。
文官、職人、冒険者、商人、医師他の仕事につく騎士志望が多いそうだ。
「あそこの地は特殊ですよ、新人も一緒にふるいにかけます。実質二回ふるいにかけられるのですから」
新人時点で騎士適正がなければ、辞め。一人前試験でも指導支援適正がなければ辞める。
「シノノメも指導支援適正のない文官は配属変えして、それでも駄目なら解雇ですから。まぁ殆どは上手く乗り越えるものですが、中には人を指導支援できない方もいるし、組織の外で活動したほうが活きる方もいるので悪いことではないんです。けどどうしても恨みを買います。どう説明して、道を示せるか、納得してもらうかが課題ですね」
確かに生活していくためには、お金が必要だ。仕事がないと収入もない、恨む人はでてくるのは必然だ。
「文官は情報屋、調査官、研究者に、騎士は冒険者、用心棒に、その他様々な職業につけるのに、これしかないなんてないのに、人というものは拘り過ぎると他はみえなくなるものです。」
ミランダは私の頭を撫でて、
「気をつけて下さい。リオ様はなんでも自分でやろうとする。周囲に仕事をふることを覚えて下さい。自分でないと駄目な仕事とそうでない仕事を見極めること。いいですね?」
あまりみせない笑みを浮かべる。




