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不運な召喚の顛末  作者:
第一章
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雑な指示

戻ってきたミランダに引き剥がされた。

「リオ様は明日から婚約発表の際のドレスの試着、発表会の対応などの練習をしてもらいます」

淡々と説明される。グラッドと二人並んでそれを聞く。

「ドレスのお色やデザインはリオ様が以前似合う服を好むとのことでしたので、旦那様と奥様と一緒に決めさせていただきました。」

「ありがとうございます。よかった」

美的感覚に自信がないので安心したのも束の間

「種類はいくつか用意していますので、その中から好みのものを決めましょう」

最終決定は自分でするようだ。

「全部人任せにはできませんよ。役割分担するのは構いませんが最終的にはご自身で決めてください。苦手だからと逃げてはいけません。」

「う、はい。わかりました。すみません」

その他にも髪の結い方からアクセサリーまで決めなくてはいけないことがある。靴もそうだ。

「グラッド様との釣り合いも考えないといけませんので、明日はグラッド様も当日着る予定の服を持参でお願いします」

グラッドは卒業式で着る予定の服で出席するとのこと。楽しみだ。

「本来ドレス等はご自身で用意する物です。ですが、リオ様の場合は事が事ですので、こちらで用意しています。その辺りの準備理由については、家人にはグラッド様がリオ様に贈ったことにしています。他の貴族の婚約でもないわけではないので、グラッド様の溺愛っぷりからあり得る話だと認識させて下さい。まぁほぼ成功しているので大丈夫ですが」

まだ帰領したばかりで、使用人の目につくことをした覚えがない。グラッドと二人顔を見合わせる。

「グラッド様がリオ様を見る目が、旦那様そっくりですので、ダダ漏れです。玄関先で待機していた侍女達がもう既に騒いでいました。」

ドレスの贈り物に半信半疑だった家人達も、納得するだろうとミランダが変わらず無表情で告げる。

グラッドはそんなにわかりやすいのかと戸惑いを隠せないでいる。無自覚だったようだ。

「リオ様にだけなので、別に大丈夫ではないかと」

なんのフォローにもなっていなかった。

嬉しいと同時に恥ずかしい。

「リオ様の室内履きは今日からヒールです。慣れるためですので、ご理解ください」

サイズは確認済みですが、履いてみますか?と尋ねられ、グラッドとのバランスもみたかったので履く事にした。

魔法省で並んで歩いた時も、エスコートの時も、身長が伸びたなぁと思っていた。少しの差かもしれないけど、見上げる角度に変化があった。

「グラッド様、隣りに立って下さい」

並んで立つ。ミランダは私達をみて少し考えこむと他の種類のヒールを側務めの控え室から持ってきた。

何種類か履き比べて、室内履きが決定した。

グラッドとの目線も以前に近い気がする。

「背が伸びましたね。」

「リオさんも伸びてますよ。」

「そうですか?」

「はい。想定していたヒールでは、バランスが良くなかったので変更させていただきました。服飾係にも伝えておきます」

「お願いします」

その後も細かな確認をして、最後にミランダからいちゃいちゃしながら散歩でもしてきてくださいと雑な指示があった。

グラッドと二人苦笑いしながら、

「なげやりな」

「忙しくて余裕がないんですよ。じゃあ、行きましょうか?」

部屋から出る。前回は寄らなかった東屋に行くと、セシルがお茶の準備をしていた。

「うわぁ」

「さっき部屋に戻ってきた時にはもう既に追いやるつもりだったということですね。」

「お待ちしておりました。グラッド様リオ様」

東屋に設置されているベンチに並んで座る。

「セシルさんは準備に加わらなくてもいいんですか?」

「あはは、私はグラッド様付きですので、忙しさのピークは過ぎました。まさか、卒業式に出ないとは思いもよらず」

「嘘つけ。なんとなく分かってただろうに」

グラッドとセシルのやり取りに笑ってしまう。

それからお茶とお菓子を楽しむ。

「リオさんは、花はお好きですか?」

「はい、好きです。特に」

「食虫植物とか?」

「ち、違います!カトレアとかダリアとかです。」

「ふふ、冗談ですよ?」

「いやいや。今、目が純粋に分かったってキラキラしてましたよ!」

食虫植物も嫌いじゃない。ウツボカズラとかついつい覗き込

んでしまうが、あんまりしないようにしている。

「嫌いじゃないけど、捕獲されたはずの虫が凄い勢いで飛んでくるんですよね。痛いのでやめてほしい」

「うわぁ」

とセシルがつい口にした。グラッドも驚いているけど声にはしなかったのに

「セシルさん」

「申し訳ありません。離れています」

焦った様子で、離れた。

あれが、ミランダの言っていた天然か?

「リオさん、セシルが失礼なことを」

「いえ、いいんですよ。千加にもよく言われるので」

十歳の頃から年々酷くなる不運体質だったが、小学校の頃はそこまで酷くはなかった。動物が怯える懐かない、ボール被弾率、くじ引き位だ。

だから、高校生になっても初めての不運パターンというものもが存在した。それを呟いたら、セシルみたいな反応が笑いつきで返ってきたことを思い出す。

「不運体質の話を気軽に話せるようになったので、グラッドには本当に感謝しています。ありがとうございます」

自然と頬が緩む。

「改めてお礼って照れますね、へへへ」

と照れ隠しで笑うと頬にキスされた。

一気に心臓が早鐘をうつ。キスは初めてじゃないのに、と混乱した。

「あ、あの、グラッド」

「あちらに庭師の方達がいます。」

耳元で囁かれて、そっと視線を動かす。庭師のおじさん達が植木の向こう側で作業している。

「それならそうと、言ってくれればいいのに」

「口づけてから気づいたのですみません」

「なら、いいです。でも、どうしますか?いちゃいちゃします?」

「貴女の可愛い姿を見せたくないので、お話しだけにしましょう。親しげにみえるように手を握り合いましょうか」

小声で話し合い、手を握って話をすることになった。

クラリスの記憶にないことを聞いてみたくて、今更ながら

「グラッドの趣味ってなんですか?」

と尋ねる。

「趣味ですか、鉱石鉱物の観察と術式の魔法化ですね。」

「術式の魔法化?ミレニア様の趣味とは違うのですか?」

「養母上のは構築、私がしているのは、術式を思い浮かべて魔法を使うことです。反射的に使用する魔法は威力が上がり難い傾向にあります。それを無くせないかと思って」

想像することで魔法は効果を上げる。不意打ちだとそれに意識が削がられて簡易な魔力弾、魔力壁になりがちだ。

でも術式は想像が要らない分強力な魔術行使が可能。

「なるほど。効果のほどは如何ですか?」

「複雑な術式以外なら非常に有効です。」

「いいなぁ、グラッドなら火属性や水属性の強力なカウンターを狙えますね。」

「属性特化じゃなくても威力指定の術式もあるのでそれを記憶するといいですよ」

「ありがとうございます。」

勉強になりますと言いかけて、色気のない話になっていることに気づいた。かと言って色気のある話が何かはわからないのだが。

「鉱石鉱物の観察って、あの金属性の魔法を使うんですのよね?どんな反応があるんですか?」

「ええ、あの魔法で鉱石鉱物を見ると淡く光ってみえます。光り方と色で、種類がわかります。あと魔道具に使える石かどうかも判断できます。鉱山夫の皆さんが使う魔法の一つなんですよ」

鉱山夫が使う、あ、そうか。

「ご実家のフォッグは鉱山の麓にあるんでしたよね。いいなぁ。山のない地域で生まれ育ったので、憧れがあるんです」

「リオさんは鉱山夫については、どう思われますか?」

「?命懸けの仕事に従事してる凄い方達だと思ってますけど」

どういう類の意図があるのかわからなかったが、正直に答える。

「そうですか、良かった」

はにかんだ笑顔に胸が高鳴った。抱きしめたい衝動に駆られたが、必死に抑える。


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