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不運な召喚の顛末  作者:
第一章
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家族に報告というイベント

「つか、なんでグラッドがいるんだよ」

翔が開口一番悪態をついた。千紗がその腹に間髪入れずに拳を叩き込む。

「よ!理央。通訳は要らないので存分に話していいから」

千加が鏡に映る。

「グラッド様、お久しぶりです。今日は、新たに一人家族が増えたので紹介しますね。千紗、私の姉で理央の兄貴とこのたび結婚しました。理央の義姉になります」

「初めまして、千紗です。理央ちゃん、見えてる?」

手を振り笑う千紗に手を振り返す。

「千紗さん、おめでとうございます。」

「ありがとう。」

「理央。グラッド君も久しぶり。」

要が中央、その隣に聡史、奥に千紗と翔、千加が座る。

「お久しぶりです」

グラッドが会釈する。

「母さん、久しぶり。今日は、色々報告があって」

「うん」

王都でミランダと二人で暮らしたり、魔法省で働いたり、たくさん話したいことが次々でてくる。

「私、初めて働いたの。あと、冒険者ギルドで冒険者登録して依頼を受けたりして。」

「冒険者ギルド、異世界だねぇ」

要は楽しそうに笑う。それとは正反対に聡史は心配そうな顔をしている。

「危険じゃないのかい?」

「安全とは言えないけど、危険を回避する手段を覚えるために必要だし、楽しいよ」

「そうなのかい?」

「はい、リオ様には何があっても一人で対応できるよう仕込んでいます。」

ミランダの声に、

「ミランダさんが教えてるの?!」

聡史が驚く。その後ろで翔と千紗も驚いている。

「ミランダは凄いんだよ。とても強いし、ギルドでも有名人だし」

「理央はミランダさんを大分信頼しているんだね」

「うん、ミランダはこの世界にきてからずっとお世話になってるから」

「うん。理央、さっき働いたって言ったけどどんな仕事をしてるの?」

「魔法省ってところで、転移者、えっと地球からこっちの世界にきちゃった人達のことなんだけど、その人達を保護してこの世界の言葉や文化を教えたり、この世界で自立できるように支援する仕事。」

「大切な仕事だね。しっかりやりなさい」

要の真剣な表情に背筋が伸びる。

「はい。」

「ほら、重大発表はこれじゃないでしょ?」

ニヤリと笑う。

さっきまでの真面目さはどこへいったのか。

「う、あ、あの。えっと。」

言葉に詰まった私に、母さんの目が厳しく光る。

「理央。覚悟が決まってないなら」

低い声で名前を呼ばれる。怒られると思い、反射的に

「グラッドと婚約しました!」

報告した。

聡史は見るからに落ち込み、翔を千紗が押さえている。

「グラッド君、君は何故理央がいいのかな?」

要の視線がグラッドを向く。

「好意以外の要素があるよね?」

想定外の質問だったようでグラッドが驚いている。

「好き以外の理由ということですか」

「うん。そう。」

「リオさんの希望を叶える為なら領主一族になるほうがいいということもあります。後ろ盾として彼女の身を守るため。召喚者は様々な危険が付き纏います。それらから守るには婚約が最良でした」

「それは理央も納得してるの?」

「うん。してる。むしろ私のほうから婚約を希望したの」

「そっか。グラッド君、理央のこと宜しくお願いします。」

要は深く頭を下げる。その横で聡史が泣き出した。

「うぅ」

「ちょっと父さん、泣かないでよ」

「理央、無理無理。泣かせといて。で、グラッド君。理央の何処が好きなの?」

「母さん!そんなの聞くな!」

翔が遮る。

「色々ありますが、可愛らしい所です。」

「無表情だよ?」

「ふと見せる表情がとても可愛らしいです」

「なるほど、グラッド君。君、分かってるね」

恥ずかしい。そして場がカオスだ。

父は泣き、兄は荒れ狂ってる。母は楽しそうだ。

二人が私の話で盛り上がっている。

内容が私の好きな所で、泣きながら父さんは頷いているし、兄貴はグラッドを睨み舌打ちしながらも分かってんじゃねぇかと呟く。

複雑な気持ちだ。

「よし、楽しい話を聞けたな。千紗ちゃん、こっちきて」

要は千紗を中央の席に座らせると表情を変えた。

「理央、分かってるね?」

「分かってる。」

聡史も後ろの席へ移動し、その席には千加が座る。

私はグラッドの手を握っている力を強めた。

「千紗さん、巻き込んでごめんなさい。」

千紗が笑いながら

「理央ちゃんが謝ることじゃないよ」

否定する。

「千加がこの世界に来るのは、私がいるからです。千紗さんから千加を奪ってごめんなさい」

「!」

千紗の目にみるみるうちに涙が溜まっていく。

「ち、ちがうよ。り、理央ちゃんのおかげで千加は楽しくいれたの。りおちゃんの」

涙が溢れる。嗚咽で言葉を続けられなくなった。

「それでも、千紗さんから引き離すことになったことには違いないです。だから千加の事は私が守ります。心配は減らないと思いますが」

翔が千紗にティッシュを、差し出した。

ずずっと鼻をすする千紗に再び笑顔が戻る。

「りおちゃんは、優しすぎだよ。私は千加の心配はしてないし、理央ちゃんは自分のことしっかり考えなくちゃだよ」

「千紗さん」

「姉貴は理央のこと妹だと思ってる節があるから」

「千加は理央ちゃんに迷惑かけちゃ駄目なんだからね」

「はいはい、わかってますよ。」

姉妹のやり取りに少しだけ気が楽になる。

「グラッド様。理央がサイス領に戻っているタイミングでそちらに行きたいと考えています。連絡は毎日こまめにとりますので」

「わかりました。チカさんのことは養父にも話を通しておきます。」

「依代も準備できてるから」

「ありがとう。要さん、私の話は終わりました。何かあれば」

千加が後ろを振り向き声をかけると

「グラッド!理央を泣かせたらただじゃすまねぇからな!」

翔が指さし怒鳴る。要がすぐさま腕を捻り技をかけて黙らせる。

「カケルさん。約束します。」

グラッドの言葉に兄貴が

「ちっ」

舌打ちした。

「兄貴。」

流石にイラッとした。ジロリと睨む。

「な、なんだ」

「怒るよ」

翔はバツの悪そうな顔をする。

「……すまない」

「グラッド君ごめんね。はぁ本当うちの家族は締まらないなぁ」

「婚約の発表はこれからなんでしょ?ドレス姿を見たいからまた連絡しなさい」

「うん。母さん、父さんありがとう。兄貴も千紗さんのこと頼むよ」

「そこは分かってる」

動きを止められた姿のままの翔をそのままに話し合いは終わった。

鏡をミランダに戻してもらう。部屋に二人きりになる。

「はあ。……グラッドありがとうございました。そして兄がすみません」

暴走するだろうと分かってはいたが。

「いえ、素敵なお兄さんですね」

「気を遣わなくていいですよ」

何処をみて素敵なのだろうか。

「本心ですよ」

あの兄貴の何処にグラッドに刺さる部分があったのだろうか。

「調子に乗るから言わない方がいいです。あーでもそっか、千紗さんと結婚したのか。良かったぁ。」

最後は独り言のようになってしまった。

「あ、ごめんなさい。グラッド、お茶お代わりしますか?ミランダが淹れたお茶がまだ残ってますよ」

「リオさん」

ポットに伸ばした手を止める。

「う、なんでしょうか」

グラッドの方を向くと

「好きですよ」

急な告白に照れが大量に湧く。

「知ってます」

ちょっとだけ素っ気ない言い方になってしまった。

「大切にします」

優しい笑顔に心臓が高鳴る。

「私も大切にします。照れますね……グラッド」

「駄目です」

いちゃいちゃしましょうと言おうとしたのがバレて先手を打たれた。

「二人きりなのに」

「だからです」

ミランダが戻ってくるまでお説教された。


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