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不運な召喚の顛末  作者:
第一章
112/605

貴族屋敷2

それから話題は魔法省での生活についての話になる。

転移者についての資料を読み、学習指導と相談が主な仕事内容だと話すと、

「今魔法省にいる人達の次に保護されてくる転移者からが一番この仕事の大変さを知れるんだろうね」

フレッドが少し難しそうな顔をした。

「はい。それは私も感じています。初めて接した転移者が彼等でよかったです。」

本当にその通りだと思う。レイカとアラン、クリスじゃなかったらもっと大変だったと思う。

私の気持ちもこんなに落ち着いていないかもしれない。

でも事業として持ち込むには難しい案件だと感じられては駄目だ。何か、フレッド様の気を引けるものは、

「あ、あのフレッド様、実はもうそろそろ転移者についての発表があります。」

意を決して言葉にする。

「それは、サイス領にとっても有益な発表ということかな?」

フレッドの目が楽しそうに細められる。

「はい。王都、コランダム、サイスにとって有益な情報です。王国全土での転移者発見数のゼロが続くと一年の後に魔障が発生します。場所までは特定できませんが」

「転移者と魔障の関係についての発表か。なるほど、リオさんが引きが強いな」

「引き、ですか?」

初めて言われた。

「ああ、君が転移者支援をサイス領で発展させようと頑張る追い風になる。転移者保護、支援により大きな利点が生まれる。領で転移者の発見数を管理できるから発見されない時期が続くと魔障の発生に備えるよう注意喚起できるわけだ。何せサイス領は発見者数が多いからな。魔法省から齎される情報を鵜呑みにしなくてもいい。情報の裏を取る手間が省ける。保護支援をひと繋がりにおこなうから人材を確保教育できる。」

フレッドが指折り数える。

「婚姻にも良い影響を与えるだろうし」

ミレニアがフレッドを睨んだ。

「それは考えたことなかったですが、いいですね。反対の声が無くなることはないはずなので、小さくなれば」

「結構冷静だね」

驚くフレッドとミレニアに堂々と宣言する。

「悪意は無くならないです。でも、そんなのに負けないって考えられるくらいにグラッドが好きなので。大丈夫です」

「まあ」

ミレニアが思わず声をあげた。

私は隣りに座るグラッドと目を合わせて伝える。

「グラッド、こんな私ですが、結婚していただけますか?グラッドと一緒にサイス領を守っていきたいです」

瞬く間に赤面するグラッドの手を握った。

『プロポーズははっきり堂々としないとな!』

父さん曰く、どこの王子様か?と思うほどカッコよくプロポーズされたそうだ。その話を聞いた日、母さんに事の真偽を尋ねるとそう返ってきた。

「リオさんは、本当に面白いね。」

フレッドは肩を震わせているし、ミレニアは口を押さえているが、多分笑ってる。

グラッドは固まったまま、私を見てる。

告白だけで、プロポーズはしてなかったと思い、昨夜覚悟を決めた。恥ずかしさは、多分後でやってくる。

「リオさんは、ズルい」

?既視感が。

「嫌でしたか?」

「いえ。そう言っていただけて嬉しいです。宜しくお願いします。」

グラッドが目を逸らした。耳まで真っ赤だ。

これは、後で倍になって返ってくるやつだな。やり過ぎたかもしれない。いや、後悔はしてないけど。

「旦那様、リオ様のお部屋の準備が整いました。」

侍従長の言葉に

「わかった。リオさん、部屋を案内しよう。グラッドと親睦を深めるといい。」

フレッドがまだ笑ったまま言う。

「ありがとうございます。グラッド、行きましょう」

グラッドの手を握ったまま、退室する。

扉の外で待機していたミランダは、私とグラッドを一瞥して何も見てないように部屋まで案内する。

部屋は落ち着いた雰囲気の内装だった。

「リオ様、何かあればお呼び下さい」

そう言うとミランダは側務めの控えスペースに移動した。

「グラッド、まだ混乱してます?ほら、座って下さい」

二人掛けのソファにグラッドを座らせる。その横に座り、また手を握った。身体を寄せる。

「リオさん。近いです」

「いつもと逆ですね。私の気持ちがわかりました?」

「はい。恥ずかしい」

口元を隠し目を伏せるグラッド。

「ふふふ、グラッド可愛いです。」

「今日はどうしたんですか?普段なら恥ずかしいって言いそうなこと言ってましたよ」

「昨日の夜、告白はしたけどプロポーズはしてないことに気づいてちゃんと言おうと決心したので。恥ずかしさは今は無いです。夜は眠れないかもですけど」

昨日も散々恥ずかしいってのたうちまわったので不思議と落ち着いている。

「私と一緒に歩いてくれるのが嬉しいです。」

「抱き締めていいですか?」

「駄目です」

「ここは、良いですって言いましょうよ」

「絶対冷静になれないので、駄目です」

「いざとなったらミランダが止めに入りますから、大丈夫ですよ」

駄目を覆さないままのグラッドに抱きつく。

あぁ、やっぱり

「落ち着くなぁ」

口にでてた。

「リオさん。」

頬を手をあてられ、上を向く。あ、やっぱり美形だな。と思う間に口づけられた。

抱き締められ、何度も口づけを交わす。

「グラッドに抱き締められると凄く安心します。ドキドキもするんですけど、グラッドも私と同じですか?心臓の音凄いですね」

胸に耳をあてると心臓の音が聞こえる。頭上から控えめな深呼吸が聞こえた。

「グラッド」

グラッドは明後日の方向を向いている。

「駄目です」

「まだ何も言ってませんよ?」

「あまり煽らないで下さい」

「もっといちゃいちゃしたいは煽り?」

「自制心が焼き切れそう」

ちゃんと目を合わせたグラッドに口づけられて、そのままソファに押し倒された。唇、頬、首筋に噛むような口づけをされる。グラッドの手が腰を撫でた。

もっと触ってほしくて、手を伸ばす。グラッドに抱きつき口づける。

「もっと触ります?」

耳元で囁く。

「駄目」

「駄目ですか。私はグラッドに触れて欲しいですけど」

グラッドが観念したように私の肩に顔を埋めて呟く。

「今日は駄目です」

「わかりました。残念ですが仕方ありません。」

身体を起こし、乱れた髪を整える。

ミランダを呼んでお茶の準備を依頼した。

「リオさんが積極的で戸惑ってます」

「嫌でしたか?」

「いえ、そうではありませんが。翻弄されてます」

「愛情表現はちゃんとしようって思ったので。あと、そういうものだと思っていたというか、クラリス様の記憶的にもそうだし、我が家もそうというか」

「お父様が愛情表現が豊かなのですか?以前お会いした時にはそうは感じませんでしたが」

「あ、違いますよ。母です」

「???」

「愛情表現豊かなのは母のほうです。よく花を買ってきては父に贈ったり、二人で外出もよくあります。幼い頃私も行きたいって言うと兄が野暮なことはするなと言われました。子どもが子どもに言う台詞ではないですよね。結局一緒に出かけたんですけど」

「やっぱり面白いです。」

「グラッドは実家と連絡を取ったりしてますか?」

「公には連絡はしませんが、たまにミランダやセシルが書類と一緒に私的な手紙を届けてくれます。リオさんのことも手紙に書いて連絡しました。」

「なんて書いたんですか?」

「内緒です」

大分グラッドの調子が戻ってきた、というか私がいつもの感じに戻ったのか。微笑みの威力が増している。

「兄も喜んでいたそうです。中々会う機会がありませんから、婚約パーティーの時に紹介させて下さい」

「はい。」

ミランダが鏡を持ってきた。

「リオ様、そろそろチカ様との約束の時間でございます」

「では、私はこの辺で失礼します……?リオさん?」

席を立とうとするグラッドの腕を掴む。

「もし、よかったら。一緒に、会いませんか?」

「リオさん?」

緊張し始めた私に代わりミランダが説明する。

「リオ様はこれから家族の皆様に報告でお会いになる予定です」

イーゼルに鏡を立てかけて設置する。

「いいんですか?私が一緒で。」

グラッドはソファに座り直す。

「お願いします。緊張で泣きそう」

「さっきまであんなに」

「いちゃいちゃしたかったのは、本当です。けど緊張を紛らわす側面があったのは事実です」

「紛らわし方」

「う、怒りましたか?すみません」

「いえ、いいですよ。私もお会いしたいと思っていたので」

グラッドは私の手を握り、甲に口づける。

照れで緊張が少し和らいだ気がした。

お茶を呑んで、呼吸を整えて

『千加』

鏡に声をかける。

そこには千加と家族の姿があった。


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