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不運な召喚の顛末  作者:
第一章
105/605

スーパー侍女ミランダ4

話を終え、管理棟に戻る。

召喚課の部屋の前に知らない女性がいた。

騎士の鎧を身につけているので騎士課の職員なのは目星がつく。

「ユニシア、ここで何をしている」

ニコルの問いかけに、ユニシアと呼ばれた女性はふんと鼻で笑う。

「見つけたわ、昨日魔獣退治を手伝ったのって貴女ね?」

ニコルの質問を無視して、ミランダを指さした。

「ニコル、あれはなんですか?失礼では?」

「ごめん。馬鹿なんだ。本当ごめん」

ミランダとニコルの会話は耳に入っていないようで

「貴女の活躍があったから、対応できたと隊長達が口を揃えて言っていたわ。だから、私と勝負しなさい!」

???

意味がわからない。何がどうなったら彼女とミランダが勝負しなくてはいけないのだろうか?

「ニコル、この人なんとかして」

レイカが厳しい顔で言う。アランはクリスを抱っこしてユニシアを警戒している。

「さっきからオスカーを出せとか、ミランダさんにあわせろとかしつこくて、困ってるの」

人の言う事何一つ聞かないんだからと怒る。

「何故私が平民の言うことを聞かないといけないのかしら?理解できませんわ」

ユニシアの物言いに苛つく。

「ユニシア、仕事に戻れ。局長に報告するが、いいな?!」

ニコルが語気を強める。が、彼女には効かなかった。

勝負しろと騒がしい。

「わかりました、外に出て下さい」

ミランダがそういうと、ユニシアは目を輝かせた。

管理棟の外へ出る。二人が少し距離をとり向かい合った。

入り口の所でレイカやアランも様子を見守る。

「どちらかが膝をついたら、終了で構いませんか?」

「いいわ!」

「では、……はじめ」

ミランダが開始を宣言すると同時にユニシアが剣を抜き、駆け出した。ミランダ目掛けて剣をふるう。

がそのまま、地面に盛大に転がされる。

避けて、足をかけただけではあるが、なんでもないような自然な動きだったため、ユニシア自身も何が起きたのか理解出来ていない様だった。

「これで終わりですね。さようなら」

ミランダが棟内に戻ろうと踵を返すと、

「もう一度!!」

しつこく食い下がる。

「断ります、さようなら」

「な!なんですって!」

ユニシアが気色ばみ叫ぶ。ミランダはゆっくり振り返る。

「なんですってはこちらの台詞です。いきなり勝負を挑んできたかと思えば雑魚で、更には膝をつけば終了という言葉で引き受けたかと思えばそれを反故にする。本当に騎士の方ですか?ジャック様に進言差し上げたほうがよろしいですね。騎士に値しない者が紛れていると」

無表情で淡々と話すミランダの言葉に、ユニシアの顔から色が抜けていく。

「戻りましょうか、皆さんお騒がせしました」

入り口で見守っていた私たちにミランダが声をかける。

「もう一度!勝負しなさい!」

それを無視して、ミランダがドアを閉めた。

「ミランダさんって強いのね」

「恐縮です。」

「ミランダ凄いの」

「クリスさんの可愛らしさには敵いませんよ」

「えへへ」

レイカとクリスが興味津々で話しかける。二人が警戒を解いている。それにつられてアランも態度を軟化させた。

「ミランダさんも大概人たらしだと思うのは僕だけですか?」

「ミランダも、という助詞の使い方が非常に引っかかりますが概ね賛同します。」

四人の後ろを歩きながら話す。

その背後で、ユニシアが勢いよくドアを開け放った。

「こんなの認められるわけないじゃない!騎士課の新人王である私が負けるなんてあり得ないわ!」

「新人王ってなんです?」

「毎年新人が総当たりで戦う大会があるんです。その優勝者に与えられる称号ですよ」

ニコルが明らかに呆れた声で言う。

「はぁ、実力も見極められない愚か者だと報告しておきますね……リオ様、対戦してみます?自身の実力を図る物差しにはなるかと」

ミランダが面倒臭そうに私に水を向ける。

「私がですか?」

「ニコルでもいいですけど」

「新人冒険者のリオさんが対戦すれば良いよ」

「ミランダ、ニコル先輩」

二人の顔には面倒臭いと書いてあった。

「わかりました。ちゃんと言質取ってから対戦します。はぁ、変な事になったなぁ」

私は入り口に戻ると、ユニシアに

「一度きりの勝負ならお受けします。私が」

と告げる。

「はぁ?」

「やめてもいいです、別に。実力不足を認めないのも、しつこく叫んで周囲に恥を曝しているのも貴女だけなので私達にとってはなんの得もありません。ただただうるさいから、私が勝負してあげてもいいですよと提案しているだけなので」

「えげつない。傷口に塩を塗っていくスタイル」

戻ってきて見物しているレイカの声が聞こえてきた。

「流石リオさん」

「ちょっと外野、うるさいですよ」

アランまで賛同するとか、酷くないですか?と和気藹々と盛り上がる私達に

「あんた、なんなの?私に勝てるとでも思ってるの?」

ユニシアが怒りを露わにする。

「さぁ。勝負するんですか?しないんですか?決めて下さい。しないんなら、さっさと帰って下さいね」

「するわ!」

「わかりました。勝負は一度きり。膝をついた方が負け。武器は、魔力で作っていいですか?魔法の使用は?」

「魔力武器は構わない。魔法も小規模なら構わないわ」

「では、それで。ミランダ、ニコル先輩は審判してくださいよ」

ユニシアと少し距離をとる。呼吸を整える。

ニコルが様子を見ながら、片手を上げる。

「はじめ!」

片手を振り下ろし、勝負を開始した。

ユニシアは先程の失敗を警戒して駆け出してこなかった。私を警戒している。

その隙に小規模に捕縛陣を張り巡らせ、属性特化魔法をほどほどにかける。捕縛陣の気配を薄める。

魔力鞭を手にし、中距離から攻撃を仕掛けた。

ユニシアは剣をふるい、鞭を弾く。私との距離を縮めようと、一歩踏み出した先にあるのは、捕縛陣だ。

ユニシアが足元に注意を向けないように攻撃を早めたのは正解だったようだ。

「な、なに?!これ、動けない」

彼女は闇属性を持っていないようでその場から動けなくなってしまった。

そこに魔力鞭で執拗に攻撃をかける。速さを徐々にあげ、当たらないけど威力は最小の魔力弾を打ち込む。

運良く、足にあたりバランスを崩した。魔力鞭の攻撃を凌げなくなったユニシアは膝をついた。

「終了。そこまで」

ニコルの宣言で魔法を解除する。

膝をつき茫然としているユニシアをその場に残して、今度こそ部屋に戻る。

「リオ様、お疲れ様でした」

「ミランダはやっぱり凄いです。私は魔法無しで彼女に勝てる未来が思い浮かばなかったのに」

「勝てばいいので、問題ありませんよ」

「ミランダ、気になった事があるのですけど、」

「どうされましたか?」

「さっきのユニシアさん、魔力壁を張らなかったのですが、何故かなって」

「騎士や冒険者は服に防御力を上げる術式を仕込んでいるので、張らない方が多いです。魔力壁を使うのは後ろに誰かを庇う時、と言っていた方もいました」

「なら、私に教えたのは」

「基本ですから。そこを疎かには出来ません。そして何より直接攻撃を受けても心が折れずに立ち向かえるか、分かりませんでしたから。痛みはなくとも衝撃は伝わります。鍛えていないとそれに打ち勝ち次の行動に移れません」

「そうでしたか。ありがとうございます」

「いいえ」

「リオさん、ミランダさん。お茶飲むか?」

「アランさん。それなら」

ミランダはアランに教わりながら緑茶を淹れ始めた。

なんだろう、溶け込み方が半端ない。

「リオ、抱っこ」

クリスがローブを引っ張る。今朝と変わらず、ほほが赤い。抱き上げる。

「クリス、具合は悪くないんですか?」

「大丈夫よ」

「ほっぺたが真っ赤です。」

「大丈夫!!」

急に拗ねたような声をあげてクリスが私にしがみつく。顔が見えなくなってしまった。

そんなクリスの様子にどうしたらいいのかわからなくなる。

助けを求めるようにアランやレイカをみた。

「なんで僕の方は見ないのかな?」

というニコルの声は無視する。

「リオそのまま、あやしといて」

レイカに丸投げされた。こんな事は初めてだ。

子どもをあやしたことなんてない。取り敢えず、背中をさすってみる。

「うぅ、やーぁ」

嫌々と首を振るクリスを抱っこし続ける。

本格的に途方に暮れはじめた頃に、

「騒がしかったけど、何かあった?」

オスカーが部屋にやってきた。

朝より顔色は良くなっている。

「ごめんなさい、おこしちゃったかしら。騎士課の人がきてたの。ニコルが追い返したから問題ないわ」

レイカの言葉に、そう?とニコルに視線を向ける。

「はい、オスカー先輩は休んでて下さい。」

「わかった。でも。その前に、クリス」

オスカーはクリスに近づくと、

「クリス。クリスのお絵かき帳を僕に貸してほしいんだけど、いいかな?」

そう尋ねる。

お絵描き帳?何に使うんだろう。

「いいよ、リオ下ろして」

「はい」

クリスは奥の部屋からお絵描き帳とクレヨンを持ってきた。機嫌は悪くない。

「はい、オスカー。どうぞ」

「ありがとうクリス。一緒にどうです?描いてほしいのがあるんですけどいいですか?」

「?いいよ」

「じゃあ、リオさん机貸して下さいね」

「はい、どうぞ」

私の机にお絵描き帳とクレヨンを置き、椅子にオスカーが座りその膝の上にクリスが乗る。

「昨日は大変だったね、クリス」

「うん」

「僕も凄くドキドキした。怖かった。確か、こんな風にドーンって音がして」

クレヨンを手に紙にドーンと大きく描く。

「クリスも描いて」

クリスの手にクレヨンを握らせる。

「揺れたね。グラグラー、何がおこってるのか分からなくて不安だったね。怖いよー」

昨日の自分の気持ちとその時の様子を紙に描いていく。クリスもオスカーと一緒なって、不安や恐怖を絵や文字にしていく。

たくさん描いてぐちゃぐちゃになった紙をオスカーはクリスに持たせて

「勢いよく破いて!」

破かせる。

「ビリビリ、そうもっと破いて、クリス。うん上手だよ」

破いていたクリスの様子が少し変化した。すっきりした表情をしている。

「どう?クリス。怖いのどっか行った?」

「うん。ここら辺が気持ち悪くない」

胸の辺りを触るクリスが驚いた顔で言う。

「そう、良かった。僕が怖くなったらまた一緒に描いてくれる?」

「オスカーが怖いなら、しかたないからお絵描きしてもいいよ」

「ありがとうクリス。じゃあ僕はまた寝てくるね」

おやすみと手を振るオスカーにクリスが元気よく手を振りかえしている。


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