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不運な召喚の顛末  作者:
第一章
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始まり

魔法大国 ソルシエール

王都にある貴族の子女達が通う学園のとある一室に、学生と思しき少年少女が集まっていた。

皆、一様に床に描かれた円陣を見つめている。その円陣には、文字の様な模様が書かれていた。

「では、始めましょう」

1人の少年が口を開く。狂気を孕んだ笑い声に、周りもつられて笑う。

あの忌々しい女に目にもの見せてあげましょう

周囲の声に、少年は紫の瞳を向ける。

その瞳は何も映していなかった。




午後の講義が始まる頃。クラリス・サイスは寮の中庭で、色とりどりに咲き誇る花壇の花々を眺めていた。

「クラリス、そろそろ次の授業が始まりますよ」

後ろから聞こえてきた義弟、グラッド・サイスの声に、彼女が振り向いたその瞬間。地面に突如、眩く光り輝く円陣が浮かび上がった。破裂音が、数度鳴り響き、光がクラリスを飲み込む。一層円陣の光が強まり、目を開けていられないほどになる。

「クラリス!」

光が収まり、ようやく目を開けられるようになった。グラッドの目に映ったのは倒れたクラリスの姿だった。

グラッドはすぐさまクラリスに駆け寄りながら、

「ミランダ!」

クラリス付きの侍女を呼ぶ。

音もなく黒いもやが連なりクラリスの周りを飛ぶ。そして、消える。それを確認すると、グラッドはクラリスを抱きかかえこの場を後にした。


「グラッド様、クラリス様は…」

ミランダの問いかけに、グラッドは

「…わからない。まずは、部屋へ戻ろう。この状態を誰かに見られるわけにはいかない。」

頭を振り、歩く速度をあげた。

グラッドは、辺りの様子をうかがいながら進む。

寮の敷地内とはいえ、部屋までは距離があった。

「グラッド様、私が先行します。魔法の威力はあげていますが、お気をつけ下さい」

グラッドは無表情でそう言うミランダを伺う。いつもより表情を隠せていない。

「姿を隠す魔法、か。だが、クラリスには効き目が薄いんじゃないか?」

ミランダが焦るのは、わかる。魔法のかかり具合は属性の相性がある。この魔法とクラリスの相性が悪すぎる。

「かけないよりは、ましだと思います。」

「…わかった。」

誰とも出会わないことを願うしかないのか、グラッドは心の中でため息をついた。


「グラッド様、誰かきます。」

寮の部屋まで、あと僅かの所でミランダが止まる。

「私の影に隠れてください」

グラッドはミランダの後ろでしゃがむと、じっと息を殺す。近づいてきたのは

「あれ?ミランダじゃないですか。ちょうど良かった。」

少しのんびりした聞き覚えのある男性の声だった。

「セシル、どうかしましたか?」

「いえ、今週の報告書を渡しにきたんですよ。すみません、遅くなってしまって」

ミランダはセシルから報告書の束を受け取る。

「構いません。グラッド様の侍従は仕事量が多いと伺っていますから。」

「あはは、クラリス様付きは気苦労が多くて大変そうですよね」

「セシル、私に喧嘩を売っているのですか?」

「いいえ、ミランダがいつもより元気がない気がしたので、からかってみました。」

「冗談に聞こえません。ですが、お心遣いありがとうございます。」

「それでは失礼します。」

セシルが来た道を戻っていくのを確認しながら、グラッドは立ち上がる。すると、セシルが不意に振り返った。グラッドとミランダの二人に緊張が走る。

が、何事もなかったように遠ざかっていく。

「…では、行きましょう。グラッド様」

「あぁ」

それ以降は誰にも出会うことはなく、クラリスの部屋に入り二人はほっと胸を撫で下ろした。

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