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ファネール村に着いたのは、夜だった。

宿屋の部屋に入ると、パスチーズが心配顔でシャンテにいった。

「お嬢様。昨晩はどうしていらしたんですか?!」

しかし、シャンテは彼を押しのけると、

「パスチーズ。お願い。今はなんにもいわずに寝かせて」

と、服も脱がずにベッドに倒れ込んで、すぐに寝息をたてはじめた。

パスチーズは、あきれて肩をすくめたが、そのあと、彼は、シャンテを起こさないように注意しながら、彼女の服を脱がせて、毛布をかけた。

シャンテは、朝までぐっすりと眠った。


朝になると、シャンテは意気揚々と、治安官事務所に向かった。

檻の中からルフィンを出すと、事務机の前に座らせた。

そばに、ラズロも立っていた。

ルフィンの正面に、シャンテは座った。

「観念しなさい。あなたが、あの袋に入れていたものが、わかったわよ」

ルフィンは、気のなさそうな様子で、彼女から目をそらしていた。

「これでしょ」

と、持っていた鞄の中から、あのロスコーで取ってきた緑色の石を机の上に置いた。

(どう? ごらんなさい)

シャンテは、勝ち誇った顔で、ルフィンを見た。

(グウの音も出ないでしょう!)

彼は、ちらと石のほうに目をやったが、すぐにまた目をそらせた。

「・・・・・・」

すこしも驚いた様子はなかった。

「どうなの?」

シャンテは、いらいらしながら言った。

「さあね・・・」

ルフィンは、目をそらせたまま言った。

「わかってるんだから!! これだって事は!! はやく白状しなさい!!」

シャンテは、ドンと机を叩いた。

ルフィンも、負けてはいなかった。

「もしそうだったら、なんだよ!! こいつを運んだからって、いったいなんだってんだよ!!」

と、シャンテを睨んだ。

「売った相手は、だれ?」

ルフィンは、また目をそらせた。

シャンテは、彼を睨んだ。

「チャルレーロでしょう?!」

「・・・・・・」

彼は答えなかった。

シャンテと目を合わせず、そっぽを向いていた。

「もうすこし、ここに入っていて、もらわなきゃならないみたいね」

「・・・・・・」

そして、治安官にいった。

「ラズロ、この子を、留置場に戻して」


シャンテは、治安官事務所を出ると、その足で、チャルレーロの屋敷に向かった。

応接室で、彼はシャンテに会った。

「あんた、まだこの村にいたのか」

シャンテを見ると、チャルレーロは、こういった。

「もう、ここには来ないでくれと、いったはずだがね」

と、あの不機嫌そうな顔で続けた。

「じつは、あなたに、見ていただきたいものがありましてね」

と、シャンテは、鞄の中に手を入れた。

チャルレーロは、不審そうに、彼女の鞄を見た。

シャンテの目は、チャルレーロの表情を見逃すまいとしていた。

「これのことですよ」

そして、鞄の中から、あの石を出した。

チャルレーロは、じっと石を見つめた。

それから、シャンテの顔を見るといった。

「この石がなんだ?」

「しらばっくれても、ダメですよ。わかっているんですから」

チャルレーロは、不機嫌そうにいった。

「なにをだ。あんたには、わかってるのかもしれんが、ワシには、さっぱりわからん。ちゃんと説明してくれ」

チャルレーロは、演技しているようには見えなかった。

シャンテは、しどろもどろになって答えた。

「いや、あなたの畑に、この石と同じ反応が、魔法検査器で」

「だから、なんだ?」

チャルレーロは、怒っていた。

シャンテは、あせった。

「いや、それは、わたしにも」

チャルレーロは、不機嫌な顔でシャンテを見つめていった。

「いったいなんの冗談だ?」

「・・・・・・」

シャンテには、言うべき言葉が、見つからなかった。

チャルレーロは、声を荒げて、いった。

「あんたの冗談に、つきあうつもりはない!! 帰ってくれ!!」

シャンテは、逃げるようにしてチャルレーロの屋敷を出た。

宿屋への帰り道、彼女は考えた。

(この石のことを、チャルレーロは知らないのね。そうだとしたら、いったい誰が彼の畑に何をしたの?)

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