18
馬車の窓から、シャンテは、ラズロにいった。
「すまないわね。今日一日ですむと思うわ」
「捜査官、でも、どこに行かれるんですか?」
その質問に、シャンテは答えずに、こういった。
「ちょっと、調べたいことがあるの。すぐに帰ってくるから」
不満そうだったが、ラズロは答えた。
「わかりました」
そんなラズロを見て、シャンテはからかうように、こういった。
「それとも、帰ってこないほうがいいかしら?」
「・・・・・・」
ラズロは、黙ってシャンテを睨んだ。
「ごめんなさい。ついでで悪いけど、昨日のことも謝らせて。すこし言い過ぎたわ。でも、あなたも・・・いえ、なんでもないわ。仲良くやりましょう。私たち、パートナーなんですものね」
「ええ」
ラズロは、微笑んだ。
シャンテも、微笑みかえした。
「じゃあ、行ってくるわ。留守中のこと、よろしくね。パスチーズも、頼んだわよ」
老僕もこの村に残るようにと、シャンテが今朝、言い含めたのだ。
彼は、涙をながしていた。
「行って」
シャンテが、御者にそういうと、馬車は走り出した。
ベルナーレの検閲所に向けて。
検閲所は、草も生えない高山の中腹にあった。
シャンテが、自分の身分証明書を見せると、警備兵たちは顔を見合わせた。
そのうちの1人が、シャンテに聞いた。
「魔法捜査官が、ここになんの御用で、いらっしゃったんですか?」
彼女は、懐からルフィンの査証を見せていった。
「この子のこと、覚えてないかしら? そこに、書いてるように、12才の男の子なんだけど」
警備兵たちは、査証を見た。
「さあ、ちょっと、わかりませんなあ。3月頃によくここを通ってますねえ。待っててください」といって、部屋の引き出しを何やら言いながら、探っていたが、書類を引っ張り出すと、「ああ、あいつなら、覚えてますよ」と答えた。
「本当に!」
「ええ。口の悪いガキでね」
「そうそう。その子よ」
「ここにも書いてあるように、なんだかやたらと、石を持っててね。それで、覚えてます。こんなものどうするんだって聞いたら、向こうで売るんだとかいってたな。けっこういい値段で売れるんだそうで、わからんもんですよ。たしか、ロスコーで取れるとかいってたな」
シャンテは、そこまで聞くと、天にも昇る気持ちだった。
「ありがとう!!」
その警備兵の手を取って、握手をした。
「いや、どうも…」
なぜか警備兵は、赤くなって答えた。
次の日、警備兵は、ふたたび彼女に会った。
「この石のことでしょう。昨日の話の石は」
そういうと、シャンテは、手に持った緑の石を警備兵に見せた。
「ああ、これです。たしかにこれですよ。ロスコーまで行かれてたんですか」
「ええ」
シャンテは、例の魔法検査器をもって、ロスコーの村を歩いて回り、この石を見つけてきたのだった。
昨夜は、ロスコーへ向かう馬車の中で、眠った。
シャンテは、検閲を済ませると、ファネール村へと馬車を急がせた。
シャンテの目の下には、隈ができていた。
「ありがとう!」
別れ際に、彼女は警備兵たちにそういった。
そんな彼女を見送りながら、警備兵たちはシャンテのことを、
(へんな女だな)と思っていた。




