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「どうして、あんたは毎日毎日ワシを訪ねてくるんだ?」
チャルレーロは、自宅の応接室で、シャンテを前にしていった。
「もう3日目だぞ」
チャルレーロの顔は、あいかわらず不機嫌そうだった。
シャンテは、不満そうに彼に答えた。
「あなたは、事件の被害者ですから、捜査の進展を知りたいだろうと思って、来ているんですが、ご迷惑でしたか?」
「前にもいったが、ワシはもうあの事件のことは忘れたいだけなんだよ。だいだい、あんたは、捜査の進展なんていってるが、なんにも進んでないじゃないか。そんな報告なら来てもらわなくても結構だよ」
チャルレーロのいうとおりだった。シャンテは、畑の土を調べてみたが、魔法検査器にかけると、このあたりの土は、すべて例の反応で、チャルレーロの畑だけに爆発が起こったことを考えると、爆発との関係はなさそうだった。
そこで、シャンテは、チャルレーロが密かに趣味で魔法をやっていて、その実験かなにかで、爆発が起こったのではないか、と考えた。そこで、事件の報告にかこつけて、チャルレーロの家のなかを、魔法検査器をもって、探ってみていたのだった。必要でもないのに、トイレはどこですか、などと訪ねて、彼の邸内をうろうろと歩き回った。
しかし、探知器は、反応しなかった。
(もしなにかしているなら、少しぐらいの反応は出るはずだわ)
そんなシャンテに、チャルレーロは気付きだしていた。
「犯人の心当たりとか、やっぱりありませんか?」
「その質問も何度されても、答えは同じだ。ないものはないよ」
「あなたに恨みをもつ人とか」
「ワシは、まっとうなやり方で、いままでやってきたんだ。恨まれることなんてないよ」
(よくいうわね)
シャンテは、自分で、チャルレーロに恨みをもっていそうな村人を調べてみた。そうすると、村のすべての人が、おそらく大なり小なり彼に恨みをもっているらしいと、わかった。
6年ほど前まで、この村のほとんどの人はチャルレーロの小作人で、そのころのこの村は作物の収穫量も少なく、地政役所の記録では、年に何人もの餓死者がでていた。さらに、この男はかなりあくどい金の稼ぎ方をしているようで、借金や土地に関する裁判記録が地政役所に、山ほどあった。
「なにか思い出したことがあったら、後でもいいですから、いってくださいね」
「ないものを思い出しようもないだろう。とにかく、報告には、もう来なくていいから」
チャルレーロは、その一点張りだった。
(チャルレーロは、魔法を使うようなタイプじゃないわ。実際、彼の家からは、なんの反応も出なかったし・・・。これ以上、彼の家へ行ってもなにも出なさそうね)
シャンテは、宿屋への帰路でこう考えた。




