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「なんてことかしら!!」
爆発事故のあったチャルレーロの畑には、すっかり葉の繁ったキュウリが、植えられて、ゆらゆらと風に揺れていた。
シャンテは、例の魔法検査器を背中に抱えながら、ラズロに、憤懣やる形無しといった調子で、語り始めた。
「魔法による爆発があった場所を、こんなふうにしちゃうなんて! いったい、何を考えてるのよ。だいたい、この村の人たちは、魔法の捜査に非協力的すぎるわ。なんなのよ、まったく」
そして、ラズロを睨みつけた。
「・・・なにかお手伝いしましょうか?」
おずおずと、ラズロはシャンテに聞いた。しかし、彼女は、ぴしゃりと答えた。
「結構よ」
そして、背中の魔法検査器を地面におくと、畑の土を取って、検査にかけてみた。
(あれ? おかしいわね)
検査の反応は、ぼんやりとした光のままで、答えが出てこなかった。
シャンテは、もう一度、土を変えてやってみたが、反応は同じだった。
(壊れているのかしら?)
そこで、シャンテは、自分の持っている小さな魔法玉や、魔法陣を描いた護符を検査器にかけてみた。すると、魔法玉なら魔法玉、護符なら護符と、反応はちゃんと出てきた。
しかし、畑の土をかけると、また検査の反応は、ぼんやりとした光のままだった。
(変ね。こんな反応はじめてだわ。ひょっとすると、これが、爆発の原因かも知れないわ)
そこで、シャンテは、爆発のなかった隣の畑の土を検査器にかけてみた。
しかし、反応はおなじだった。
(では、この反応は爆発とは関係ないのか・・・)
シャンテは、考え込んだ。
「どうしました?」
ラズロが、シャンテに聞いてきた。
「あなた、このあたりの土には、なにか特別なものが含まれてるってきいたことはない?」
「えっ? いや、ないですよ」
「そう」
「なにか?」
「いえ、べつに・・・」
シャンテは、ラズロをまだ信用していなかったので、検査器のことは、言わなかった。
「調べてみる必要があるかも・・・」
それを聞いたラズロは、あわてて、話し出した。
「そ、そういえば、む、村に古くから伝わる伝説なんですが、昔、このあたりには、ド、ドラゴンが住んでいて」
「ドラゴン?!」
驚いたシャンテは、ラズロに聞き返した。
「ええ。そうです。ドラゴンが住んでいて、ですね、辺り一帯を焼き尽くしていたと、聞いています。ひょっとしたら、その影響がなにかあるのかも、知れませんね」
「その話、本当?」
けげんな顔でシャンテは。ラズロに聞いた。
「ええ!」
彼は力強く答えた。
「ドラゴン…ねえ」
伝説では、ドラゴンの話も聞いたことはあったし、いるとはされていた。しかし、シャンテは、ドラゴンを見たことはなかったし、実際に見たという人も聞いたことはなかった。
だがいると信じられてはいた。
途方にくれたシャンテは、ようやくこういった。
「どうやって調べるのかしら、それ」