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はじめてのたんさく

お待たせしましたー

 1.


「―キーパー、今日のダンジョンハートはちょっと黄味がかっているぞ」


「―昨日みかんを食べすぎたのではないか?」


 2.


(おなかすいたな)(おなかすいたよ)(おなかすいたわ)


 インプ共が先程より探索をしているが、中々進まない。


 というのもこの坑道、構造が中々に入り組んでおり行き止まりや二股が多い。

 その上経年劣化により天井が崩れたり壁が崩れたりなど本来通れる道も塞がれている始末だ。


 にしても不満を言い出すのが早えよ。まだ2時間も調べてないぞ。


(ごしゅじん)(おなかが)(すいたわ)


「みんなで一緒に言ってもダメだ!とりあえず部屋を探す事が出来たら一回帰ってこい!」


(りょうかい)(がんばり)(まーす)


 だからつなげて言うなって。


「―キーパー、我々のいる位置より北を中心に捜索してみろ」


「ん?それはいいけど、なんでだ?」


「―非常に曖昧で感覚的なものなのだが、わたしには遺物の場所がわかるのだ。大まかな方角ぐらいならばまず間違いあるまい」


「成る程な、つまり遺物は北側にあるってことか?」


「―いや、遺物は南側だ。しかし遺物より最も遠い場所はすなわち入口側という事だろう」


「―過去に坑道を掘っていたのであれば坑夫の詰め所ぐらい見つかるかも知れんぞ」


 それは良い事を聞いた。俺は早速インプ共に指示を出す。


「よしお前達、北を探索するんだ」


(りょうかい)(きた!)(きたがわかんないわよ)


「うるさい、ネイル口答えすんな」


 まあ確かに先程から行き止まりで後戻りしたり二股で迷っているからな。こいつらの方向感覚などとうに無くなっているのも頷ける。

 しかしここはダンジョンで、俺はダンジョンキーパーである。


「こっちでは完璧に方角わかってるから大丈夫だ、ちゃんと指示を出す」


 ダンジョンハートから北の方角へとインプ共を誘導する。


(とびらがある!)(はっけん)(なんかぼろぼろね)


「おお、見えているぞ」

 俺はダンジョンハートを通じてリーダーの視界を共有している。扉には何やら文字が書かれている様だが、風化してしまっており読めない。


「罠がある可能性もあるが、開けねば先へ進まない」

「頼むぞお前たち」


(りょうかい)(こわい)(うしろにかくれるわ)



 ……おっかなびっくり扉を開けたインプ共だったが、どうやら杞憂だったようだ。


 そこにはやや広い程度の小部屋があった。

 木製のベッドが複数並んでおりほとんどは腐り落ちてしまい限界を留めていない様子だ。部屋の隅には錆びた箱や――

「あった!!ツルハシだ!一輪車やヘルメットもあるな!」

 (やったー)(うれしい)(なんかくさそうね)


 これはおそらく先輩の言う様に坑夫達が使っていたものと見て間違いなさそうだ。まあ、どれも流石に大分錆びているが使えないことも無いだろう。

「よしよし、その辺は根こそぎ回収するんだ」


 他にも何か有れば良いが。

「よく部屋を調べてみてくれ、他には何かないか?」


(うーん)(がらくた)(ばっかりね)

 まあ、しかたないか…ひとまずツルハシが有れば徐々にでもダンジョンを拡張できるから、それだけでも大きな前進だ。


 ん?あの箱の中…

(はっけん!)(おかねだぁ)(やったわ!!)


 ネイルの喜びようにちょっと引いたが…


 どうやら古い硬貨のようである。くすんでいてわかりづらいが、銀貨だろうか。


「―おお、銀貨か。ゴブリン共を呼び寄せるのに都合が良いじゃないか、キーパー」

 先輩の声がする。


「確かにな。おまえ達、他にも無いかよく探してくれ」


 クリーチャーを使役する方法は大きく分けて二つある。


 一つは直接召喚。

 ダンジョン内にクリーチャーの好む環境を整え、クリーチャーの望む供物をダンジョンハートに捧げる事により、召喚する方法だ。


 クリーチャーの好む環境、というのは様々である。例えば地下水のあるダンジョンだと、ケルピー(水馬)と呼ばれる水棲クリーチャーが召喚に応じてくれやすい。

 あるいは地熱や、溶岩のあるようなダンジョンはサラマンドラ(火蜥蜴)達が嬉々としてやってくるだろう。


 望む供物も、クリーチャーによって千差万別であるが、おおよその傾向はある。

 それこそ、ゴブリン(小鬼)系統は金貨、銀貨などの金が大好きだし、ソーサラー(魔法師)の力が必要であればなかなか手に入らない魔導書や、書物などを捧げるのが近道だろう。


 しかし、上級クリーチャーであるデモン(悪魔)や、レッドドラゴン(火龍)は直接召喚する事は不可能である。

 ではどうするのか。


 それこそが二つ目の方法。


 すなわち「系統進化」である。


 これは経験を積んだクリーチャー達が至る一種の到達点であり、強力な冒険者や、数で押し寄せる人間共に対抗する為には必須となる方法である。


 ただし、系統進化の道筋はある程度クリーチャーによって決まっている。例えばゴブリンであればホブゴブリン(重小鬼)を経てゴブリンキング(小鬼王)へ、と言った様に。

 完全に別種であるゴブリン(小鬼)オーガ()になる事は決して無いのだ。


 唯一の例外は「突然変異」であり、これは完全にランダムであり、突発的に起こる現象である。

 狙って起こす事は難しいと言われており、強力なクリーチャーが育つ可能性はあるが、運要素が強く頼みにするには難しいだろう。

 ……ちなみに最も突然変異が起こり易いクリーチャーはインプである。


(たんさくかんりょうです)(よんまい!)(しけてるわね)

 インプ共の思念が伝わる。


「そうか、まあ四枚有ればゴブリンが二匹は呼べるだろう」


「ご苦労だった、一度ダンジョンハートの部屋に帰還してくれ」

(きかんします!)(かえれるー)(つかれたわ)


 一輪車を押して帰還したインプ共の荷物を検める。


「ふむ、ツルハシは十本ほどあるか」

「そしてヘルメットが三つに古い銀貨が四枚」

「それに比較的状態のマシなベッドが三つほどあったな」

 ゴブリン共を呼び寄せるので有れば寝室が必要だ。あれをそのまま再利用できれば助かるな。


「よし、また明日はもう一度あの小部屋に行きあの部屋をクリーチャーの寝室へと改造しよう」


(りょうかいです)(たのしそう)(めんどうね)


……リーダーちょっとだけ賢くなってる?

 どうやら多少責任感が芽生えている様だ。まあ、悪いことでは無いのでさておこう。

 さて、俺はゴブリンを呼び寄せる準備を進めないとな……


3.


「―その調子で急ぎ戦力を整えろ」


「―――宝には番人がつきものだぞ、キーパー」




tips


 クリーチャーの供物…貨幣や宝石など普遍的に価値あるものを好むクリーチャーは多い。中には変わった好みのクリーチャーもおり、例えばヴァンパイア(吸血鬼)などは、純潔の血液以外では決して召喚に応じない。


 だが、あらゆるクリーチャー共が一貫して最も好む供物は、人間の死体である。


読んで頂きありがとうございます。


続きが気になると思って頂けましたら評価、ブクマ、感想など、お願い致します。非常に励みになります。


RBBの3rdアルバムYouTubeで聴けるからみんな聴いてね、神やで。

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