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闇の中の出会い

 1.


「―キーパー、お前に恋人はいないのか?」


「―ハハ、インプどもが憐れみの目で見ているぞ」


 2.


 目が覚めて、最初に感じたのは虚脱感だった。


 どうやら気絶していたのか…思考に()()がかかったようにはっきりとしない。俺は何があったのか思い出そうとし「―お目覚めかな、キーパー」


「うおおお!??!」


 頭の中から、声が聞こえる。ありえないほどハッキリと聞こえたその声に俺は自分がいよいよ狂ってしまったのかと疑った。そう考えているうちに頭がクリアになっていき、段々と何があったのか思い出してくる。


「そうだ、俺は降魔の儀式の途中で…」


 あのおぞましいデモンズハートを思い出して、俺は身震いをした。あの瞬間確かに世界は、ずれていた。もしや俺は失敗してしまったのか??


「―心配せずとも儀式は完全に成功しているとも、我がキーパーよ」


「うわああああ!また幻聴か!?!」

 一体なんなんだ!??


「―落ちつきたまえよ。私は幻聴などではない。何も恐れる事はないとも、キーパー」


 俺の脳裏に明瞭に聞こえるその声は断言する様に、そう言った。

 ハッキリ言って不気味に違いないのだが、俺はその一言で何故だか、自分でも不思議な程落ち着いてしまっていた。


「ど、どういうことなんだ??というかここは…」


 興奮状態を抜け出し、少し冷静さを取り戻した俺は自分が何かベッドのような物の上で横たわっている事に気づいた。

 周りには特に何もなく殺風景な土壁に囲まれている。右手側の壁に松明が燃えている為、視界はある程度確保されているが俺には全く見覚えの無い光景であった。


 周囲には、どこかカビ臭い匂いが漂っている。

 だが、匂いの出どころはよくわからない。


 音もしない。全くの無音である。自分の鼓動すら聞こえない、絶対の無音だ。


()()()()()すら聞こえない、だって?」

 俺は背筋に冷たいものが流れるのを感じた。


「―おめでとう、まさに今日、お前は人智を超えたのだ」


 また、脳に謎の声が響く。


「―キーパー、あえてもう一度言おう」

「―儀式は完全に成功している」


 俺は混乱の極みにあったが、脳内に響くこの声が嘘をついていない事を何故か直観で信じられた。

「儀式は成功した…つまりは俺はダンジョンキーパーとして生まれ変わったというわけなのか」



「―理解が早くて何よりだ、キーパー」


「―お前の心臓は既に魔の所有物である」


「―時は有限であり、やるべき事は非常に多い」


 俺の中に自分が目指してきたキーパーになれた事への喜びがじわじわと湧き上がってきた。養成学校での大変な思い出が次々に浮かんでは消えていく。

 ああ、俺は今、英雄への第一歩を踏み締めている!


 ひとしきり喜びを噛み締めた俺はそこで初めて、自分の脳内に響く声が一体何なのか、という疑問に立ち帰った。


「お前はいったい…?」


 謎の声が響く。


「―私は、君の友だよ、キーパー」


「―私がなんなのか、という事を一言で説明するのは難しいな」


「―ふむ、お前の知識の内で分かりやすく言えば先輩、のようなものだ」


「―新人キーパーへの、アドバイスを担う存在とでも捉えてくれればいいさ」


 と、脳内の声は煙に巻くような発言を繰り返した。


「そんな存在がいるのか?学校ではそんな話…」


「―キーパーよ、学校で習う事が全てではあるまい」


「―ああ、私の存在などわざわざ教科書に載せるまでも無かったのではないかな?」


 いまいち釈然としないものを感じた俺だったが、今の状況ではひとまずこの声の言う事を信じるより他はない。


「…成る程な、まぁ状況は大体わかった」

「それで、ここはいったいどこなんだ??」


「―ここは、忘れられた坑道だ。」


「―魔界の奥地にある今は誰も使っていない坑道で、吹き溜まった瘴気により半ば異界と化している」


「―クリーチャーどもを呼び込むには持ってこいというわけさ」


「―儀式を終えたお前を老人達はここへ転移させたというわけだ」


 魔界にそんな場所があるなど聞いたこともない。

 だがこの異常な静寂と()()()ような匂いが、ここが尋常の場所ではない事を物語っていた。

 だが謎の声が言う事が正しいとして、俺がここにいる理由が分からない。


「何故俺はこんな所に??」


「―この坑道にはある遺物が眠っている」


「―クリーチャーどもを呼び出し、それを手に入れるのだ」


「―新人キーパーとして最初の試練、というわけだ。」


 試練だって?

 そんなものがあるとは知らなかったが、どうやらこれも学生には知らされない事なのだろう。


 それに、英雄には試練がつきものだ。おもしろくなってきたじゃあないか。

 俺は腹を括った。


「そうか、わかった」

「とりあえずこれから宜しくな?先輩」


 瞬間、ベットの下の影が大きくゆらめいた。



 3.


「―純粋で邪悪なキーパー」

「―お前には期待しているとも」



 tips



 邪神…魔界における最も古い文献や、「禁書」と呼ばれる極一部の遺物にのみその存在が示唆される。絶対の悪であり、滅びの概念そのものだとされる。詳細不明。





 忘れられた坑道…そんな場所は魔界に存在しない。


読んでいただいてありがとうございます。

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