積み上げる死体と夢
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1.
「ークリーチャーの中でも、魔法士は特に気難しい事で有名だ」
「ー奴らは偏屈で己の魔法の技術を磨く事しか頭に無い」
「ーとりわけ奴らが面倒な理由は」
「ー奴らは学歴を気にする」
2.
あれから俺はすぐに、クリーチャー共を二手に分けて南の通路にあるバリケードの前まで集めた。
現在のダンジョンの知覚範囲はバリケードの前方5メートル程である。こちらのアドバンテージは、俺自身が探知機として、見えない筈のバリケードの向こう側を一方的に知覚できると言う点だ。
このアドバンテージを最大限に活かす為にも知覚範囲をもう少し伸ばしてから戦いたい。そこで俺は一体のインプを斥候に出すことにした。
(あかんてあかんて)
(しんでまうやろ)
申し訳ないが索敵範囲が広がれば向こうの動きにも素早い対処が出来る。戦力を削る可能性を踏まえても、この状況での情報は値千金の価値がある。
「悪いがこれは命令だ」
「戦闘を避け、なるべく敵陣の奥まで突っ込んでこい」
「敵陣中央付近の地図が知覚範囲に入れば俺たちが生き残る可能性はグッと上がる」
敵の位置の把握や、西側の警備が手薄な場所が分かれば攻めるにしても運任せにはならずに済む。
本音を言えばこんな風にクリーチャーを使い潰す様な真似はしたくない。
例えインプ一匹でも、生きてさえいれば進化する可能性だってある。
ダンジョンキーパーにとってクリーチャーは兵力であり、庇護するべき部下であり、地上を蹂躙する仲間だ。
クリーチャーを軽んじるキーパーは必ず反乱を起こされる。それは歴史が証明している。
「今いる五体のインプの内最も脚が速いのはお前だ」
「インプが殺戮機械にまともにぶつかったら勝負にならないだろうが、逃げるだけならあるいは」
「すまない」
「全員を生き残らせる為に………死んでくれ」
(………)
少し訛ったインプは、それきり一言も喋らずバリケードの向こうへとよじ登っていった。
あいつは最後何を考えていたのだろう。
答えは無く、俺の脳裏には坑道の南側が凄い速度でマッピングされていく。
しばらくそのまま進み、脳内に少し開けた空間が現れた瞬間、一体のインプが死んだ事をダンジョンハートを通じて俺は知るのだった。
3.
「ー死を積み上げろ、キーパー」
「ー百の仲間の死体の上に千の敵の屍を」
「ー千の友の屍を踏み締めて、万の仇の骸を」
「ーそうしなければ、届かない」
「ー何も、得られない」
「ー夢のような、地獄を作ろう」
4.
はー。しんど。
こんなんやってられへんやん。
召喚された思ったら、めっちゃ暗い坑道の中やしメシもあらへんし。
穴掘りはおもろいけど、ごっつい機械がおって見つかったら殺されるやて。
そうかとおもたらこんどは特攻してこいなんて言いよる。
どんだけはーどもーどやねんっちゅう話しや。
まぁ、インプなんてそんなもんやけどな。
使い潰す様なヤツも多いし、オヤジもそのまたオヤジもしょーもない死に方やったわ。
せやけど、なんや、このキーパーは?
ワシが脚速いの見抜いてたんはびっくりしたけど、
「すまない」やて?
キーパーがクリーチャーにあやまるなんてきいたことあらへん。
そんな事したらクリーチャーはつけあがるし、最悪は反乱まであるがな。
けったいなヤツやなぁ。
ほんで、ワシの脚がいくら速いいうたかて、そんなもん疲れ知らずのごっつい機械からいつまでもにげられへん。
さっきからずっとはしっとるけどもうだいぶ限界や。
あ、また右手にも一体おる。
こらあかんな。
あーあ。ワシも結局しょーもない死に方かぁ。
でも、なんや
おもてたより
わるないなぁ…
tips
クリーチャー…地上でも魔界でも無い異世界よりやってくるモノたち。
現在魔界にいる魔物は全て過去に召喚されたクリーチャーが野生化したモノやその子孫であり、本質的にこの世界の住人では無い。
彼等は召喚に応じてこの世界にやってくるが、契約終了したり死んだりした場合はその魂は元の世界へと返っていく。
一方で魔物達は既に魔界に馴染んでおり、死後もこの世界の輪廻に囚われる。
新人キーパーにありがちな事だが、彼等と本当の意味で分かり合えると思ってはいけない。
世界が違うとは、なにもかもが違うということなのだから。
このインプに名前はありませんでした。




