ヒーロー達の息抜き。
「だから、マ〇オがこうしたからこうなったんだろ?」
「え?違う!絶対違う!マ〇オにそんな才能は無い!」
「はぁ?嘘だろお前!そーやって負けを認めないつもりだな!?」
何やらテレビ画面を前に論争を繰り広げる幼い先輩たちに向かって、しびれを切らしてデスクから立ち上がった翔斗が放った一言は
「先輩方、いい加減スマ〇ラ止めたらどうですか」
「「…………てへ」」
*
「「すみませんでした……」」
「仕事中ですよ。分かってるんですか」
「「はい、分かってます……」」
「今までは見て見ぬふりをしていましたが、今日ばかりは言わせてもらいます」
翔斗が先輩たちのことを怒ってる。
いつもはなかなか怒らない温厚な奴だけど、怒ったときはホントに怖い……いや、温厚ってより、気付かないってだけかもしれない。
先輩たちは翔斗の前に正座して、俯きながら話を聞いている。
「……まあ、今日はこんな所でいいでしょう。次やったら……」
と言って、やっと解放されると思って顔を上げた先輩たち2人を翔斗が睨むと
「「も、もうやりません!!!」」
「よろしい」
立場逆転だなぁ。
私はデスクで爪をいじりながら、ため息をついた。
「とは言ってもなぁ……」
クーラーの効いた部屋で、自分の椅子の背もたれに体を預けて全然仕事しない一暁先輩の気だるげな声が響く。
「やっぱ暇だよなぁ……」
似た者同士……。
デスクに顎をつけてため息をついている蒼弥先輩。
何なんだろうこの気の抜けようは……。
その時、内線の電話が鳴って、一暁先輩が大きなため息をつきながら受話器を取った。
「はいはい、こちらヒーロー課…………え、優紀ちゃん…………はい、分かりました」
え、優紀ちゃんって言った?
優紀ちゃんって……確かこの前Darkworldのチンピラに誘拐された女の子だよね?
受話器を置いた一暁先輩からの言葉を待つ。
先輩は、ゆっくりとこちらを向いて
「……優紀ちゃんって……誰だっけ……?」
と苦笑いを浮かべて言い放った。
後ろの2人は大きなため息をついた。
もちろん、私も。