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LAST HERO -ラストヒーロー-  作者: 夏空 彗
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不眠症ヒーローと再会の嵐。

「……なぁ、一暁」

「なんだよ。話があんなら後にして」


蒼弥は私の返答に大きなため息をついた。

おもむろに自分のデスクから立ち上がり、私が座るデスクの隣まで歩いてきた。


「もうそろそろ終業時間だぞ。まだ帰んねーのか」

「……」

「……お前のそういう頑固な所、新人の時から変わってねーよな」


そう言ってから、蒼弥は私の背後に周り、脇の下に手を入れて私を無理やり立たせようとした。

突然の事で、完全に油断していた私の体はいとも簡単に持ち上げられる。


「ちょ、お前!」

「こうでもしないとお前帰んないだろ。ゴリラでも睡眠は必要だぜ?」

「一言余計なんだよ猿!」


腕力では対等だと思っているが、確かに疲れが出ているのか、私は抵抗できずに更衣室まで引きずって連れていかれた。

「さっさと着替えて帰るぞ」と言い残し、蒼弥は男子更衣室の方に入った。


私は女子更衣室の自分のロッカーを開ける。キィ、と錆びた金属が擦れる音がした。

中には、優紀ちゃんから貰ったあの手紙。私はもう一度手に取ってそれを眺めた。


……目を閉じればすぐ聞こえてくる、脳裏に染み付いたあの声。


……ごめんね、父さん、母さん。私、まだ無理だ。


そっとロッカーの中に封筒を戻して、スーツに着替える。更衣室から出れば、先に着替え終わったのであろう蒼弥が、壁に寄りかかりながらスマホをいじって待っていた。


「お前危なっかしいからな。1人で帰らせらんねぇんだよ」


そう言ってから、歩き出した。


廊下のはめ殺しの窓から見える煌びやかな都会の光は、数時間無機質なブルーライトしか浴びていなかった私の目に、とても優しく映った。






「おはよー…」

「おはようございます」

「一暁先輩おはようございまーす!!」

「はよ」


十人十色の挨拶を聞きながら、私は自分のデスクに歩いていく。

やっぱり昨日も眠れなかったなぁ。最近どんどん悪化してる気がする。

眠気で重い頭と身体を無理やり働かせながらデスクに座り、パソコンを立ちあげた。


……ん、なんかメール来てる。

手紙の形をしたアイコンが、パソコンの中で点滅している。私宛にメールが届いているらしい。

マウスを操作してアイコンをクリックする。

差出人は署長だった。



ヒーロー課 課長 天野一暁殿


突然のメール申し訳なく思っている。

実は昨日の夜この事を話に行こうかと思ったのだが、息子に止められてね。

「その事今話したらこいつまた徹夜しようとするからやめてくれ」……ってな。


……さて、本題だが。

今度新しく、ヒーロー課が増えることになった。

君たち、天野君が率いるヒーロー課は“第1ヒーロー課”となる。

君には第2ヒーロー課の彼らに、君たちヒーロー課の仕事内容を教えてやって欲しいんだ。

今日挨拶しに新しく加わる者が君の所に挨拶に来ると思う___



そこまで読んで、私はデスクに落ちた黒い影の正体を見ようと顔を上げた。

そこには、艶やかな青髪をショートカットにした気の強そうな女が、何故か得意気な表情をして私を見下ろしていた。


「……あんた、」

「久しぶりね。天野さん」

「……………………蒼弥、こいつ、誰だっけ」


途端、第1ヒーロー課の3人は芸人ばりにずっこけた。

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