不眠症ヒーローと居残り。
「優紀ちゃん、これ、少しの間預からせてもらってもいいか?」
まさかのDarkworldからの手紙……。
重すぎる沈黙を破って一暁先輩がそう言うと、優紀ちゃんは少し背伸びをして先輩の方に顔を近づけて
「そ、それは、一暁さんが持っててくださいっ!!私が持ってても仕方が無いと思うし……何より、怖い、ので」
と、少し青ざめた顔で言う。
一暁先輩は、不安がる優紀ちゃんの頭を、髪の毛がぐしゃぐしゃになるくらいに頭を撫でて、
「そうだよな……。じゃ、これは私らが預かる事にしておくな」
と言いながらニコッと笑う。
一暁先輩なりの安心のさせ方だと思う。
実際、優紀ちゃんは安心したのか固くなっていた表情が柔らかくなってニコニコしている。
そして私たちは優紀ちゃんを駅まで送り届けた後、Darkworldから送られてきたと思われるこの手紙を徹底的に調べることになった。
一暁先輩と蒼弥先輩は「暇じゃなくなったからスマ○ラ出来ない」と嘆いていた。
*
「…じゃあ、お疲れ様でした」
「おう、おつかれー」
「しっかり眠れよ」
「それ全部一暁先輩に返します」
優紀ちゃんへ、Darkworldから届いた手紙を受け取ってから約1週間。
私は未だまともに睡眠を取れていない。
おかげで毎日翔斗に怪訝な顔をされながら帰りの挨拶をされるようになる始末だ。
まぁ元から取ってないようなもんだし、あんまり変わらないんだけどな。
あれからあの便箋をくまなく調べてみたが、指紋等は一切残っておらず、流石としか言いようがなかった。
まさに“手詰まり”。打つ手が無くなった。
私に付き合って、毎日深夜まで居残る蒼弥の目の下には濃いクマが出来てしまった。
やっぱり無駄なあがきなんだろうか。それでも、何かあるかもしれないと思ってしまう。
「蒼弥、お前はもう帰っててもいいんだぞ?」
「俺が帰ったら、お前絶対ここでオールするから絶対意地でも帰らねぇ」
バレてる…。
欠伸をしながら呑気に私の言葉に返事をする蒼弥が、今だけは少し頼もしく見えた。
だいぶゆっくりな更新ですね……。
もう少し定期的に出せるように頑張ります!!