不眠症ヒーローの目覚め。
初めまして!夏空 彗です。
なろうでは初投稿ですので、至らない所や拙い部分もあるかと思いますが、どうか暖かい目で見て頂けたら幸いです。
よろしくお願いします。
─────20XX年。
犯罪抑制率が例年より大幅に減少したその年、警察組織にある一つの部署が生まれた。
その名も『ヒーロー課』。
普通の警察では解決することが困難な事件。
凶悪犯による多数の一般人への攻撃。
それら全てを抑制、根絶する為に生まれたヒーロー。
犯罪による悲しみに傷ついた人々は、彼らを
『LASTHERO』
“最後の救世主”
と呼んだ。
*
「……ふぁ……あ」
自室のベッドの上で未だ眠たげな声を上げる彼女。
ぐぐぐっ、とベッドの上で伸びをして眠気を断ち切ろうとするが、彼女の目の下には隈がついたままだ。
少し寝癖のついた、腰あたりまである赤茶色の髪の毛を、手櫛で無造作に梳かす。
寝起きだからなのか、よろよろとした不安定な足取りで台所へ向かい、もう一度欠伸をして冷蔵庫を開く。
冷蔵庫から漏れ出る冷気に鼻をすすりながら中の食品たちとしばしにらみ合いを続ける。
そして冷蔵庫のアラームが鳴る少し前に卵とベーコンを取り出した。
電子レンジに食パンを入れて、トーストモードのボタンを押す。
その間に、フライパンの中にベーコンを入れ、卵を割り入れる
「……そろそろかな」
欠伸を噛み殺しつつ独り言を呟いて、フライパンの蓋を開けるとベーコンの匂いが立ち上り、半熟の目玉焼きが顔を見せる。
その時丁度、電子音が鳴り、トーストが完成したことを告げた。
出来上がったトーストに目玉焼きとベーコンを乗せて、台所に立ったままかぶりつく。
パンくずがついたままの指を舐め、クローゼットを開き、いつもの着慣れたスーツをかけたハンガーを引っ張り出す。
いつもと変わらないぼーっとした倦怠感の残る体と頭にムチを打ちつつスーツに腕を通す。
今度は洗面所へ歩いていき、鏡の前で赤茶色の長い髪の毛をポニーテールにし、顔を洗った。
顔を上げ、いつもの酷いクマが残る自分の目元を見つめて、
「……よし。これで、やっと目が覚めた…かもしれない」
彼女の名は、重度の不眠症を抱える警察官 天野一暁。
所属部署は『ヒーロー課』である。