第百九十四章 陽子、女子高生を助ける
監督達が話をしている間に、渚は先程のレントゲン写真を見ていました。
正常な右肘のレントゲン写真に名前がある事に気付いて、それが自分の名前でしたので渚は、「一寸母ちゃん、このレントゲン私のじゃないの?」と不機嫌そうに確認しました。
陽子は、「そうよ。病院で撮影したレントゲンは、一定期間を過ぎると廃棄されますが、渚のレントゲンだけは廃棄せずに母ちゃんが記念に保管しています。」と説明しました。
渚は、「そんなレントゲンは保管しなくても良い。他にへんなレントゲンないでしょうね。」と心配になり確認しました。
陽子は、「変なレントゲンって何?渚の胸や、あっそうそう確か膀胱のレントゲンがあったような気がする・・・」と返答しました。
渚は、「一寸待ってよ。そんなレントゲンは、今直ぐに廃棄して!それひょっとして、今みたいに、患者に説明する時に使ってないでしょうね!」と怒っていました。
陽子は、「さあ、どうだったかしら。忘れたわ。」と笑いながら、誤魔化しました。
渚は、「もう、一寸勘弁してよ!」と不機嫌そうでした。
その様子を見ていた監督は、「梅沢くん、これは、お母さんが君の事を大切に思っているので、いつ迄も大事に保管しているのだと思いますよ。それにレントゲンだけでは誰のものか解らないし、第一説明を聞いている患者は誰のレントゲンかなんて考えている余裕はないよ。今だって、私達は全然気付かなかったので、そんなに気にする事は、ないのじゃないかな。」と優しく肩を叩きました。
渚は、「監督!人事だと思って適当な事を言わないでよ。第一、大切に思っている人の恥ずかしい写真を他人に見せびらかす?乙女心は深く傷ついた!」と怒っていました。
陽子は、「その顔のどこが乙女なの?」と笑っていました。
渚は、「もう!母ちゃん!」と更に怒り出しました。
陽子は笑いながら、「普段は誰にも見せてないので安心して。渚が強化合宿は単調で刺激がない為に、退屈だと言っていたので、一寸からかっただけよ。」と説明しました。
渚は、「“普段は“という事は見せる時もあるの?」と心配そうに確認しました。
陽子は、「家族以外には見せませんよ。」と返答したので、一安心していました。
その後、陽子が、「そう言えば、先日お父さんが渚の膀胱の写真を見ていましたよ。」と教えました。
渚は、「一寸待ってよ!刑事になんで膀胱の写真が必要なのよ!只の変態親父じゃないの!」と怒っていました。
陽子は、「暴走族に拉致されて、悪戯された女子高生を先日お父さんが救い出したのですが、その女子高生は色々と悪戯されたあげく、導尿管のような管を膀胱に入れられて、何か膀胱に入れられたらしいのよ。正常な膀胱と比較したいと言っていました。」と説明しました。
渚は、「だいたい、そういう事は泌尿器科の医師に任せるべきでしょう!何故父ちゃんが確認するのよ。矢っ張り変態親父よ。」と怒っていました。
陽子は、「お父さんの説明によれば、医師の説明を鵜呑みにするのではなく、ある程度予備知識が欲しかったようでしたよ。」と説明しました。
渚は、「専門家相手に議論しても敵う訳がないじゃないの!たとえそれが間違っていても見抜けないわよ。それだったら、母ちゃんが父ちゃんの助手として同行すれば誤魔化される事もないでしょう!何故そうしなかったのよ?」と不思議そうでした。
陽子は、「お父さんは自分で何とかしようと頑張っていたので応援したかったのですよ。」と説明していると陽子の携帯に着信がありました。
電話が終わると、陽子は窓の外を見ながら、「噂のお父さんが今ここへ向かっているようです。変態親父かどうか本人に直接聞いてみればどうですか?ほら、あの覆面パトカーはいつもお父さんが使っている覆面パトカーですよ。」と説明しました。
監督は、「梅沢君のお父様は刑事なのですか?何かのトラブルに巻き込まれた時は紹介して下さいね。」とトラブル時には頼りになる思っていました。
渚は、「ええ、父は警視庁の刑事ですが、何も人の膀胱の事でサイレン鳴らして来る事ないじゃないの。」と文句を言っていると修が来ました。
「陽子、緊急で大至急確認したい事があります。陽子は先日レントゲンには固いものは白く写ると言っていたよな。実は先日話をした女子高生が急に下腹部の痛みを訴えて、レントゲンを撮ると、悪戯された時に石が逆流したと言うのだ。そのレントゲンを借りてきましたが、矢印で示しているのは黒い点なのだ。これを手術で取り除くと説明していました。」と陽子にレントゲンを見せました。
陽子は、「石が逆流する訳ないでしょう!この黒い点は恐らくガスだと思います。レントゲンは写真のネガのようなものなので、白と黒が逆に写ります。石だったら白く写ります。骨も白く写っているでしょう。その人は本当に医師の資格を持っているの?レントゲンを見た事のないような医師じゃないの?それに、今でも電子データーではなく、そんなレントゲンなの?その病院本当に大丈夫なの?」とその医師と病院に不信感を覚えました。
修は、「女子高生が苦しんでいるので直ぐに手術をするような事を言っていたぞ。」と慌てていました。
陽子は、「馬鹿!修ちゃん、何故それを先に言わないのよ。その病院に刑事はいないの?警察の権限で手術を止めさせて!責任は私が取るから!」と何とか手術を止めさせようとしました。
修は、「僕は陽子から話を聞いていた為に、不信に感じて確認しましたが、“素人が口出しすると手遅れになるぞ!”と親に手術の説明をしていました。」と現状説明しました。
陽子は、「修ちゃんの覆面パトカーでその病院まで何分で行ける?私が行きます。寺前主任、後お願いします。」と陽子は修の覆面パトカーで、その病院に向かいました。
病院に到着した陽子は直ぐに手術を中止させて、医師を専門的に問い詰めました。
陽子は患者の両親に、「膀胱は無菌状態です。今、確認すると尿路感染は考えていなかったようです。近い日に高熱がでる可能性があります。こんな医者に任せると殺されるわよ。今から大日本医療大学に行きましょう。修ちゃん、その人が医師免許を持っているのかどうか確認して。そして救急車を呼んで!」と指示して女子高生を診察しました。
修が調べて陽子に結果報告しました。
「陽子の思っていたように、彼は医師免許を持っていませんでした。警視庁では、この病院で重傷でもないのに、患者が相次いで亡くなるなど不信な点があった為に、内定を勧めていたらしい。陽子がニセ医者だと見抜いた為に担当部署に、“外科医の妻が、彼は専門用語を全然知らないし、レントゲンも読めない。処置している様子を見たが、無茶苦茶だった。ニセ医者じゃないかと言っていた。確認すると医師免許は持っていなかった。それに病院の設備も古く、レントゲンやMRなどの検査結果やカルテも電子データーではなかった。あの病院大丈夫なのと言っていたよ。”と報告した。ニセ医者だけではなく、病院も捜査するらしい。」と説明しました。
担当部署の刑事達は病院に乗り込み、「先日あんたと口論した医師は、エスベック病の手術に何度も成功している日本一の名医だ。その名医から、お前の処置は無茶苦茶でニセ医師じゃないかと訴えがあったぞ。確認すれば、あんた、医師免許を持ってないな。医師でもないのに日本一の名医に反論するとは呆れるよ。医師法違反で逮捕します。ニセ医者を雇っていたこの病院も捜査します。」と捜査を開始しました。その結果無資格の検査技師など色々と判明して、廃院になりました。
数日後、修は陽子の所へ来て、「あの女子高生はどうだ?」と確認しました。
陽子は、「検査しましたが手術の必要はありません。投薬のみで治ります。」と説明しました。
修は、「そうじゃなく、裁判で暴走族を追い詰める為に、具体的に何をされたのかを聞いているのだ。」と聞き直しました。
陽子は、「いくら裁判の為でも医師には守秘義務があります。被害者の女子高生の了解がないと喋れません。私から話を聞きたいのであれば、その女子高生を説得して下さい。膀胱以外にも色々と悪戯されています。年頃のお嬢さんですので説得に時間が掛かるかもしれません。時効までに説得できますか?」と女子高生の説得を修に依頼しました。
女子高生は陽子の予想通り了解してくれませんでした。結局、裁判で立証できないと判断して釈放しました。
暴走族は、その女子高生の気が変わって証言される恐れもあった為に、今度は悪戯目的ではなく、殺すつもりで、その女子高生を狙いました。
陽子は透視力で暴走族が女子高生の近くを、うろついている事を掴み、気にかけていました。
今日は見張りだけではなく、暴走族が数人集まっていたので襲われる可能性があると判断して、やくざ姿で近くにいました。
案の定、その女子高生は襲われた為に陽子が修に連絡して、やくざ姿で現れて、「お前ら何人で女性一人を襲っているのだ?」と止めました。
暴走族達は笑いながら、「俺達は今十人いるのだぞ!やる気か?」と指をポキポキ鳴らして陽子を威嚇しました。
陽子には、「人数じゃないと思うわよ。役立たずが何人集まっても役立たずよ。」と脅しが通用しませんでした。
暴走族達は、陽子に殴り掛かりましたが全く歯が立たなかった為に逃げようとしましたが、右手が動かずバイクに乗れませんでした。
陽子に、「何をした!」と怒りました。
陽子は、「あなた方こそ、その女子高生に何をしたのよ!そんな事をする為に右腕があるのでしたら必要ないわね。神経を切断したので、腕は動きませんよ。」と腕が動かない理由を説明しました。
暴走族達は陽子が日本刀を使い慣れていた為に良く見るとリーダーが、「あっ!お前は丸東組幹部の陽子じゃないか!何故ここにいる!」と驚いていました。
陽子は、「誰が何処にいようが関係ないでしょうが。文句があるのでしたら、いつでも丸東組まで来なさい!」と日本刀を構えました。
暴走族達は相手が悪いので、バイクを捨てて走って逃げていきました。
陽子から連絡を受けた修が来て、「先程の暴走族は全員逮捕した。まだ仲間がいるかどうかは、今後取り調べる。」と今後の方針を陽子に説明しました。
女子高生は修がパトカーで自宅まで送り、両親と本人に、「先程、お嬢さんが暴走族に襲われました。今後の事を考慮すると、暴走族を一網打尽にする必要があります。その為にも、是非お嬢さんに、裁判で証言して頂きたいのです。でないと、今後も襲われる可能性があります。今日は偶々、私達が助ける事ができましたが、次回はどうなるか解りませんので、是非ご協力願いたい。考えておいて下さい。」と説得して修は帰りました。
両親は娘に生きていて貰いたいので、娘を説得して、陽子にも依頼して、裁判で証言しました。
陽子が膣内から採取した複数人数の体液を保管していて、そのDNAと暴走族のDNAが一致しました。
暴走族達は有罪になり、医療費の他に慰謝料も支払う事になりました。
事件は解決しましたが、その女子高生は不妊症になりました。
次回投稿予定日は、6月12日です。