第百八十九章 ジェット戦闘機が消える説明
アナウンサーは、「えっ?母ちゃん?愛弟子だとは聞きましたが、紅葉さんはマリさんの娘だったのですか?」と寝耳に水で確認しました。
紅葉は、「あっ!しまった!実は母ちゃんの娘だという事で、女優として有名になっても嬉しくないので隠していました。私は自分の実力で有名になりたかったので。ばれたからいうけれども、今の戦闘機が消える飛行は母ちゃんできないのだよ。悔しかったら消えてみろ。アッカンベー。」とカメラに向かってマリをからかいました。
その他に、「恋人はいますか?」と質問されました。
紅葉は、「その類の質問には、“ノーコメントと答えろ。“と事務所から指示されているので。」と逃げました。
また、「母さんをどう思いますか?」とマリより操縦技術の優れた娘がどう思っているのかマスコミは興味があるようでした。
紅葉は、「昔は頼りになるパイロットとしてのお師匠さんでしたが、どうやら操縦技術は私が追い越してしまったようですので、今は只の口五月蝿いババアじゃなかった、母親です。」と返答しました。
アメリカ軍がジェット戦闘機の核兵器を安全に取り外し、離陸準備も完了しました。マスコミは、その他にも色々と質問したかったようですが、時間切れでできませんでした。
テレビドラマのディレクターはスタッフに、「紅葉のテープを破棄し、新主役で撮影を開始していた事は紅葉には内緒だぞ!」と紅葉が既に知っているとは気付かずに口止めしました。
アメリカのマスコミは空軍本部にいるマリにもインタビューしました。
「紅葉さんの操縦技術は、本当にマリさんより上なのですか?」と信じられない様子でした。
マリは、「ハッキリ言って、もう私は完全に追い越されました。例えば、先程の戦闘機が消える飛行ですが、紅葉は、消えた次の瞬間、思った場所に正確に移動可能です。私も何度か挑戦したのですが、消える事は消えましたが、その次の瞬間、思った場所へは行けませんでした。紅葉からは、“丸で酔っ払い運転なので、危ないから辞めた方が良い。”と助言されたので、“絶対にマスターしてやる。”とその後も挑戦しましたが、上手くいかずに紅葉から、“死ぬ前に辞めた方が良い。“と助言されて諦めました。兄の富士夫よりも数段上です。ジェット戦闘機で紅葉と対決すれば、私にはもう、手も足も出ません。消える以外にも紅葉は航空機で、UFOのような飛行が可能です。敵もUFOのような飛行をしていた為に、紅葉にしか撃墜不可能だと判断して、紅葉に撃墜させました。紅葉は、私の期待に見事に答えてくれました。しかし紅葉はいつも一言多いのよね!なによ先程のアッカンベーは!それに誰がババアよ!あなたも、いつかはババアになるのよ!」と返答しました。
質問によっては、前回三機で怪物と交戦した時の質問もされました。
マリは、「ドラマの新鮮味がなくなる為に話さないでほしいとディレクターから頼まれています。そのディレクターからの伝言ですが、“ドラマを見て下さい。”との事です。」と返答しました。
その夜、ドラマは衛星放送で全世界に放送され、ドラマを放送してない国でも、ある国は真夜中、また別の国では早朝でしたが、特別ドラマとして同時通訳で放送し、全世界がドラマ“伝説の名パイロット”を見ました。
戦闘機が消えたのは、例えば皿の上に紙をのせて皿を早く移動させると、紙だけが上に舞い上がり、その場に取り残されます。これを戦闘機で実現したとの事でした。
戦闘機を水平飛行から、機首を上げながら逆噴射すると、同様の現象が起こるとの事でした。目の錯覚を利用した現象で、消えたというよりも、その場に残されるイメージらしいです。慣性の法則により、その場に留まる事は不可能ですが、機体が反転する為に、エンジンをマックスパワーにすれば、目の錯覚により消えたように見えるとの事でした。その逆噴射するタイミングと、機首を左右に向ける微妙なタイミングで、飛ばされる場所が大きく異なるとの事でした。そのタイミングを上手くコントロールできるようになれば、消えた次の瞬間、思った場所に移動可能だという説明でした。
マリは、そのドラマを見ながら、「なるほど、そういう事か。もう一度挑戦してみよう。」と呟いていました。
紅葉は、「母ちゃんの葬式は、ちゃんと準備しておくので、心配しないで挑戦してみてね。」と笑っていました。
マリは、「あんたね、なんでトゲのある事を言うのよ。その性格だから恋人もできないのでしょう!事務所から答えるなと指示されているだなんて上手い事逃げちゃって。」とリベンジしました。
紅葉は、「母ちゃんには先日も説明したでしょう。陽子さんから私でも体力的にきついと指摘された事を。母ちゃんの歳では無理よ。一度陽子さんに聞いたらどうなの?ドクターストップ!だと忠告されるわよ。」と指摘しました。
霧島外科医が、「何故、俺に聞かない!何故陽子さんなのだ!」と不機嫌そうでした。
紅葉は、「私から頼んだ訳ではないわよ。陽子さんが心配して声を掛けて来たのよ。お父さんは私の体の事が心配じゃなかったの?」と反論しました。
霧島外科医は、「忙しかったから、そこまで気が回らなかったんだよ。」と逃げました。
紅葉は、「何を言っているのよ!陽子さんはエスベック病の手術もできる世界一の名医よ!お父さん以上に忙しいわよ!それでも私の体の事を気にかけてくれたのよ。」と切れました。
霧島外科医は都合が悪くなった為に、話題を変えて、「しかし、紅葉が腕の良いパイロットだとは、秘密で誰も知らなかったのだろう?何故梅沢教授がそれを知っていたのだ?」と不思議そうでした。
紅葉は、「それは私も不思議に思って確認しました。陽子さんの説明によると、お母さんの知っている太ももに自動小銃の傷跡がある女性から聞いたと言っていましたが、誰なの?その人は。」と聞きました。
マリは、「余計な事は知らなくても良いの!でもなんであいつがそんな事を知っているのよ。」と不思議そうでした。
まさか陽子が、コスモスのUFOに乗せて貰った時に、偶々無人島で訓練していた様子を見ていたとは夢にも思っていませんでした。
紅葉は、「母ちゃんの操縦技術は信頼しています。それでもできないのは体力的な事だと思うので、無理してほしくないのよ。母ちゃんにはいつまでも元気でいてほしいから。」と説得して、マリも納得しました。
マリは、「紅葉、以前から気になっている事があるのよ。あなた大阪空港に着陸する理由として、沖縄空軍基地まで核兵器が持たないと言っていたわよね?そんな状態だと大阪空港に着陸したショックで核兵器が脱落するのではないの?本当は沖縄空軍基地でも充分間に合ったのではないの?」と疑問点を確認しました。
紅葉は、「着陸のショックも考えて、沖縄空軍基地までは行けても、着陸時に核兵器が脱落する可能性があったのよ。大阪空港だと、まだ間に合うと思ったのよ。母ちゃん、何故そう思うのよ。」と不味いな、ばれたかな?と不安そうでした。
マリは、「大阪空港で核兵器を取り外したアメリカ軍人から聞いたのよ。核兵器は確りと固定されていて、沖縄空軍基地でも大丈夫だったと思うと言っていたわよ。まさか女優を続ける為に上空でパフォーマンスする目的で大阪空港にしたのではないでしょうね?」と疑いました。
紅葉は、「その事は私も後から聞いたわ。私は軍人ではないので、核兵器が予想以上に頑丈に固定されているとは知らなかったのよ。アクロバット飛行をした時に、ミシッと音がしたので心配だったのよ。あの時は、今の所大丈夫のようなので、一刻も早く着陸したかったのよ。沖縄空軍基地まで行っている間に、核兵器が着陸のショックで脱落する可能性が出てくると、何処かに投下するしかなくなるのよ。あの時も母ちゃんから、海坊主に襲われる可能性が高くなると聞いたわ。女優の地位を守る為に、そんな危険な事はしないわよ。私も、この若さで死にたくないから。」と何とか誤魔化しました。
マリが、「御免、私が悪かったわ。紅葉の護衛については上官とも相談して、必ず守るから。例え誰も守らなくても、私一人ででも、紅葉の事は守るわよ。」と宣言しました。
霧島外科医が、「以前マリが僕専属の護衛をしてくれたが、今度は紅葉専属の警備をするのか。家の掃除など主婦業は疎かになっても良いから、紅葉の事を頼むよ。」とマリを頼りにしていました。
マリは、“矢張り、そうなったか。作戦成功、これで家の事は放って置いて、紅葉に付いて行けば、華やかな芸能界を覗きに行けるわね。”と思っていました。
富士夫が、「紅葉の事が世間に知られたという事は、僕の事も、ばれたと考えた方が良いと思いますが、僕の護衛はどうなっているの?」と心配していました。
マリは、「富士夫の操縦技術は紅葉と同等で富士夫にも撃墜できたと思いますが、紅葉に撃墜させて、インタビューで紅葉の操縦技術が富士夫より数段上だと説明したのは、海坊主に襲われないようにする為なのよ。それに紅葉の周辺には不特定多数のファンが大勢いて危険なのよ。富士夫の護衛ができないから、狙われないようにしたのよ。」と説明しました。
富士夫は、「そうか、解った。紅葉は囮か。僕の事は自分で気を付けるよ。」と納得していました。
紅葉は、「一寸、それどういう事よ。」と怒っていました。
マリは、「可愛い紅葉を囮になんかにしないわよ。偶々、富士夫より紅葉の方が狙われやすい状況なのよ。不満だったら女優業を廃業しなさい。」と説明しました。
紅葉も、「解ったわよ。私も周辺には気を付けるわよ。」と納得しました。
その後、親子四人でいつまでも、仲良く平和に暮らしました。
次回投稿予定日は、5月20日です。