第百八十八章 テレビ局、紅葉に驚く
アナウンサーが、「今、高感度カメラを搭載している撮影用航空機が謝りながら戻って来ました。アナウンサーがパイロットの写真がない事を説明の上、交渉した結果、合図すれば上空で飛行中にヘルメットとマスクを外して、顔をみせてくれるらしいです。」と説明しました。
その後、撮影準備をしている間にアナウンサーは、「交渉したスタッフによると、何処かで聞いた事がある声だったらしいです。日本人らしいので、何処かでそのスタッフと会った事があるのでしょうか?それとも芸能関係の仕事をしているのでしょうか?それもこの撮影ではっきりする事でしょう。」と喋っていました。
ドラマのディレクターは、“芸能関係者だったらドラマにゲスト出演して貰おう。可能であればパイロットのスタントも頼んでみよう。”と思っていました。
空軍ではマリが、「紅葉、飛行中にヘルメットとマスクを外すだなんて、一体何を考えているのよ!ヘルメットもマスクも飛行中必要だからあるのでしょう!着陸するまで待ちなさい!」と説得していました。
紅葉は、「まあまあ、そう硬い事を言わずに、機械獣も撃墜したので、女優としてのパフォーマンスをしても良いじゃないの。一寸の間なら大丈夫よ。」と返答しました。
マリが、「紅葉、あなたは何故そんな事しか考えられないのよ。もっとパイロットとしての自覚を持ちなさい!」と怒っていました。
紅葉は、「私の本業はパイロットではなく、女優ですから。」とかわしました。
マリは、「それじゃ女優を廃業してパイロットに転向しなさい!紅葉の操縦技術だったら、何処にでも行けるわよ。指導教官が優秀だったからね。」と説得を続けました。
紅葉は、「何、自分の事をさり気なくPRしているのよ。」と説得に応ずる様子がありませんでした。
しかし上官は、紅葉のその言葉の裏に、撮影をキャンセルし立場が悪くなった為に必死に挽回しようとしている事を見抜いて、マリがそれに気付かず二人で言い争いを始めた為に上官は、「マリ、紅葉は見事に機械獣を撃墜してくれましたが、その為にドラマの撮影をキャンセルしたのだから、女優としての立場が悪くなったのではないですか?今回は、そのご褒美として、大目に見てあげなさい。」と助言しました。
紅葉は、「さすが上官、何処かのコチコチ頭の小母さんとえらい違いです。有難う御座います。感謝します。これで私の首も何とか繋がると思います。」と安心していました。
撮影用航空機から、撮影準備が完了したと連絡があった為にアナウンサーが現状を、「撮影準備が整い、今、パイロットに合図しました。今からパイロットがヘルメットとマスクを外します。世紀の一瞬です。果たしてパイロットは何者なのでしょうか。」と解説していました。
その次の瞬間、紅葉がヘルメットとマスクを外しました。
アナウンサーは、ヘルメットとマスクを外したパイロットの顔が良く見えなかった為に、「カメラ、アップして下さい。大阪空港に向かって飛行中のパイロットは、あっ!女性です。交渉したスタッフから聞いてはいましたが、この目で確認するまで信じられませんでした。しかし顔が良く見えません。撮影用航空機、もう少し戦闘機の前へ出られませんか?」と依頼しました。
撮影用航空機が戦闘機の前に出て、アップにしました。
その顔を見て、アナウンサーは驚いて、「あっ!紅葉さんです。連続テレビドラマ、“伝説の名パイロット”の主演女優、紅葉さんです!カメラに向かって微笑みながら、手を振っています。核兵器を搭載した状態で、これから大阪空港に着陸する模様です。」と喋りました。
撮影用航空機のパイロットが、「矢張り紅葉さんでしたか。ご無沙汰しています。パイロット訓練生の頃に、一度だけ紅葉さんに指導して頂いて、紅葉さんのヒントに気付かず墜落しそうになり助けて頂ましたが、覚えていますか?」と確認しました。
紅葉は、「あなたはあの時の離着陸も禄にできないパイロット?もう手は疲れませんか?今度ゆっくりと話でもしませんか?」とパイロットの事を思い出していました。
撮影用航空機のパイロットは、「是非、お願いします。」と返答しました。
この会話を聞いて、アナウンサーは、「あなたは、紅葉さんの教え子ですか?」と確認しました。
撮影用航空機のパイロットは、“作戦成功!私が超一流パイロットの教え子だと解ると、会社も私の操縦技術に一目置くだろう。”と思いながら、その当時の事を説明しました。
この様子を見ていたドラマのディレクターだけではなく、スタッフやテレビ局の局員も総立ちになり自分の目と耳を疑いながら、「まさか、あの紅葉さんが、伝説の名パイロットより腕の良いパイロットだったとは・・・」と驚いて言葉を失っていました。
テレビ局の局長が来て、ディレクターに、「ドラマ撮影の為に、紅葉さんのスケジュールを押さえているのだろう!絶対に放すな!他のテレビ局に取られたら、お前はクビだぞ!」と念を押しました。
ディレクターは、「はい、それは勿論、解っています。」と返答しました。
スタッフが、「確か紅葉さんに電話で、“もう来なくても良い。”と怒鳴っていませんでしたか?」と確認しました。
局長は、「馬鹿者!直ぐに取り消せ!今後主演女優自ら操縦して、一般には知られてない裏話などの実話をアドリブでドラマに入れれば、このドラマの視聴率は更に上がるぞ!もしスケジュールを押さえられなかったらお前は本当に首だぞ!」と怒りました。
ディレクターは慌てて、紅葉の所属するタレント事務所に連絡し、スケジュールの確認をして、「紅葉さんには心にもない事を言ってしまいましたが、決して本心では御座いません。今後とも宜しくお願いします。」と一安心していました。
その後スタッフに、「局長命令でもあり、矢張りドラマは紅葉主演で行く。」と伝えました。
ドラマの新主役の女優は、「私はどうなるの?」と心配そうに聞きました。
ディレクターは、「君はもう良い。しかし、君には迷惑をかけたので、脇役などでも良かったら、何とか考えてみます。事務所と相談して連絡下さい。」と紅葉の話も聞かずに勝手にクビにして反省していました。
スタッフが、「しかし紅葉さんのテープは破棄しましたが、この報道特別番組の後の放送はどうされますか?テロップで流しましたので、今更中止できません。」と質問しました。
ディレクターは膝を叩いて、「しまった!」と慌てました。
局長は、「馬鹿者!大至急捜せ!もしテープが使い物にならなくなっていればお前は首だ!」と怒鳴られて、直ぐに破棄した紅葉のテープをスタッフ全員で大騒ぎしながら捜して、やっとの思いで見付けて、ディレクターもホッとして、紅葉主演で今後も進める事にしました。
大阪空港に無事着陸した紅葉は、マスコミのインタビューで、上空で戦闘機が消えた事について、質問されました。
紅葉は、“ほら来た。伝説の名パイロットを別の主演女優で放送すると仲の良いスタッフから聞いたから、私のテープを放送せざるを得ないようにしてやる。”と思いながら、「えーっと、今日は日本時間で何日だっけ?あっそうか、今日伝説の名パイロットの放送日ですよね。そこでアドリブで詳しく説明しています。操縦席のシミュレーション装置はちゃっちいので、パイロットの方には解りにくいかもしれませんが、操縦方法も説明しておきました。話せば長くなるのでそれを見て下さい。」と説明しました。
テレビ局では、ドラマのディレクターが念の為に、編集に確認しました。
「戦闘機が消えるなんてありえないのでカットしました。」と説明しました。
ディレクターは、「戦闘機が消える説明を聞く為に、日本だけではなく、全世界の人々がドラマを見るぞ!視聴率百パーセントの可能性もある。その部分がカットされていれば只では済まないぞ!俺もお前も首になるぞ!」と慌てて、放送時間に間に合うように大至急、元に戻すように指示しました。
編集は、人気ドラマでしたので、カットしたテープも未公開シーンとして放送する事もあると判断して、大事に保管していた為に、元に戻せました。その分だけ時間が長くなりましたが、時間内に収まるように編集している時間がなかった為に、「本日の伝説の名パイロットは二時間のスペシャル版として放送します。」とテロップを流しました。
その他の質問は攻撃前の心の動揺とか、攻撃中はどう思ったかなどでした。
「それもアドリブで入れています。嘘みたいにその通りになりました。ドラマを見て下さい。丸で実話の再現ドラマのようです。これで時間が一時間短縮できました。」と返答しました。
更に、「マリさんは、ドラマ“伝説の名パイロット”をあまり良く思っていないと聞きましたが、その理由は聞いた事がありますか?」と質問されました。
紅葉は、「ドラマのスタントマンのパイロット、あれ何?丸で子供のお遊戯じゃないの。ちょっと左右に旋回しながら高度を変えているだけじゃないの!あんな飛行はアクロバット飛行でもなんでもないわよ。ディレクターにも一度進言しましたが、“彼しかいない”って断られました。あれじゃ、母ちゃんでなくても私でも良く思わないわよ。だってテレビを見ている人は、あんな情けない飛行を母ちゃんがしていると思うのでしょう?次回から私が操縦しましょうか?」とその理由を説明しました。
次回投稿予定日は、5月16日です。