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003

「好きな褒美」を貰う為の最終目的地は、

北に存在するエルフの森の中の、現在、冬の女王が住んでいる塔。

ファーシルとシンセロは、マザー・ソンリッサから、

森の中は危険だと言う感じの話を聞いていた為、

森に向かう前に、市場に立ち寄る事にした。


取敢えず購入するのは、まず、街中で着る物より暖かい防寒着と食料!

姉弟が街中で、年中通してきている服は、

ファーシルはキャミソール、シンセロはタンクトップ、

今の時期は寒いので、その上にシンプルなデザインのシャツを着て、

仕事用のベストか、パーカーを着込む感じの3枚着で耐えていたが、

流石にそれで「深い森の中に突入」とか、普通に凍死しそうなので、

パーカーの上から着れる上着と、アームカバー、

カーゴパンツの下に着用できるレギンスと、

膝用のと、足首を保護するサポーターを購入し、服の下に身に着けた。


食料は、塔に辿り着く前に遭難してしまう危険性を考慮して、

乾燥した軽い物を2日分程度、飴とチョコレートも購入しくおく。

水は、雪深い場所であるからして必要無いであろうから

雪を溶かして温めて飲む為に直火でいける金属製のコップを購入。

全てをポケットに入れていた薄手の生地で軽くて丈夫な、

麻のリュックに入れて背負う。


後、必要なのは、各種獣対策&飲み物、食べ物の調理の為に必要な、

火を起こす火打石にする為の、チャート石と、

着火する為に必要な背面が鋸状になったサバイバルナイフ。


チャート石が必要なのは、

ソンリッサから貰ったゴールデンパイライトでも、

火を起こそうと思えば、起こせるのだが、

火打ちをして、その火花が魔除けを持っていても、

パイライトで起こせる火の温度は低く、

焚き火をするのに使うには不向きだったからからだ。


そして、背面が鋸状になったサバイバルナイフを買ったのは、

銀製のナイフは、無敵では無く、

無駄に切れ味が良く、2つに分かれてナイフとしても使える鋏。

普段、料理にも使ってる便利道具があっても心許無かったから、

なのと、背面の鋸状の部分を使ってチャート石で火起こしした方が、

火花が大きく、火を起こしやすいからだった。


これは武器にもなるので、ちょっと良い物を購入して、

チャート石は、パイライトを入れたポケットとは違うポケットに、

サバイバルナイフは、背中の方、見えない様にベルトに固定する。


で、ここから先が問題で、

これから向かうのは、北にあるエルフの森なのだが、

この時期、雪深いが為に、徒歩では行けない。

道程にアップダウンが多く、スキーで行くのも難しい。


消去法で導き出されるエルフの森へ行く為の交通手段は、

「橇」なのだが、持ってないし、民間用に定期便は出ていない。

出ているとしたら、それは軍用のモノ。


2人はそれぞれ思案し、予測して話し合い、

向かうは街とエルフの森を守っている警備隊の詰め所。

最後に、何かと役に立ち、消毒にも使える酒。

蒸留酒の詰まった銀製のボトルを数本購入して買い物は終了した。


それからファーシルは、

シンセロに『勝手に入って良いの?』と言われつつ、

上着を脱ぎ、ストールを外し、パーカーの前を開放しながら、

迷う事無く、暖房の効いた警備隊の詰め所に堂々と入り込む。

これが以外と、注意されたりはしなかったりするのが面白い所、

警備の兵が集まる所って、警備が手薄だったりする事があるのだ。


そう言う事実を知っていても、体験して実感しても、

ファーシルより2年分、人生経験の少ないシンセロは、

心配しながら、ファーシルと同じ様に脱ぎ、後ろに付いて歩く。


更にファーシルは、

堂々と擦れ違う兵士達に『こんにちは~』と元気に挨拶をし、

迷う事無く休憩室に入って行き、

そこで立ち止まって「誰か」を探して、見付けた様子で、

薄暗い場所で湯気の上がる茶を飲んでいる兵士に近付いた。


ファーシルは知り合いであるかの様に『内緒の差し入れだよ』と、

熱い茶を飲みながら、待機している男のコップに

持ってきた酒を注ぎ足す。


お茶を飲んでいた男は驚いた顔をして、

『おや?君は酒場の…』と、言い掛けた所で、

ファーシルはフレンドリーに、『試しに飲んでみてよ』と笑った。


男が酒の入ったお茶を一口飲み、二口飲み、

『悪くはないな』との返事を受け、少し打ち解けた所で、

『今回さぁ~、「前に酒持って遊びに来い」って言われたから

酒持って来たのに「来い」って言った人が留守だったんよね。

この時期って忙しいの?』と、

ファーシルは無邪気そうな顔をして、男に質問する。


待機中の男は『あぁ~実はね』と苦笑いして、

アルコールが入ったからか、ペラペラと話してくれた。

どうやら今朝から、一部の暴徒が長い冬に激怒し、

季節を司る塔から、冬の女王を炙り出す目的で、

森に放火し始めたらしい。


「それって……。」と思い当たる節は多々、

誰もその事を口にしない様子だが、

ほぼ「100%」、今朝出されたと言う「お触れの所為」であろう。


『そんな事しても、塔に火の手は届かないし、

逆に、風向きで、こっちの街の方に飛び火するのに』と愚痴る男、

「木々生い茂る、塔の建てられた神聖な山を護る名目」で、

放火魔を捕獲する為に、交代で、

此処にいる兵士が、「随時、派遣されている」と言う。


「そんな状態では、気軽に塔に近付く事が出来ないじゃないか!」と、

シンセロが内心、諦める事を検討していると、

ファーシルが唐突に、『あっ』と大きく声を上げる。


休憩所に来ていた者達、皆の視線が、

他の人達より少し目立つ、ファーシルとシンセロに集まった。

ファーシルは「それ」を狙っていたらしく、

凄く嬉しそうに微笑みを浮かべて、

『お兄さんって、ちょっと他に人より偉いんだよね?』と、

男の上着の爵位を現すピンバッチの一つを指した。


『え?あぁ~…まぁ~……。偉いかな?』と、

男が戸惑いながら返事をすると、

そこで、ファーシルは周囲に聞こえる様に大きな声で、

『忙しいなら、私達をバイトで雇って下さい!』と、

茶に足した酒のボトルをこっそり差し出してから、

『今日は、藁にも縋る思いで、財産叩いて、酒を買って、

仕事紹介して貰いたくて此処に来たんです。』と男の手を握り、

眼尻に涙を滲ませ懇願して見せた。勿論、それは「嘘泣き」だった。


それを知っているシンセロは複雑な思いを秘めながら、

自分達が雑種と呼ばれる混血児が集められた孤児院の出身で、

失業中である事を説明する。


『困ったなぁ~』と男は言っているが、

雰囲気的に付入る隙は、十分にありそうだった。

取敢えず『駄目ですか?』と訊いてみて、『ごめん』と謝られた所で、

ファーシルは、一旦引く事にして、

こちらをニヤニヤしながら見ている獣人系の兵士に目を付け、

最初に自分が声を掛けた相手に

『無理な相談を持ち掛けて申し訳ありませんでした。』と挨拶をし、

酒を取り返す事無く、そのガラの悪そうな男達の方へ歩いて行く。


シンセロが『他を当たってみようよ』と、焦って止めると、

ファーシルは『他に頼めそうな人は、いないだろ?』と振り払い。

『取り締まる側が、ルールや、法律違反は、しないでしょ?』と、

その場にいた者達全員に微笑み掛けてから、

『今直ぐの当てがなくて困ってる。交渉したい事もあるのだけど』と、

ニヤニヤしながら見ていた獣人系の兵士の集団の一番偉そうな、

狼以外の何者でもないウェアウルフに、話し掛けていた。


休憩所にいた他の者達がザワメキ立つ、

ファーシルが話し掛けた狼っぽい耳と尾を持つ男は立ち上がり

『別の場所で話をしよう』と、ファーシルとシンセロを促すが、

『弟は、私より2つも下だから、姉の私が、弟と一緒にできる仕事か、

ちゃんと見極めてからにしたいんだけど』と笑い。

ファーシルはシンセロに手荷物を預け

獣人達と一緒に、シンセロを残して行ってしまう。


暫くシンセロが立ち尽くしていると、

ファーシルが最初に話し掛けた男が、シンセロに年齢を訊ねる。

シンセロはその男に対して『15』とだけ答えて、

『やっぱ駄目だ!ねぇ~さん!戻って来て!』と叫び、

ファーシルが連れて行かれた方向へと走り出す。


その場に沈黙だけが残された。

間を置いて、『姉、17?同意があっても、未成年はアウトだ!』と、

一定以上の地位のある者達が青褪めて、

『一大事だ!集団責任で減給されたくなかったら、

さっきの子供等を無事に無傷で保護しろ!』と叫ぶのと同時に

『隠蔽しろ!殺してしまえ!』と言う命令が飛び交う。

こうして、目立つ髪色の姉弟の後を追って、兵士達が走り出した。

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