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018

その夜、バンピーロは、

常宿に戻って寝ているファーシルを眠っている状態で連れ出し、

シンセロとホンブレに連絡だけして、

ファーシルを北の国にある自分の城に連れて帰る。


そして、自室にファーシルを運び込んだバンピーロは、

本人の了承を再度、得る事無く、自分の寿命の半分近くを消費して、

ファーシルを吸血鬼にしてしまった。


その時、何も知らなかったファーシルは、温もりを唇に感じ、

目を開けると、目の前にはバンピーロの顔があって、

まず、一度、思考を停止させる。


その強制シャットダウンから、精神的な再起動を掛けて、

バンピーロの部屋のベットの上、バンピーロのキスで、

夜中に目を覚ましたファーシルは、口の中に感じる血の味に眉を顰め、

唇にキスされた事よりも、起き上がり、目にした場所に驚き、

続いて、体が思うように動かない事に疑問を持ち、

何時の間にか着替えさせられていた愛らしい自分の服装に、

正直、度肝を抜かれ、

『どう言う事だ?説明しろ!』と、御機嫌斜めに言葉を発する。


が…しかし、バンピーロは……。

『一生に一度しか使えない術だから、失敗しなくてよかった』と、

とても嬉しそうに、幸せそうに笑い。

数秒後に、

社交辞令が通じない相手であった事をファーシルに知らしめる。


ファーシルは、自分が吸血鬼になった事をバンピーロから教えられ、

バンピーロに、吸血鬼がどう言う生き物なのかを訊ね。

喫茶店で、安易に『良いかもね、それ』と言ってしまった事に対して、

物凄く後悔する事になった。


『バンピーロ!私を吸血鬼にする事で、

アンタの寿命が半分になるとか、教えて貰ってないんだけど?

そこは大事な事なんだから、先に言っとけよ!』

『え?でも、言ったら……。断るよね?』

『そりゃそうだろ?当たり前だろ?リスク高過ぎるだろ!』

『じゃあ、言わなくて正解だね』

『は?何言ってんの?馬鹿なの?死ぬの?死にたいの?』

『大丈夫、君が死ななければ、私は残りの寿命分は死なないから』

『え?何それ!私が死んだら、アンタも死んじゃうの?

それも聞いてないし!言えよ馬鹿!死ぬとか初耳だし!』

『大丈夫!死ぬ時は一緒だよ?』

『あぁ~もうっ!本物の馬鹿だ!どうしよう!

最初、出会った時は、もっと、大人な感じの人だと思ってたのに!』

『嫌だな、私は人ではないですよ?正確に言うと、私は鬼ですから』

『そぉ~だねぇ~…吸血鬼だもんね~……。』


ファーシルは、精神的にも、どっと疲れ、

『水飲みたい……。貰える?』と言って、水を貰い飲んで、

『暫く、話し掛けないで貰って良いかな?』と、

毛布に包り、寝転んで目を閉じ、思案する。


それから、数時間が経過し、朝日が昇る頃。

結果的に、宿屋に置き去りになってしまう事になってしまった。

ファーシルとバンピーロの荷物を持って、

シンセロとホンブレが、バンピーロの城にやって来る。


心の整理を付け、その直前まで起きて暇を持余し、

本を読んでいたファーシルは、バンピーロと違って、

吸血鬼となった慣れぬ体が、朝を拒絶した為に、強い睡魔に襲われる。


シンセロが来た知らせを受ける頃には、睡魔に太刀打ちできず、

ファーシルはバンピーロに身を任せ、バンピーロのベットでまた、

そのまま、眠りに就く事になっていた。


ファーシルの事を連れ戻すつもりで来たシンセロは、

バンピーロに出迎えられ、

吸血鬼となり、眠ったままで起きる様子の無い、ファーシルと再会し、

ホンブレと目で会話し、手遅れである事を知って、

吸血鬼になってしまう事を了承する様な受け答えをした事を後悔する。


そんなファーシルとシンセロが後悔する事になった事実は、

バンピーロが、ファーシルの所有権を明確にする為の宣伝に使われ、

結果的に、ファーシルが純血種の人間であった事を証明し、

弟のシンセロも同じで、人間である事の証明となった。


と、言っても・・・

ファーシルとシンセロが、ペサディリャとデセスペラシオンとして、

東の国を追放される結果を作った者達。陰口を吹聴し陥れた者達。

「純血種でない」と言って、危害を加えて来た者達の罪が、

問われる訳でもなく。


これから、過去を穿り返して、陰口を言う者達を戒める事の出来る。

免罪符になるモノでもない。大きな価値の無い真実。


『根柢の腐った人間の社会では、無いよりはマシな証明書だろうけど、

良かったんじゃない?貴方の御姉さん、吸血鬼になってても、

今は、それなりに幸せそうなんでしょ?』

季節が廻り、

冬が来た東の四季を司る塔の上での、アフターヌーンティーの時間。


四季を司る女王の権限行使で、

続いて東の国の王様になったシンセロは、

冬の女王であるインビエルノと、お茶を飲みながら愚痴っていた。


『そうなんですけどね…ちょっと納得いかないんですよ……。

可愛い愛らしいねぇ~さん似の姪っ子が生まれたのに、

僕だけ公務が忙しくて、会いに行けないんですよ!

あっちも、バンピーロ義兄さんが、

北の国の王様に就任しちゃったから忙しくて来てくれないし!

父上は、頻繁に義兄さんの城に行っては、自慢しに帰ってくるし!

なんだか、腹が立って仕方ないんですよ!』

『あらまぁ~…シスコン拗らせて姪馬鹿になったのね……。

幾ら好きでも、姪っ子ちゃんに手を出しちゃ駄目よ?

そんな事してる間があったら、貴方も早く恋人作りなさいね!

婚約者候補の御見合相手の肖像画、山積みで、

綺麗なお姉~さん達を選り取り見取り、

匙加減で、どの娘も、好きなだけ食べ放題になってるんでしょ?』

『嫌だなぁ~、ねぇ~さんみたいな事を言わないで下さいよ!』


インビエルノが本気で心配する中、シンセロは笑っている。

其処に、シンセロが嘗て担当していた仕事を引き継いでいる。

四季の女王の御世話係の者が、扉をノックしてから入って来て、

『国王様!ファーシル様とエスペランサ様が…』と言った所で、

『なに!もしかして来てるの!何処!』と訊いて、

居場所を確認すると、四季を司る塔の女王の部屋から出て、

姉と姪っ子の居る場所へと走り去ってしまう。


『あらまぁ~…困った子だ事……。あの子が見付けた希望が、

四季の国々の希望になってくれると良いのだけど』と溜息を吐き、

インビエルノは紅茶を一口飲んで、

『ディッチャさん、こっちへいらっしゃい』と手招きをする。


そして『貴女、今年で16歳よね?

男の子みたいな格好をそろそろ卒業してみない?

良かったら、プレゼントするわ!

私の「この願い」を聞き入れて叶えたら、

コンプレックス持ちだけど、素敵な旦那様が手に入るわよ?』と言い。


『今から、これに着替えて来てね』と、

事前に準備してあったらしい、大きな箱を少女に渡した。

「あれ?これ普通にファンタジーじゃね?」と、思った人!

それ正解!

でも、作者は頑張って、童話らしく教訓となる文章を入れたつもりです。

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