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017

「この御祝ムードに歓喜する集団の中で、いったい何人の者達が、

本当に本当の意味で、この事を祝福しているのだろうか?」

ファーシルとシンセロ、そして、付き添いのバンピーロとホンブレは、

歓声の中心で、狼狽する。


東の国の国王が玉座から立ち上がり、

『さぁ~、階段を上って私の元へ来るが良い』と言った。


ファーシルとシンセロは冷え切った目で、東の国の国王を睨むと、

それぞれに大きく溜息を吐いた。

『初対面の時に、その話をされたのなら未だしも、

何度も顔を合わせてからだと、「捜してた」とか言うのは、

何処をどうやって信じていいのか分かりません。

もう、帰っても良いですか?』と、シンセロが拒絶する。


ファーシルも、似て非なる感情を湛え、

『同感、つぅ~か、どんな理由があっても、

一度、切り捨てたんだから、アンタに私等の所有権は無いだろ?

王様だから、そんなのは関係無いとか言う気か?馬鹿馬鹿しい!

十数年前、王様に成りたくて、母上や、私等姉弟に、

東の国からの追放処分を言い渡したのはアンタだよな……。

当時5歳でも、忘れてねぇ~よ!糞親父!

而も、捜してただと?冗談にしたって笑えねぇ~ぞ?

なかなか出て行かないからって、自国の兵士に命じて、

魔獣の巣に生きたまま突き落したのを忘れたのか?

外面を整える為に捜す演技するのも良いけど、

いい加減にしてくれよな?

それに、私とシンセロは、北の国の国民だ!お前のモノでは無い!

今回の迷惑料として、シンセロは返して貰う事にする。』と、

事実を肯定し、王様を拒絶して、シンセロを連れ出し、

ざわめき立つ、謁見の場から立ち去った。


2人は無言で歩き続け、城を出て、街に出た所で、

『ねぇ~さん、何で今まで、教えてくれなかったんですか?』と、

真剣な表情で質問をし、シンセロが立ち止まる。


ファーシルは、静かに微笑して、

『私とお前の命を救ってくれたマザーソンリッサとの、

大切な約束だったから』と、シンセロから手を離す。


手を放してから、シンセロの言い分を静かに大人しく聞き続け、

『今後の事は、自分がどうしていきたいか?を自分で考えて、

ソンリッサに相談してみると良い』と言い残して、

ファーシルは、通りすがりの観光客の人混みに紛れて姿を消した。


シンセロが『ねぇ~さん』と呼びながら、叫びながら、

必死になってファーシルを捜していると、

ファーシルとシンセロの2人を捜していたバンピーロとホンブレと、

街中で会う事が出来た。


互いがそれぞれの事情を話し、ホンブレの種族の嗅覚を当てにして、

ホンブレと、ホンブレの部下達にファーシルを捜して貰う事にし、

シンセロは一度、東の国の国王が住む城に戻る。


そこでまず、ファーシルが誤解していた王様の気持ち、

魔獣の巣に生きたまま突き落した事に関しては、

無実であると言う証明を王様の側近のエルフの爺さんの魔法を介して、

シンセロは見せて貰い。納得する。


序に、バンピーロと、

幼い頃ペサディリャと呼ばれていた頃のファーシルのエピソード。

『生粋の人間なら、バンパイアにできるから嫁にしたい』と言う。

バンピーロの決意表明を聞かされ、

「如何しよう…この人、ねぇ~さんに幻想を求めてる。

僕のねぇ~さんは、そんな可愛らしい生き物では無いですよ?」と、

シンセロは困惑し、見つかって欲しい筈なのに、

バンピーロの所為で今、戻ってきて欲しくないと願った。その為か?


人通りの多い道に、何か所もジュースを撒いて、踏んで踏ませて、

嗅覚で後を追わせないファーシルの策略に遭い。

ホンブレが情報無収穫で戻ってきた。


東の国の謁見での話の御蔭で、ファーシルの足取りを掴む為に、

情報を求めようとしても、教えて貰えなくなってしまった悲しき今、

シンセロは、一度北の国に帰り、

マザーソンリッサのアドバイスを受け、親元に戻り。

王子デセスペラシオンとして東の国に戻って、国政の勉強をしながら、

他国に協力を要請して、ファーシルを捜す事にした。


親元に戻り、大っぴらに捜していると宣伝すれば、

自分の元に帰ってくるかも知れないと思っての作戦であったが、

王子として戻って季節が2度廻り、

もう直ぐ、2年経過した事になる今も、音沙汰は無い。


バンピーロが個人的にも捜し、ホンブレも巻き込まれている様子だが、

そちらにも、情報は入って無いらしい。


そして今日は、

「年に一度」と制定された四季の女王に関する報告会の日。

シンセロは、バンピーロとホンブレの3人で、報告会終りに、

中立都市で今、大人気の貴族の気分が味わえる。

耳と尻尾のある店員さんが多く在籍する喫茶店に入る。


『おかえりなさいませ!御主人様!』と出迎えてくれたのは、

髪を短く切り、付け耳と、自分の髪で作った尻尾を付けた

狐のメイドさんコスプレをしているファーシルだった。


バンピーロが目深に被っていたフードを脱ぎ、

透かさずファーシルの腕を掴んで引っ張り、『会いたかった!』と、

ファーシルを抱き締めると、

『御主人様!メイドにはメイドの仕事があります!

御戯れは御遠慮下さい!』と

横線の瞳の山羊の獣人の執事コスプレの店員に注意される。


それでも離さないでいるバンピーロを見て、

ホンブレがバンピーロの脳天を拳で殴り、引き剥がし、

山羊な店員に金を握らせ、

『この馬鹿は、暫く大人しくさせておくから、

このメイドさんの弟君に、姉と話す時間を与えてやって欲しい』と、

申し出、受理して貰って、ファーシルとシンセロは、

奥の席に着き、話す時間を与えられた。


『ねぇ~さん、僕がねぇ~さんの事を捜していたのは知ってるよね?』

『そりゃまぁ~、この店の掲示板にも貼ってあるからね』

『何で連絡くれなかったのさ?』

『連絡したら、連れ戻されるんだろ?私は人間の面倒臭さが嫌いだ。

終わった事を穿り出して、

面白かったら、最近の事みたいに話して広める。

そんな習性を持った生物達と、割合、酷い過去を持った私は、

共存したいとは思えない。悪いけど、私の事は忘れてくれないかな?

私はシンセロの事だけは、嫌いになりたくないから』

『じゃぁ~連れ戻さないから、連絡取れる場所にいてよ』

『それはそれで難しい、連絡取れる場所にいたら、

見付かって、連れ戻されるだろ?』と、

ファーシルとシンセロが2人だけで話していると、

何時の間にか復活したバンピーロが、

『それなら私の城に来ると良い』と話しに参加する。


油断して放置していたホンブレは、バンピーロを羽交い絞めにし、

再びホンブレに、ファーシルから引き離されるバンピーロは、

『人間が嫌いなら、人間を辞めれば良い』と提案する。


『生粋に人間には、可能性がある。

憑き物と混じり合いベゼッセンハイトを超越すれば獣人になれる、

私の属性を受け入れて、吸血鬼になる事を望むのなら、

私の人生の半分を捧げて、私が絶対に連れ戻させたりはしない、

君が望むなら、吸血鬼としての自由を与えよう。

君が求めるなら、私は君が帰る場所になるし、養ってもあげよう。

人間の元に帰りたくないなら、私を選びなさい。』と、

バンピーロは何故だか必死に宣言していた。


『何だよそれ?嫁にでも来いって言ってるみたいじゃん』と、

ファーシルがクスクス笑う。

「「いや、たぶんその通りだよ」」と、

シンセロとホンブレは思ったが「それも有りか」と黙って見ていた。


『そう思うなら、それで良い。嫁においで!

死が二人の生きる時間を分かつ時まで、私は君と寄り添い、

君が幸せと感じられる環境を努力して作ると誓うから』と、

バンピーロに言われ、ファーシルは軽い気持ちで、

『良いかもね、それ』と言ってしまった。


その後、バンピーロは大人しく、ファーシルの仕事が終わるのを待ち、

ホンブレは、

『良いのか?このままだと、

今晩にも、お前のねぇ~さん、吸血鬼にされるぞ?』と、

少し脅す様な言い方で言い。


シンセロは、力無く笑って、

『多分ですけど、ねぇ~さんが始終、行方不明になってるより、

居場所が確かな方が、僕の気分的にマシな気がするんですよね』と、

ファーシルが、

吸血鬼になってしまう事を了承する様な答えを返していた。

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