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この作品には 〔ガールズラブ要素〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

背徳姉妹

作者: イカ墨

「あっ……お姉様、おやめください……んぁっ、お姉様ぁ……」

「そんなこと言っても、千鶴の身体は私を受け入れているじゃない」

「やっ、だめぇ……」


 豪奢な飾りのついたベッドの上で絡み合う二人の少女。一方は肩先までかかった栗色の髪を片方に結った可愛らしい女の子で、もう一方は夜の帳を流れる川のような長い黒髪を垂らした美しい少女。

 首を横に振ってサイドテールを揺らす千鶴は拒絶の言葉とは裏腹に抵抗する様子はなく、むしろ姉の着ている服を掴んで離さない。それをいいことに身体中をねっとりと白く細い指で弄られていく。

 そうされることを望んでいたように彼女の肉体は敏感に反応し、嬌声を上げていった。


「こんなこと、私たちは姉妹なのにぃ……ん、あ……」

「それがいいのよ。千鶴が可愛いすぎるのがいけないんだから」

「そこ触っちゃ……ぁ、ん」

「千鶴、恥ずかしがらないでこちらを向いて?」


 姉は千鶴の髪を一房持ち上げると顔を寄せる。ひとしきり撫でて匂いを嗅いだ後、別れの挨拶をするようにふわりと口をつけた。それから額、頬、首筋と次々に優しいキスを落としていく。しかし、肝心なところに口づけてくれないもどかしさに千鶴は幼さの残るその身を思わずよじった。

 もう一度額にキスされると姉の艶やかな黒髪が鼻の近くにまできて、香ってくるフルーティな甘い匂いが脳を痺れさせる。これはシャンプーの香りだろうか。きめ細やかな肌を流れる水滴。風呂場で美しい肢体を洗う姉の姿を想像して、さらに興奮の度合いが高まる。


「お姉様ぁ、千鶴は……」


 千鶴は姉の唇を指でなぞり、その指をそのまま自分の唇にもってくると上目遣いで懇願する。

 それに対して姉は「わかっているわ」と軽く頷き口元を淫らに歪める。そのまま二人はお互いの顔の距離を失っていき……。


「はむっ」

「え……? うひゃうっ! そこちがっ、口唇じゃ、んっ」


 耳を柔らかな口唇で甘噛みされた。背筋を電流が流れたような感覚が走り抜けて、身体全体がびくりと震える。快楽に耐える過程で掴まれたシーツに皺を刻んでしまう。が、そんな些細な事を今は考えない。考えることなどできない。耳元で囁かれる甘美な言葉が全てをどうでもよくさせるのだ。


「あらぁ? 千鶴はお耳が弱いのね。それじゃあ……ぺろ……れるぅ……」

「お、おねえしゃまぁ! いじわるしないれぇ……」

「ぴちゅ……ぴちゃ……れろぉ……」

「ふわぁっ」


 容赦なく続け様に耳を責められ、さらに奥深くまで熱を持った舌が入れられる。そこは他人が触れることのない大事な穴。その穴を姉のモノで貫かれると身体の芯までとろけてしまう。


「今の千鶴、すごくトロンとした顔しているわね。可愛い。あむっ」

「はうっ!」


 ついには耳に歯をたてられる。噛み切られるのではないかという恐怖。その後訪れる安堵、そして快感。下腹部に言いようもない感覚が襲いかかった。一際ビクンと震えると、一瞬意識が何処かへ飛んで行く。

 だらりとベッドに身を投げだした千鶴の顔は完全に弛緩しきっていた。口から唾液が垂れ、細められた目尻には涙が浮かんでいた。そのキラキラと輝く甘露な雫を姉は愛おしそうにぺろりと舐めとる。


「もっとしてほしい?」

「ひゃ、ひゃいぃ。れも、お父ひゃまとお母ひゃまが……」


 なけなしの理性を振り絞り、呂律の回らない舌で言葉を紡ぐ。


「大丈夫。お父様達なら今日は帰ってこないわ。だから存分に身を委ねていいのよ」


 だがそんな抵抗も姉の一言で無に帰す。千鶴の理性の壁は脆くも崩れ去った。


「おねえひゃまぁ、しゅきぃい」

「私も好き、大好きよ、千鶴」


 千鶴が姉の全てを受け入れ、二人の口唇と想いが重なる。始めは優しく、そして次第に激しく深く、舌で互いの口腔をねぶる。相手の全てを味わうように。ぴちゃぴちゃと舌の絡み合う音と唾液を嚥下する音が静かな寝室に響いて姉妹の感情を高ぶらせる呼び水となり、ただ相手を愛することに没頭していく。


 カツンカツン。


 二人は行為に夢中で気付くことができなかった。部屋の前まで近づいてくる存在に……。

 ドアノブが回され、開かれないはずの扉が無情にも――開く。


「あなたたち、何をしているの……?」

「お、お母様……」


 扉の軋む音とともに廊下の光が薄暗い寝室を照らし、二人の痴態を浮かび上がらせる。逆光となって表情を伺い知ることの出来ない人影はベッドの近くまで歩み寄った。

 母は着衣の乱れた姉妹を見下ろす。窓からの月明かりで見えたその目は氷のように冷ややかであった。


「とにかく着替えて居間に来なさい。お父さんが待っているわ」


 姉妹の間にしばしの沈黙が訪れる。

 ついに見つかってしまった。もう言い逃れすることは出来ないだろう。

 ――こうなったら千鶴と駆け落ちするしかないかしら。それすらも許されないのならば、私は千鶴と……。


「お姉様ぁ」

「千鶴、私と一緒に来てくれる?」

「はい……どこまでもお供いたします。愛しいお姉様」


 二人は光が差す部屋の外へと踏み出す。姉妹が歩くのは愛の楽園へ至る道か、はたまた破滅への道程か、答えは時だけが知るだろう。


 ※※※※



「……なーんてね!」


 耽美な妄想を打ち切って、姉は夕食を再び食べ始める。

 周りからは騒がしくも賑やかな家族の声が聞こえてきた。


「姉さん、この唐揚げおいしいよ~」

「おう、もっと食え食え。色んな種類のやつ買ってきたからな」

「もう! お父さんはおいしそうだからって大量に買ってくるのやめてって言ってるでしょ。せめて買う前に電話くらいしてよね」

「だって母さん。唐揚げだけで五種類もあったんだぞ! 試してみたくなるのが人の情ってもんじゃないか」


 四人で囲むには少し大きいテーブルの上にサラダやスープなど様々な料理が置かれている中、殊の外存在感を放つのは唐揚げの山。それが五つ並ぶ様はまるで山脈のよう。

 仲良し姉妹に、わははと豪快に笑う父と諦めてふふっと笑う母。

いつも通りの和気藹々とした四人の食卓風景である。


「ねぇ千鶴、その唐揚げちょうだい」

「しょうがない姉さん……んっ」


 座ったままでは箸の届かない皿の唐揚げを指差して要求する姉。取り皿にとってもらうのが普通なのだが……。

 なぜか千鶴は大きめの唐揚げの端を口に咥えて、隣に座る姉の方へと顔を向ける。

 姉は反対側からそれをかじりとっていく。焦らすようにゆっくりと。残り少なくなると千鶴の唇ごと貪るように咥え込んだ。それはもう口移しではなく濃厚な接吻だ。

これもいつも通りの風景である。


「ぷちゅうぅ……んくっ……おいし。千鶴の味がするわ」

「姉さん、いやらしい。もっと食べる?」

「ええ……」


 二人だけの甘い空間をつくり出し、上気した顔でお互いの唇を求め合う麗しい姉妹。

これもいつもの風景です!


「そういえばお父さん、またこの子たち部屋でえっちなことしていたのよ」

「がははは。元気があっていいじゃないか! 連れ子同士仲良しで父さんは嬉しいぞ」

「……私たちは最近ご無沙汰なのに」

「母さん……今夜あたり、どうだ?」

「やだぁ、娘達の前でそんなこと言わないで」


 恥ずかしがりながらも父の腕を掴んでオッケーのサインを送る母。

これもいつもの(以下略)。


「そうだ母さん、娘達の結婚式はどこでやろうか?」

「日本ではまだ無理だものね……西ヨーロッパなんてどうかしら? 一度行ってみたかったのよ」

「むむ、それならアメリカも行ってみたいぞ。でかいハンバーガーが食いたいぞ」


 結婚する場所の話のはずがただの行きたい旅行先について話すだけになっている両親を横目に、抱き合ってキスしまくっている姉妹の方はというと。


「ぢゅるぅ、ちゅう……ん、千鶴」

「ちゅく……ぷじゅぅ……何、姉さん?」

「さっきの禁断の姉妹プレイはゾクゾクしたわね。次はどんなプレイをしようかしら?」

「うーん、お医者さんごっこはもうやったし、SMはまだやってないけど少し怖いかな」

「私も愛する千鶴を傷つけるのは嫌だわ。ムチで叩いたら水ぶくれになってしまうし、ロウソクの蝋なんて垂らしたら軽いやけどになってしまうかも。あなたの珠の肌を害するなんて想像するだけで嫌だわ」

「ふふ、私もよ、姉さん。」


 他に良い案はないものかと姉はしばし黙考した後、「あっ」と胸の前で両手をパンと叩く。

 なにやら思い付いたようだ。


「千鶴、チョコをロウソク代わりに使ってみない? チョコは低温でも溶けるから安全よ。大分早いバレンタインになってしまうけど」

「はい、『お姉様』!」


 姉の刺激的な提案に激しい口づけで応える千鶴なのであった。

 後にチョコまみれプレイでベッドシーツにシミを作って母に大目玉を食らうのだが、それはまだ先のお話。


お互いが両思いでも世間の風当たりが強い作品を見ると、将来が気になり、モヤモヤして夜も眠れないイカ墨。

家族が応援してくれるならばきっと二人はこれからもずっと幸せ。

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