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吉光里利の化け物殺し 第一話  作者: 由条仁史
エピローグ
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エピローグ

 何も変わっていません。


 彼女が彼女を殴り続けるのは。部屋の中で、小さな悲鳴と、大きな悲鳴がこだまするのは、何も変わりません。


 誰が何をしても。


 介入の余地など、私たちにはないのです。


 だって、この情景は、過去のものなのですから。


 彼女自身にだって、変えることはできません。もちろん、彼女にも。


 だから、彼女の瞳に、希望の光はありません。


 目に光を失ったまま、痛む四肢を引きずるように、彼女は夜の道を、一人で歩きます。


 誰もいない道を、ただ一人で。


 年端もいかない少女が、ただ前だけを見て歩いています。


 ただぼんやりと、前だけを見て。


 彼女は何も履いていません。裸足です。アスファルトと肌の触れ合う音。ひた、ひた。夜の寒気があたりを覆う、丑三つ時。


 彼女には向かう先がありません。

 どこに向かおうと、結局は同じなのだから。


 だから彼女は、立ち入り禁止の看板を見て、吸い込まれるように林道に入っていったのです。

 そこがどこに繋がっているのか、彼女は知りませんでした。


 それでも、アスファルトから土の地面に、足元が悪くなることに何の躊躇も覚えずに。丈の長い草が足をこすっていくのも気にせずに。月の光も届かない、真っ暗な木々の間をためらいなく抜けて。

 傾斜のついた道を上り続けて。


 そして、少し広いところに出ました。


 その向こう側には、町の美しい景色と、それを覆う美しい星空。


 その下には、崖がありました。


 その場所に、フェンスはありませんでした。

第二話に続く。

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