Ⅳ
あのあと、ルートに連絡して、他人に吹聴しないことを条件に、化け物のことを教えてあげた。一週間ほど前に出会って、ジャックはその翌日に出会った少年。そして赤色の化け物に苦戦したところにルートが現れたこと。そして昨日はルートと実験をしたということ。そしてそのジャックとルートには、特殊能力があったということ。
まとめるとこんな感じだった。
「大変だったんだね」
と紗那は言った。今度は紗那の番だった。何の番かと言うと、秘密を暴露する番。
「私がこうやって、のんきに絵を描いているときにね」
「……のんきにってわけでもないでしょ。ちゃんとした漫画じゃん。出版でき
るんじゃない?」
紗那のパソコンにあった漫画のデータを見せてもらった。週刊誌だか月刊誌だか、そういうのに載っていてもおかしくないようなものだった。
「実は、これ出版社に応募したんだ」
「応募って?」
「新人賞」
――なんと、そんな人がいたとは。身近に漫画を描いている人がいて、こうして実際に賞に応募する人がいるとは。
「月刊誌だけどね。それなりに枚数描かないといけないから大変だけど、学校行きながら描けない量じゃないしね」
「学校に行きながら?」
「うん。そう。新人賞決まって、契約決まったら、もう大学に行かずに、漫画家としてたべていくつもり。そう親にも許可もらったしね」
少し恥ずかしそうに紗那は言った。私はそういう生き方を、純粋にすごいと思う。尊敬してしまう。それがどのくらいつらく険しい道なのかはわからないけれど、夢や目標をもって純粋に進める人はすごいと思う。
「頑張ってね」
「もっちろん!」
紗那は今度こそ、純粋な笑顔で笑った。
……多分、純粋に。




