夢精7
「ぎゃあああ!!」
新井の絶叫が聞こえた。
「ひいくん、結界が破れるよ!」
ミケの指差す方を見ると空間にヒビが入っていた。
火球が消えるのと同時期に空間も割れ、そこには人影も多い普段の前橋駅前が広がっていた。そこには新井はいない。変わりに不気味な烏の群れが新井が居る筈の辺りから何匹も飛び立っていく。
「あれも術か…。逃げ出してるんだな。すごい…」
二人して落ち着いてバス停の停留所で待っていると、
「もし、あなたたちが松本さんとミケさんですか。夢範さんから連絡がありましたよ」
「貴方は…?」
「夢範さんの弟弟子で、貴宋と申します。お乗りください」
疲れはてていた僕たちは疑うこともせずに貴宋の車に乗り込んだ。
「今から師匠の元へお連れしましょう」
僕たちは返事もそこそこに眠ってしまった。
「着きましたよ。起きてください。ここからは徒歩です。絶対に私から離れないでください」
貴宋に起こされて僕たちは山道を歩き出す。わざとくねくねと登ったり降りたりを繰り返す。
「あの…、これって?」
「はい。特殊な結界を張っておりまして…。もう見えましたよ」
顔を上げるとそこには立派な山門がそびえていた。
「やあ…もうじきだと思っていたよ。ようこそ!」