夢精3
「ごめんなさい…私まだ妖怪になったばかりで…」
可愛い…。胸おっきい…。
「ごくり…」
おい聞こえたぞくそ坊主。
「拙僧仏門に入ったのが早かったもので…」
欲が断ち切れてないじゃないか!
「あの…」
猫耳美少女が口を開いた。
「どうしたの?」
「こんなときに言うことじゃ無いのは分かってます。でも、言わせてください!私、松本さんのことが…す、す、す!」
「す?」
「好きです!」
「!」
口が聞けない!女の子にこんなこと言われるのなんて初めてだ!
「突然妖怪になって困っていた所に松本さんを見かけて、その…一目惚れで」
「も、も勿論僕もす、好きだ!」
テンパって呂律が回らない!
「いや~若いって良いですな~。お互い名前も聞いてないのに」
坊主がうるさい、だけどその通りだ。
「ミケって言います。みっちゃんて読んで欲しいかな、て…」
「み、みみみ、みっちゃん!」
顔を真っ赤にして答える。坊主のニヤニヤ顔が癇に障る。
「うれしい…。あのね、ひいくんって読んでいい?」
ひさおだからな!最高だぜ!
「もも、勿論」
吃る癖治さなきゃ…。
「いや~めでたいですな。私こんな場面に立ち会うのなんか初めてですよ!全裸のままじゃなんですから何か持ってきますね」
夢範は奥の部屋へ向かった。
「可愛い…」
「そんな…」
ミケがもじもじしながら答える。作務衣でも可愛い!
「今回のような事は珍しいことじゃないんですよ。妖怪になった自分を制御出来ずに純粋な気持ちを持て余してしまう」
夢範が冷静に推測する。
「あの僕もうそんなに夢精気にしてないんで、やっぱり祓うのは勘弁してやってくれませんか」
「勿論ですとも!これからの二人の幸せを祈っておりますよ!」
僕は初めて出来た恋人と顔を見合わせて笑い合う。
「じゃあ、僕たちはこれで――
「お~い、夢範さ~ん!」
玄関の方から怒鳴り声が聞こえた。その途端に夢範の顔が真っ青になった。
「隠れて!急いで!」
僕たちは言われるがまま奥の部屋へ隠れた。
「よお、久しぶりだなぁ、夢範さんよ…」